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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
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あの叫んでる子…面白そうね?

 移動手段になりそうな魔物をテイムすることにした私たちは朝から歩き回り、騎乗できそうな魔物を探す。


 そうして探し始めて数分で索敵能力の高いトトちゃんが何かを発見してくれる。


「あっちに何かたくさんいますぞ」

「ん?よく見えないから近づいてみよう」


 トトちゃんが指差す方向を見ても私の目では黒い物体にしか見えないので、もう少し近づいてみる。


「あれは…熊かな?」

「強そうだしいいんじゃないの?」


 黒い物体の正体は熊のような見た目をした魔物だった。ただし近くで見ると黒ではなく緑色で毒々しい。


 強そうではあるけど明らかに毒を持っていそうだし、熊に乗るとか金太郎のイメージが強すぎて個人的には遠慮したい。


「背中は広いから乗れるとは思うけど…ビジュアルがなぁ」

「可愛さはゼロですね!」

「毒を持っていそうですな」

「毒は好きじゃないわね!卑怯な感じがするわ!」


 戦って倒したとしても食べられなさそうなので放置することに。

 次の魔物を求めてひた歩く。


「全員が納得できる魔物はなかなか見つからないですね」

「そうですね。4人共好みが違いますし」


 ルル様→かわいい。もふもふ。

 リリ→強そう。でかい。

 トトちゃん→レア魔物。特殊能力持ち。

 私→速い。乗りやすい。


 とそれぞれテイムしたい魔物の共通点が少ない。

 それからも狼や怪鳥、オオトカゲなど乗れそうな魔物を見つけることはできるが、ピンとくる魔物を発見することはできなかった。


 そして気づいたら3日が経ち…4人の間では諦めムードが漂っていた。


「…もう普通に歩いたほうが早い気がしてきたわ」

「そうだね。このまま探さずにまっすぐ進んで、道中で見つけられたら…って方向にシフトしたほうがいいかも」

「ですぞ」

「もういっそスフィルクスさんを呼びますか?」

「いやー…スフィルクスさんを移動の足に使うのは気が引けますね…」


 こんなことで我を呼ぶとは…って怒られそうで怖い。もっと大事な場面で呼んだほうがいいんじゃないかな。


 魔物を探しながら移動しているため時間も掛かってしまっていたので、今日見つけることが出来なかったらエルフの里に向かうことになった。




 最終日ということでルル様は諦めずに終始きょろきょろと周囲を一生懸命探したり、大声で「モフモフさん来てくださーい!」と叫んでいたけど…逆にそんなことをすれば逃げると思う。


 そんなルル様の健闘虚しく成果が無いまま日が暮れてきたので、私は諦めて野営地を探すことに。そしてちょうどいい開けた平坦な場所を見つけたのでみんなに声を掛けようとすると…ルル様が何かを見つけたようだった。


「みんな見てください!人が倒れてます!」

「あら。こんなところで…魔物にでもやられたのかしら?」


 残念ながら見つけたのはモフモフの魔物ではなく傷つき倒れている人だった。近づいて確認するとまだ息がある。白髪の大人の女性で身体のあちこちに擦り傷がある。胸はでかい。ルル様クラスだ。F以上と見た。


 命に別状はなさそうだけど…さて。

 リリがしゃがんで女性のほっぺをつんつんしながら私たちのほうを振り向く。


「どうするの?この人?」

「それはもちろん助けましょう!」

「ではとりあえず回復しましょうか…【ヒール】」

「………ん」

「お。気が付いたみたいね」

「ここは…私は一体…?」

「お姉さん!お外で寝てたら風邪引いちゃいますよ!」

「お姉さんも寝たくて寝ていたわけではないですルル様」


 お姉さんが頭に手を当てながらゆっくりと身体を起こす。そしてハッとして辺りを見回す。


「私の妹を見ませんでしたか!?」

「いえ…お姉さんしかいませんでしたけど…」

「そんな…私たち緑の熊に襲われて…それから…」

「ああ!あの緑の熊!」


 どうやらこのお姉さんは妹と二人で密林の中にある薬草を探していたらしく、その道中で運悪く緑熊に遭遇。2人とも攻撃を受け、必死に逃げている途中ではぐれてしまったらしい。


「お願いします!一緒に妹を探していただけないでしょうか!?必ずお礼はしますから!」

「もちろんです。一緒に探しましょう!」

「お姉ちゃんならそう言うと思ったけど」

「もう少しで日が暮れてしまいます。急いで手分けして探しましょう」

「その必要はないですぞ。拙に任せてくだされ。お姉さん。匂いを嗅いでもいいですかな?」

「??はい。どうぞ」


 トトちゃんがお姉さんの服を掴みクンクンと匂いを嗅ぎ、一頻り嗅いだ後に顔を上げてまたクンクンする。トトちゃんは犬の獣人だけあって鼻が利くようだ。


「クンクン…皆さん。こっちですぞ」

「行きましょう!お姉さん!」

「はい!」


 トトちゃんを先頭に密林の中に入っていく。

 そして少し歩いた木の陰にお姉さんそっくりな女性を発見することが出来た。トトちゃんが有能すぎる。


「見つけましたぞ」

「でかしたわねトト!後でご褒美をあげるわ!」

「妹さんも怪我をしていますね」

「回復しましょう。【ヒール】」

「…傷は塞がったけど苦しそうね」


 リリの言う通り傷は消えたが未だに苦しそうな妹さん。顔は赤く上気しており、汗をかき意識はない。


「そんな…まさかあの毒に罹ってしまったのかしら…」

「あの毒とは?」


 お姉さんの話では、緑熊に攻撃されると稀に病気が発症してしまうらしい。その病気は譲渡毒と呼ばれる毒で、その名の通り誰かに毒を移さないと一生治ることのない厄介な病気らしく、このままだと危険だと言う。


「他人に移すとその人はどうなるのでしょうか?」

「三日三晩高熱にうなされることになりますが、移した本人は治り、移された人間も三日後には治ります」

「厄介な病気ね」

「そして申し上げにくいのですが…この毒は5人に移さなければ治らないのです」

「5人ですか…」


 運が良いのか悪いのか…お姉さんを含めると丁度ここに5人いる。だけど毒を譲渡されると三日間は旅を続けることが出来なくなる。いや、そもそもこんな魔物ひしめく外の世界で全員が病に罹ることは非常に危険だ。まさに命の危険が付きまとう。


 そんなリスクを冒してまで他人を助けることに私は正直反対だ。心苦しいけど。


 しかし私のお姫様はそんな損得勘定なんて持ち合わせてはいない。5人に移せば治ると聞いた途端笑顔になりお姉さんの手を取る。


「良かったですね!ここに5人いるので妹さんは助かりますよ!」

「ですが…みなさんが酷い目に遭ってしまいます。もし3日間に魔物に襲われでもしたら…死んでしまうかもしれません」

「でもこのまま妹さんを放っておくことなんてできません!みんなも…すみませんが協力をお願いします!」

「この方はこう言ってますが…」


 お姉さんは嬉しいような困ったような…そんな顔をしながら私たち3人を確認する。


「ま、高熱ごときであたしが魔物に後れを取ることはないわ!」

「熱を抑える秘伝の薬を使うときが来たようですな」

「私はルル様が助けたいというのならば助けましょう」


 こうなると予想していた私たち3人も同意する。

 リリなら高熱でも動けそうだし、仮に全員が戦闘不能になるほどの重病ならルル様にスフィルクスさんかミツキさんを呼んでもらえば大丈夫なはず。


 そんな私たちの反応が予想外だったのか、お姉さんは唖然とした後…なぜか突然()()()()()。それはもう可笑しそうに。


「あは!あははははは!!」

「ええ!?どうしたんですか!?」

「あはははは!聞いた?コリナ」

「………はい。コルナ姉さん」


 一頻り笑ったあとに、意識が無いはずの妹に話しかけるお姉さん。するとコリナと呼ばれた妹さんが目をゆっくりと開け何事も無かったかのように立ち上がる。何が起こっているのかわからない。


「あれ?あれれ?妹さんが立ち上がりましたよ!?譲渡毒は!?」

「あははは。騙してごめんね。あなたたちの本性を知りたくてつい。お詫びにわっちたちの本当の姿をお見せしよう」

「わわわ!狐さん!?」


 2人の姿が徐々に変わっていく。耳が生え、9つの尻尾が生え、人間だった身体が巨大な狐に変化してしていく。白の美しい毛並みだ。


「私たちは妖狐のコルナとコリナ。旅人を騙して本性を暴くのが好きなちょっぴりお茶目な魔物さ」

「それがわっちたちの趣味で生きがいなのです」

「…嫌な趣味ですね!」


 予想外の展開についていけず言葉を失ってしまったが…目の前にモフモフで、強そうで、素早そうなレア魔物が出現した。


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