ポンコツチームの脱衣ブラックジャック対決!
昨日言いそびれていたので…今年もよろしくお願いします。
読者様にとって良い一年となりますように。
唐突に始まった脱衣ブラックジャック。
もし里長に負けたら全裸でこのエルフの里を出なければいけない。それは嫌すぎる。絶対に勝たないと…
里長がトランプをシャッフルしながらルールを説明してくる。
「勝負はシンプルだよ。君たち4人の内3人が勝てば私は1年間服を着ないことを約束しよう。逆に3人が負けた場合は服を没収させてもらう」
「2人勝って2人負けた場合は?」
「もう一度仕切り直しだ」
ふむ。運が悪ければ一勝負で全裸になってしまうのか…
でも最悪エルフの里を出たら替えの服を着ればいいか。マジックバックの中にあるし。
そう考えていると先に釘を刺される。
「今、替えの服を着ようと思ったね?それらの服も君たちが負けた場合は買い取らせてもらおう」
「横暴ですぞ!」
「リスクがないとハラハラしないだろう?」
「大丈夫よ。要は勝てばいいだけでしょ?何も問題はないわ!」
「イカサマはしないから安心してくれ。真剣勝負にこそ緊張感が出るからね」
替えの服も没収されるのはキツイ。服を買うための服がない(ガチ)状態になる。
でもリリの言う通り勝てば問題ない。
こういうゲームはディーラーが有利って聞いたことがあるけど、それは長期的な話であって一発勝負なら勝つ可能性は十分あるのだ。
今まで一緒に旅をしてきた仲間を信じよう!
「そろそろ始めてもいいかな?」
「…わかりました」
「いいわよ!」
「頑張ります!」
「責任重大ですな」
「よし!私を楽しませてくれ!」
里長が変なテンションになりながらカードを配っていく。
カードは里長が「8」と「?」
リリが「A」と「8」、ルル様が「10」と「2」、私が「7」と「9」、トトちゃんが「A」と「7」だ。かなりいい手札。
「それじゃあリリさんから順に行動を決めてくれ」
「わかったわ」
リリとトトちゃんは合計点が19点と18点だから勝負する必要はない。後は私とルル様の引き次第か。私が16点だから勝負に出るかキープするか微妙なところ…ルル様次第で考えようか…
「ヒット!」
「はい」
「ああ!10か~。惜しかったわね」
「バーストで次はルルさん」
「………え?」
今信じられない会話が聞こえたんだけど…気のせいか?
リリの手前にあるカードを見ると…「A」「8」「3」が並んでいる。わっつ?
「…ええっとリリ?ヒットしたの?19点だったのに?」
「完全勝利を目指すべきでしょ?さっきもブラックジャック成功したし。今回はたまたま失敗しちゃったけどね!」
「ぶち犯すぞ死ね」
「ちょ!?あたしは王女よ?あれよ!不敬罪よそれは!」
「リリのせいで負けにだいぶ近づいたんだよ!スタンドしてればほぼほぼ勝ってたのに!」
「うるさいわね!次勝てばいいのよ!」
「これで負けたら終わりなんだよ!」
「クロさんリリちゃん!喧嘩はやめてください!」
「そうですぞ。私たちで3勝しましょうクロネ殿!」
「むぅ…」
全く…常識的に考えてありえない。あそこでヒットする奴なんてリリくらいだよ…
もう過ぎてしまったことだから今更怒ってもしょうがないけど。
切り替えてポジティブに考えよう。
もしリリがヒットしてなかったら次のルル様に10が回っていたことになる。つまり現時点で12だったルル様がヒットした場合はバーストしていた。
だから結果的にどちらかはバーストしていた。
これでルル様がいい手になれば問題はない。
そんな私たちの言い争いを楽しそうに見ていた里長が再び進行する。
「はっはっは。もういいのかい?それじゃあ次はルルさんの番だ」
「私は12なので…ヒットしたほうがいいですよね?…ヒットで!」
「はい」
「いやあああああ!?キング!?」
「引き弱すぎですルル様!」
「ご、ごめんなさい~」
ルル様が引いたカードは不運にもK。つまり22点となりバーストしてしまった。
ルル様が両手を合わせて泣いて謝ってくる。このポンコツ姉妹は…
これで私の敗北はそのままみんなの負けに繋がってしまうことになった。私の点数は16点…正直かなり微妙。
「ど、どうするのですかクロネ殿…」
「はっはっは!楽しくなってきたねぇ。ヒットするかい?スタンドするかい?」
「クロさ~ん……」
「勝負所よクロネ!ビシッと決めなさい!」
「うっさいリリ黙れ」
「ちょ!!」
普通に考えればバーストは絶対にできないからスタンドが正解だろう。けど里長のカードは「8」だ。16以上の手になる可能性は高い。でも私は6以上を引いた時点で負け…分は悪い。
「………」
「さぁ決めてくれ」
「様子を見ましょうクロさん!」
「勝負に出なさいクロネ!」
「悩みますな…」
「…ヒット」
「ええ!?」
「ほう」
「いいわよクロネ!」
私は攻めを選択した。里長の手が16を下回る可能性は低いと踏んだからだ。
里長がカードを裏返しで渡してくる。どっちだ…?ゆっくりとカードをオープンする。
「「「「「………」」」」」
「3…ふぅ…」
「やりました!これでクロさんは19点です」
カードを表にして出てきた数字は「3」だった。はぁ…心臓に悪い。
全員がほっとしている中、里長だけが興奮している。
「この緊張感…!手に汗握る展開…!これを私は求めていた!!」
「ホント面倒な性格してるなエルフは!」
「そう言わないでくれ。仕方のないことなんだ。…さぁ続けよう。次はトトさんの番だ」
「トトちゃんは頭のおかしいことはしないって私信じてる」
「それどういう意味よ!?」
「スタンドですぞ」
「オーケー。それじゃあリリさんとルルさんがバースト、クロネさん19点、トトさん18点で勝負だ」
里長が18点以上なら私たちの負け。それ以外ならドローで2回戦に持ち越しだ。勝ち筋がないとか怖すぎる。どうしてこうなった…あ。リリのせいか。
「さぁ。これで決まるかな?個人的にはもう少し楽しみたいが」
「だったらわざと負けてくださいよ」
「それはダメだ。勝負に手を抜くわけにはいかない。興覚めになってしまう」
そう言いながら2枚目のカードをオープンする。
数字は…5だ。つまり「8」と「5」で13点。当然ヒットする。
「5~8を引けば私の勝ちだ」
「うぅ~お願いします!私たちに勝利を~!」
「………」
「……」
「…」
3枚目のカードは…
「9…はは。惜しかったがバーストか」
「ふぅ」
「き、緊張しました~」
「何とか首の皮が繋がりましたね」
「次はしっかりしましょうぞ。リリ殿」
「なんであたしにだけ言うわけ!?」
里長がバーストしたので結果は2勝2敗。どうなる事かと思ったけどギリギリ次ゲームに繋ぐことができた。
里長がカードを回収してシャッフルを始める。
それにしても里長の顔が開始前よりもイキイキしている。小学生のような見た目も相まって本当に幼く見える。これが2000歳以上生きているとは誰も思わないだろう。
「さぁ。二回戦の始まりだ!」
里長が高らかに宣言しカードを配る。
今回は里長が「A」「?」、リリが「7」「10」、ルル様が「2」「J」、私が「3」「8」、トトちゃんが「4」「5」だ。
里長のAが気になるが…
こちらのカードの点数は全体的に低く、リリ以外はヒットしなくてはいけないだろう。
「リリさんの手番だ」
「リリ?わかってるよね?」
「ええ。…ヒット!」
「リリ!!」
思わず立ち上がりリリを睨む。どうして17点で勝負しようとするのか。さっきの負けに何も感じなかったのか?
しかしリリも立ち上がり私をにらみ返してくる。
「何もわかっていないのはクロネ!あんたのほうよ」
「…なに?」
「里長の手はAなのよ?もし里長がブラックジャックになった場合どうするのよ?私が17で妥協したら100%負けるわ!」
「…確かにAは怖い。でもリリが自滅する可能性が高いことをするのが私はおかしいって言ってるんだ」
「一回戦とは状況が違うの。今回もヒットする。絶対よ」
「ヒットでいいのかな?」
「いいわよ」
「………」
「(おろおろ)」
悔しいけどリリの言い分もわかる。確かに里長の2枚目が10以上の時点で負けがほぼ確定する。しかもそれは決して低い確率ではない。それに備えてこちらも2人はブラックジャックの状態にしておくことがベストだと言うことも。
「ではカードを配るよ」
「「「…4!!」」」
「おめでとう。ブラックジャックだ」
「よし!」
リリはこの状況でブラックジャックに成功した。
リリは私にはない考え方を持っているけど、やはりもっている人種だ。…もう少しリリのことを今後は信じてもいいのかもしれない。
「次はルルさんの番だ」
「私は…12点ですね!ならヒットでしょうか?」
「ちょっと待ってください」
さて次はルル様の番だ。思考を切り替えよう。
ルル様の点数は12点。つまり一回戦と同様だ。
そしてルル様の勝負運は…絶望的なまでにない。もってないのだ。ルル様は。
じゃんけんの勝率は1割。あっち向いてほいの勝率は0割。そんな賭け事をやっちゃいけないタイプのルル様が次に引く確率の高いカードは?
「ルル様。ここはスタンドしてください。私に考えがあります」
「え?12点ですよ?」
「大丈夫です」
「…わかりました!クロさんを信じます」
「いいのかい?それじゃあ次はクロネさんの番だ」
「ヒットで」
私の手は11点。ヒットした場合はルル様が引く予定だったカードが回ってくる。
ここはルル様の悪運を逆手に取る!
「では配るよ」
里長がカードをオープンする。出てきたカードは…Kだ。
「よし!」
「…おお!K!クロネ殿はブラックジャックですぞ!」
「凄いです!私が引いてたらバーストしてました!」
「これであたしとクロネがブラックジャックね!負けはなくなったわ!」
やっぱりルル様は勝負ごとに弱い。でも今回はチームプレーができるからそれがいい方向に働くこともやりようによってはできるのだ。
あとはトトちゃんの引き次第で決着がつくかもしれない。
「最後はトトさんだね」
「9点ですからな。ヒットでお願いしますぞ」
「オーケー」
「むぅ…8ですか…」
トトちゃんはヒットで合計17点になった。勝負しづらい手だ。
「リリ殿のように勝負するべきなのですかな?」
「あたしならヒットだけど」
「でも里長がブラックジャックになるとは限らないんだから、下手に攻めてバーストするよりは現状維持のほうがいいんじゃないの?」
「私なら絶対バーストしますけどトトちゃんは…わかりません!」
「むぅ…悩みますな」
こればかりは誰の考え方が正解なのかは結果を見るまで分からない。だからトトちゃんに決めてもらうことにした。
「…拙は里長殿が17より下はないと思うのですぞ。ですから…ヒットしたいですぞ。いいですかな?」
「もちろん!」
「いいですよ」
「いい手が来ますよーに!」
「ではカードを配るよ」
トトちゃんはヒットを選択した。結果は…
「3ですか。20点」
「いいんじゃない?」
「スタンドでお願いしますぞ」
「いい感じですね!」
2回戦は全員バーストなし、2人が21とかなり良い結果となった。
後はディーラーである里長の引き次第だ。
「では勝負。オープン」
「「「「な…」」」」」
里長の二枚目のカードは…Qだった。つまり一枚目のAと合わせてブラックジャック。
「はっはっは。ブラックジャックだからルルさんとトトさんには勝ち…また引き分けだ!まさかこんなに続くとはね!!」
「リリが勝負に出てなかったら負けてたのか」
「でも流れは来てると思うわ!次で決着をつけましょう!」
まさかの白熱で勝負は三回戦までもつれこんだ。




