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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
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魔吸石

 エルフの里の長。通称里長が魔法を教えてくれるようで、里長の家までエリックに案内してもらう。

 広場を離れて民家を通り過ぎ、このままだと里の外に出てしまうのでは?というところでエリックが急に立ち止まる。


「ここだ」

「え?どこにもありませんよ?」


 ルル様の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。

 目の前には巨大な木があるだけでお家は見当たらないが…よく見ると木の外周が平らになっていて、上へ歩いていけるような作りになっている。


「この木を登っていくのでしょうか?」

「正解だ。里長の家は木の頂上にある」

「ほへ~。珍しいお家ですね~」

「ともかく行ってみましょうか」


 エリックと別れ、4人で木の外周をぐるぐる回りながら登っていく。立体駐車場みたいだ。


「うわぁ。結構高いですね…」

「なかなか怖いですぞ」


 どんどん高度が上がり、下にいるエルフたちがどんどん小さく見えていく。柵などはないので、ちょっとでも足を踏みはずと地上に真っ逆さまだ。本当に怖い。


 下を見ると恐怖を感じてしまうのでなるべく上を見ながら歩く。




 次第に外周が小さくなっていき、ついに大きな一軒家が見えてきた。


「やっと着きました!」

「へんてこなとこにある家の割には普通の一軒家ね」

「とにかくお家に入れてもらおう。怖い」

「ですな」


 家の扉をリリが叩き、里長を呼ぶ。すると小さな小学生くらいの女の子エルフが出てきた。


「おお。待っていたぞ。入ってくれ」

「お邪魔します」


 女の子に居間まで案内される。

 和風なお家でテーブルから椅子まで全てが木でできていて、おばあちゃん家の匂いがする。


 それからテーブルの前で座って待っていると、お茶とお菓子を持った女の子がやってきて一人一人にお茶を勧めてくれる。


「熱いから気を付けてな」

「「「「いただきます」」」」

「ここまで来るのは怖かっただろう?」

「はい。どうしてこんな危ないところにお家を作ったのですか?」

「刺激を求めているからだよ。落ちそうになる恐怖とか。でも慣れてきて今では面倒なだけなんだけどね。はっはっは」


 ああ。エルフは長寿で退屈だから刺激を求めているんだった。里長さんもそうなのね。


「それで…里長はどちらに?」

「ん?私がそうだけど?」

「「「「ええ!?」」」」


 このどう見ても10歳未満の女の子が里長?娘とか孫ではなく?

 驚いている私たちを見て疑問を浮かべた後にポンと手を叩いて納得する里長。


「ああ。私の見た目で別にいると思ったのか。私はこう見えても君たちの100倍は生きているぞ」

「100倍…」


 えーとつまり…2000歳は生きているってこと?西暦じゃん。

 人は見かけによらないとは聞くけど、エルフはそれ以上に見かけによらないな。


「はえ~。凄いですね~。大先輩ですね」

「そうだぞ。もっと敬え。それで…君たちのギャグ。とても面白かったぞ。久しぶりに笑ったからな。お礼に魔法を教わりたいとエリックから聞いたが?」

「はい。迷いの森の結界魔法を見て、エルフの魔法のレベルの高さは承知しています。少しでもコツを教えていただければ…」

「なるほどな。けど君は私たちの結界を破ったのだよな?」

「一応は…」

「だったら教えることはほとんどないと思うがなぁ。私でもあの結界を単独で破るのは骨が折れるぞ。一応魔法は見てやるが」

「お願いします」

「うん。じゃあ何か外に向かって魔法を撃ってくれ」


 そう言って窓を開ける里長。私も立ち上がり窓に近づく。

 属性魔法は万が一里長の家に被害が出たら困るから…火魔法とかは絶対危ないよね。

 レーザーでも出そうか。


 魔法の杖を窓から出し、先端からレーザーを射出する。

 発射されたレーザーは空高く上がっていき、雲を突き抜け見えなくなる。

 うん。まぁこんなものかな。窓から杖を戻して窓を閉める。


「この程度なんですが…」

「いやいや恐ろしすぎるわ」


 横にいる里長さんに目を向けると引いている里長。


「あんな恐ろしい魔法をどこで覚えたんだ?基本の四属性のどれでもなかったように見えたが…」


 基本の四属性とは火・水・風・土の事だ。私もおじいちゃんにこの4つを教わった。

 けど魔法はイメージだと理解してからは四属性以外の雷とかも出せるようになった。レーザーは日本にいた時の漫画かなんかの知識だけど。


「えーと…独学で?」

「なんと…四属性以外を教えてやろうと思っておったが既に習得済みとはな…」


 聞くところによると普通の魔法使いは基本の四属性以外の魔法を使えることをそもそも知らないので練習すらしない者がほとんどらしい。それに種族や個人でも得意な属性、苦手な属性(エルフなら風魔法、ドワーフなら土魔法が得意など)があり、四属性を満遍なく使えるものは人間くらいらしい。ただし人間は全ての平均値が低い。


「君は結界魔法も使えると言っていたな」

「はい」

「ふーむ。それなら別のアプローチで…ちょっと待っていてくれ」


 里長が居間を離れてどこかに行ってしまう。

 それから少しして、手袋を履いた里長が慎重に透明な石を持って戻ってきた。


「これをお主にやろう」

「これは?」

「魔吸石という。魔力が吸い取られる石だ。手の平に持っているだけで魔力をグングン吸い取ってくる」

「え…それは厄介なものなのでは?」


 誰かに使えということなのだろうか?


「いや。確かに攻撃の手段としても使えるかもしれないけどな。体内魔力を増やすのに最適なアイテムなのだ」

「??」

「これはあまり知られていないことなのだが、体内魔力は限界まで使うと少し全体量が増えることは知っているかな?」

「…なるほど!知っています」


 海で出会ったリトルリバーズのちびっ子たちから教えてもらったことがある。魔力で動くボートが最初は全く動かなかったけど、毎日魔力を限界まで使って動かしていたらいつの間にか動くようになっていたと。


 その話を聞いた時に魔力は限界まで使うと増えるのかもしれないと思ったのだ。しかし自分の魔力を使い切る方法が思いつかず、結局何もすることはなかったが。


「この石は際限なく魔力を吸う。だから持っているだけで魔力を使い切り、翌日には少しだけ魔力量が増えているはずだ」

「それは…凄い石ですね。でも貴重な石なのでは?」


 色々使い道がありそうな石だ。あの恥ずかしかったネタの報酬には破格すぎる。


「いいんだ。その代わり、私と少しゲームをしてほしい」

「ゲームですか?」

「ああ。君たちと遊ぶのは面白そうだからね。どうだろうか?」


 里長が私たちを見つめてくる。私は貴重な石を貰えるのだから構わない。他の3人も快く了承してくれた。その返事を聞いて嬉しそうに喜ぶ里長。


「本当か!では少し待っていてくれ。道具を持ってくるから!」


 どたばたと再度いなくなる里長。

 そして持ってきたものは…なんとトランプだった。まさかこの世界にもあるとは。


「ほう。君は知っているのか」

「なんですかこのカードは?」

「トランプと言います。1~13までの番号が書かれているカードが四種類。計52枚のカードを使って遊ぶものですね」

「詳しいな。その通りだ。私の母が異国の者から貰ったものらしくての。これも貴重なものだ」


 異国の者か…もしかしたら異世界人だったのかもしれない。人間国では何人も召喚されていたし、過去に異世界人がいたとしても不思議はない。里長の母ってことは何千年前のことかはわからないけど。


「今回は母に教わったブラックジャックというゲームをしたいと思う」

「ブラックジャック…クロさんは知っていますか?」

「はい」

「ほう。では3人に教えてあげてくれ。補足は私がするから」

「わかりました」


 3人にブラックジャックのルールを説明する。


 ブラックジャックはカードの合計点数を21点にするか、21点により近い人が勝ちになるわかりやすいゲームだ。


 基本はディーラーとプレイヤーで勝負することになるんだけど、今回ディーラーは里長が担当するとのこと。


 細かい流れは…初め全員にカードが2枚ずつ配られる。この2枚のカードを確認して、カードを追加するか、そのまま2枚だけで勝負するかをプレイヤーが決める。ただし、ディーラーだけは2枚目のカードが伏せられた状態で配られる。だから、ディーラーの1枚目の数字だけを見て自分が勝てるかどうか判断しないといけない。


 ここで大事になるのがAのカードと10~13のカードだ。10以上のカードはジャックでもキングでも10点としてカウントされる。

 そしてAは1点か11点かを自分で選ぶことが出来るのだ。

 つまり、最初の手札が「A」と「13」だとすると…合計は21点となり、その時点で勝利が確定する。


 かなり大雑把だけどこれがルールのほとんどだ。


「何か質問はある?」

「22点と20点だとどうなるの?同点?」

「ああ。21点を超えてしまうと「バースト」と言ってその時点で負けになるんだ。だから例えば自分の点数が18点とかだと、無理に引きにいかないほうがいいかも」

「ふ~ん。なるほどね」

「では里長さんと私たちが同じ21点だとどうなるのでしょうか?」

「その場合だとプレイヤー側…つまり君たちの勝ちになる」

「わかりました!」

「とりあえずお試しで一回やってみるかい?」

「そうですね。実際にやったほうがわかりやすいでしょう」


 ということでリハーサルとして一度行ってみることに。

 テーブルの向かい側に里長が。反対側に私たち4人が座る。


「ではカードを配るよ」

「お願いします」


 里長がカードを配っていく。ちなみに私たちのカードが配られる順番はリリ→ルル様→私→トトちゃんの順番だ。


 カードはリリが「10」ルル様が「4」、私が「7」でトトちゃんが「A」だ。里長は「10」。


 そして二巡目のカードはリリから順に「8」「2」「10」「10」だ。私の2枚目のカードは「10」だったので合計は17点。トトちゃんがすでに21点確定しているので勝利だ。


「それじゃあリリから順番にカードを増やすかそのまま勝負するか選んで」

「カードを追加するときはヒット。そのままの場合はスタンド。とコールしてくれ」

「リリは18点だから無理に勝負する必要はないからね」

「じゃあヒット!」

「おいぃ!?」

「はい」


 リリに配られた追加カードは「3」だった。これで21点…ブラックジャックの完成だ。


「ほら見なさい!勝負に出た結果よ!」

「いや運が良かっただけだから」


 そう自信満々に言うリリ。確かに勝ってるから強くは言えないけど、1か2か3を引く確率は明らかに低い。あんな勝負の仕方をしていたらいずれ絶対に負ける。


「ルルさんはどうする?」

「ええっと合計が6点だから…ヒットで!」

「はい」

「えとえと…6だから…12点ですか。ヒットで!」

「はい」

「ああ!13は10点でしたよね!?」

「そうですね。ルル様はバーストです」

「うう…負けですか…」

「次はクロネ殿の番ですぞ」

「私はスタンドで」

「わかった。トトさんは21なのでディーラーの私がプレイするぞ」


 そう言って里長の2枚目のカードをオープンする。

 2枚目は「6」だった。つまり里長の合計点は16点。


 リリとトトちゃんが21点。ルル様がバーストなので必然的に私と里長の一騎打ちとなる。つまり私が17点である以上里長は必ずヒットしなくてはいけない。


「ヒット…ああ。負けだな」


 里長の3枚目のカードは「8」で24点となりバースト。

 お試しはルル様以外の3人が勝ちという結果になった。


「流れとしてはこんな感じですかね。どうですか?やれそうですか」

「面白かったわ!これならわかりやすいし楽しめそう!」

「私も何となくですがわかってきました!」

「拙も大丈夫ですぞ」

「それじゃあ本番に行こうか」


 里長がカードを回収してシャッフルする。

 そしてシャッフルしながらなんでもないことのように里長が話しかけてくる。


「ああそうだ。ただ勝った負けたでは面白くないから何か賭けよう」

「何を賭けるのですか?」

「そうだなぁ。刺激的なのがいいなぁ…服…とかどうだい?」

「え…服ですか?」

「そうだ。もし私に負けたら君たちは着ている服を私に巻き上げられる。もし私が負ければ私の服を君たちにあげよう。ああ。でもそれではフェアじゃないから、1年間服を着ないで過ごすことを約束しよう」

「ええ…」


 おやおや?何やら話が変な方向に向かい始めたぞ…


「もし私たちが素っ裸になってしまったらどうなるのでしょう!?」

「その時は全裸でエルフの里を出てもらおう。ふっふっふ。里で服を買うのは禁止する」

「それは無茶苦茶では…?」

「そうじゃないと緊張感が出ないだろう。私は…いや、エルフたちは刺激的なことに飢えているんだ。私も例外じゃない。君たちの焦る顔が見たいんだ!!」


 突然興奮し始めた里長。

 エルフって…面倒くさいな!


 そしていつの間にか私たちが居るテーブルを中心に結界が張り巡らされていた。


「ふっふっふ。逃げるのはナシだよ。最後まで一緒に楽しもう…!」

「何やら結界が現れたのですが!?」

「…破れない」


 結界を触ってみて解除できそうならしようと思ったが…

 里長が張った結界は迷いの森の結界くらい強固で集中しないと破れそうにない。


「さぁ!刺激的なゲームをしよう!」

「やってやろうじゃないの!」

「本当に負けたら全裸ですか!?まだダイエット始めてないのに!?」


 どうやら私たちは本性を現した里長と脱衣ブラックジャックをしなければならなくなったようだ…意味が分からないけど…


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