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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
42/88

迷いの森と透明カメレオン

 エルフの里に入るには迷いの森を抜けなければいけなく、私たち4人はその迷いの森で絶賛迷子中であった。


「ここさっきも通らなかったですか!?」

「おかしいですね。迷いの森は悪意無き者は迷わずに進めるはずなのですが…」

「誰かが悪いことを考えているんですね!クロさんですか?クロさんでしょう!」

「決めつけないでください」


 そもそもこの森は濃い霧がかかっていて方向感覚が狂う。それに迷子を防ぐ(特にトトちゃん)対策として4人で手を繋いで移動しているため、一番歩くスピードが速いリリに引きずられる形で歩いている。


 そして肝心のリリは何も考えずに歩いている。つまりここから導き出される結論は…


「リリがまっすぐ歩いていないせいかも」

「ちょっと!あたしはまっすぐ歩いてるわよ!」

「リリちゃんのせいにしないためにも、4人で横になって歩きましょう!」

「そうですね」


 ルル様の提案通り4人で横一列に並んで手を繋ぎながら歩く。昔こんな遊びしたことあったな。ともかく4人で確認しながら歩けばぐるぐる回ることもないだろう。


 ………

 ……

 …


 今度は私も注意深く歩いていたつもりだ。

 しかし、またしても見覚えのある特徴的な()()()()()()()()がある場所に着いてしまう。


「この木…さっきもありましたよね?」

「似ているだけで別の木ではありませんかな?今回はまっすぐ歩いていたわけですし…」

「一応木に印をつけておこうか」

「これで一安心ですね!(?)」


 トトちゃんの言う通り別の木の可能性もあったので、印をつけてもう一度歩くことにする。


「また来ましたぞ!」

「あたしがやるわ!」


 迷っているこの状況だけでも厄介なのに問題は他にもあった。それはこの迷いの森に生息している変わった魔物だ。カメレオンの様な見た目で、()()()()()()攻撃してくる。幸いトトちゃんの嗅覚や洞察力のおかげで不意打ちは避けることができているけど数が多い。早くこの森を抜けたいところだ。


「迷いの森と透明カメレオン。大変な場所に来てしまいましたね」

「こういうわかりづらいところは嫌いね。クロネ!さっさと攻略してちょうだい!」

「とりあえず印を付けた木に辿り着いてしまったら真剣に考えよう」


 本当はまっすぐ進むことができていて、単に想像以上に広い森なだけの可能性もあるのだ。


 しかしその予想はすぐに外れたことを知る。しばらく進むと、目の前には曲がりくねった木が現れる。


「…印を付けた木ですね」

「え!?4人で確認しながら歩いていたのに何で!?」

「どうやら迷いの森に囚われてしまったようですね」


 結界には私たちが悪意ありと評価されてしまったようだ。

 なぜかはわからないけど、この結界を何とかしないと先には進めないようだ。


 さてどうしたものか…と考えていると、同じ場所に戻ってしまう恐怖からか、顔が青ざめているルル様が震えている。


「こ、これは幽霊の仕業なのでしょうか…!私怖い系はダメなんですけど…!」

「いえ。エルフの結界が機能しているだけなので安心してください」

「同じところに戻るなんて面倒ね。何かいい手はないのかしら?」

「とりあえず一旦帰るのも手ですね。霧の中で夜を明かしたくはないので」

「そうしましょう!是非そうしましょう!」


 いい手を考えるとしても魔物の奇襲に怯えながらよりも安全な場所のほうがいい。

 3人も納得してくれたので、一度コルナさんとコリナさんと別れた場所まで戻ることにした。だが…




「そんな…」

「またこの木ですか…」

「やっぱりお化けがこっそり私たちの方向を変えているんです!こう…そっと肩を掴んでくいっと!そうとしか思えません!」

「いやそれはない」


 結論として、私たちは森を戻る事すらできなかった。

 来た道を戻ったはずなのに、またあの曲がりくねった木の場所にいつの間にか戻っていたのだった。完全に結界に囚われている。


「う~ん…困りましたね」

「なぜこの木の場所に戻ってしまうのでしょうか?」

「仮定の話でもいいですか?」

「いいわよ。教えてちょうだい」

「うん。じゃあいま私たちがいる、この曲がった木の場所をAとするよ」


 魔法の杖で地面にAと書き、Aを中心にして円を描く。

 全員の視線が地面に集中する。


「たぶんこのAが結界の中心なんだ。それで仮に円状になっている結界だとしたら、円の外周を通り過ぎたら…」

「Aにワープしちゃうってわけね!」

「たぶん」

「解決方法はないんですか!?」

「円の外周を見つけることができれば結界を解除できるかもしれません」


 結界は魔力で作られているから、違和感が何かあるはずだ。そこをピンポイントで見つけることができれば結界に干渉できるかもしれない。


「やることは決まったわね!それじゃあさっそく探しに行きましょ!」

「「「おおー」」」


 明確にすることが決まったおかげか、ずっと不安顔だったルル様も落ち着いたようだ。


「そうだ!せっかくだから今度魔物が襲ってきたらテイムしちゃいます!」

「いいですね。捕まえた魔物を護衛にすれば奇襲を防いでくれているトトちゃんの負担も減ります」

「助かりますぞ」

「ふふん。弱らせる役はあたしに任せなさい!」


 先程までの不安な空気はどこへやら。すっかりいつものみんなに戻った。

 そうして襲ってくるカメレオンを片っ端からリリが瀕死に追い込み、ルル様がテイムを次々に成功させていく。仕上げにテイムに成功した魔物は私が回復させて即戦力にする。


 そんなことを繰り返していくと…


「いいわね!あたしたちにもう隙は無いわ!」

「軍隊のようでかっこいいですな」


 合計20体のカメレオンが私たちの周囲を歩き守ってくれる、隙のない陣形が完成した。これで奇襲の心配はほぼなくなったと言ってもいい。あとは結界を解除することに専念できる。実はもう策は考えているのだけど。


「お姉ちゃんがテイムしたカメレオンの、透明になる能力はあたしたちも使えるようにならないのかしら?」

「う~ん…無理みたいですね。やっぱり契約の形を取らないと恩恵を受け取ることはできないみたいです」

「そうですか。隠密といえば忍者!ですから少々残念ですなぁ」

「ところでクロさんは杖で遊んで何をしているんですか?」

「失礼ですねルル様。これは遊んでいるわけではありません。立派な作戦です」

「魔法の杖で地面に線を引くことがですか?」

「です」


 そう。いま私は杖を使って地面に線を引きながら歩いている。がーーーーってね。

 これで円の外周を見つけることができるはずだ。




 そしてしばらく歩き…また曲がりくねった木の場所に戻った。

 後ろを振り返ると私が地面に引いていた線はなく、逆に前方の少し進んだ先に線がある。


「なによ。結局戻ってきちゃったじゃない」

「これでいいんだよ。もう一度歩くよ。ただし今度はさっき私が引いた線をなぞって歩く」

「「??」」

「なるほど!拙はわかりましたぞ」

「え?(ちょっと!後でこっそり教えなさい)」

「(みんなで手を繋いで歩いていますからこっそりは難しいですぞ…)」

「すぐにわかるよリリ。とにかくついてきて」

「も~!勿体ぶらないで教えなさいよ!」

「私も気になります!」


 ギャーギャーうるさいポンコツ姉妹を無視して先を急ぐ。

 そうしてさっき歩いていた道を地面の線を頼りに歩いていくと…ぷつりと線が切れている場所に行き当たったので立ち止まり、ルル様とリリに解説する。


「さて。もうわかったと思いますが、先程書いた線がここで消えています。つまり、この線が切れたところから曲がった木…結界の中心にワープしたのでしょう。ですからこの境界線が結界の外周部分です」

「「おおおおお」」


 2人が納得したことを見届けてから線の切れ目を手で触れてみる。すると微かに魔力の壁…と表現すればいいのだろうか。とにかく違和感がある。ただし普通に歩いていては決して気づかないほどの小さな違和感だ。


「なんとかなりそう?」

「私の魔力を流して干渉してみる」


 結界に手をかざして私の魔力で穴をあけるイメージ。

 大量の魔力を一気に流し込む!


「どうですか…?」

「…ダメ…ですね…」


 想像以上の結界の硬さに愕然とする。たぶんこの結界は何人ものエルフたちが集まって作った合作なのだろう。半端じゃない魔力が込められていて容易に干渉できない。


 例えるなら、巨大な水槽にほんの少しだけ穴を開けた。そんな手応えだ。ちょろちょろと水はこぼれるけど水槽自体が壊れるわけではない。


 もっと大きな魔力が必要だ。でも私にはこれ以上…

 そう考えていると私の手の甲の上にルル様が手を重ねる。


「え?」

「私はテイムしか使うことができませんが…魔力量自体は多いんですよね?少しでも力になることができれば…」


 そうだ。ルル様は魔力量自体は私よりも多い可能性があるのだ。2人で力を合わせればもしかしたら…


「ルル様…では私の合図で目一杯魔力を流してください」

「わかりました!」

「いきますよ。せーの!」

「やああああ!!」


 私の魔力とルル様の魔力が結界に干渉する。

 今回は手ごたえを感じる!いける!


 ルル様の魔力量は本当に多いのだろう。

 徐々に結界が音を立てて崩れていく。透明だった結界がヒビ割れて崩れていく。改めて結界に触れようとするが結界がある違和感はもうない。


「やったわね!」

「さすがですぞ!」

「えへへ」


 これで先に進めるはず。そう思い結界の外に足を踏み入れると…木の陰から見知らぬ男性が手を叩きながら出てくる。


「パチパチパチ。凄いな。まさか人間に我らの結界が破られるとは思わなんだ」

「…エルフ」

「その通り。結界を突破した敬意を表して私が里まで案内しよう」


 ゆっくりとこちらに向かってくる男性は色白で耳が尖り、背中に弓と矢を担いでいる。想像通りのエルフだった。


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