クロネVSアラタ 異世界人頂上対決
おじいちゃん視点です。
遅くなってしまい申し訳ない。
できれば毎日投稿したいのですが…!!(できるとは言ってない)
じいさん視点
アラタがクロネと1対1で戦いたい!とわがままを言い出したので、仕方なく街の外に出ることになった。
見晴らしのいい空間で2人が向かい合っている。そこからかなり離れた場所で戦いを見守るワシとクロネの仲間の3人。その中でも気の強そうな小さな女の子が話しかけてくる。
「あのアラタって子は強いのかしら?」
「強いぞ。人間国で1番ではないかな」
「クソジジイはクロネとアラタのどっちが強いと思っているのかしら」
「ク、クソジジイ…」
「リリちゃん!女の子がクソとか言っちゃだめ!それにおじいちゃんに失礼だよ~」
「だっていかにも魔法使いみたいな恰好しちゃってまぁ…喧嘩売ってるのかしら?」
「ちょっと前にもこの風当たりの強さは体験したわい…」
真実はどうあれ国王の話だとクロネはノウキングダムの王女様を誘拐したらしい。となればこの姉妹がそうなのじゃろう。
ノウキングダムは魔法使いが嫌いらしく、以前立ち寄った時にひどい仕打ちを受けたことは記憶に新しい。そしてその国の王女ともなれば筋金入りの魔法使い嫌いなのじゃろう。でもクソジジイはいくらなんでもひどいと思うの。
その妹の物言いに申し訳なさそうに謝ってくる姉の…ルルじゃったかな。
「妹が失礼なことを言って申し訳ありません!根はいい子なんです!」
「うむ…お主たちの国に行った時も同じような反応をされたからのう。もう慣れたわい」
「それで話を戻しますがガンド殿はどちらが強いと予想されますかな?聞けばガンド殿はクロネ殿の魔法の師だとか。それにここまではアラタ殿と旅をされたとなれば、ある程度の予想はつくのでは?」
「そうじゃのう…確かにクロネに魔法を教えたことはあるが、あの子は教えなくても魔法は使えた。それほどの素質があった」
「さすがはクロさんです」
「じゃが…クロネが人間国にいた時から何も成長していないのなら…勝つのはアラタじゃろうな」
「ふ~ん。どうしてそう思うのかしら」
確かにクロネには類稀なる才能があった。
じゃが同時に、彼女はどこにでもいるただの子どもでもあった。
戦闘に関して言えば素人もいいところじゃ。武道の経験もないじゃろうし、喧嘩をしたことすらないじゃろう。そんな普通の女の子が戦えるだろうか?答えは否じゃ。
「アラタは剣道という武道を幼い時から学んでいたそうじゃ。それにアラタは魔法に関しても一つだけ、おそらくクロネ以上に使いこなせる武器がある」
「それは何ですか?」
「自己強化の魔法じゃ。アラタは火魔法や水魔法などの属性魔法はてんでダメじゃが、身体強化の魔法だけは飛びぬけた才能がある。そしてその力は近接戦闘が得意なアラタとの相性が非常に良い」
「ふ~ん」
「対してクロネは魔法の才はあるじゃろう。じゃがワシら魔法使いは前衛がいてこそ真の実力を発揮するというもの。こと1対1の戦闘において魔法使いは詰められると無力になると言ってよい。クロネにはちとつらいものがあるじゃろうな」
それにアラタは相手に接近するのがとても上手い。足運びがワシのような素人とは違うことが一目でわかる。魔法を使おうとしたときにはすでに目の前に接近されるじゃろう。よって勝負は一瞬でつく可能性が高い。そう締めくくると、腕を組み目を瞑って話を聞いていた少女がワシを馬鹿にしたような目で見てくる。
「あんた。クロネとはいつから会ってないの?」
「数年…2年ほどか?それがどうかしたかの?」
「クロネはたった一人で人間国とノウキングダムを横断してきた強者よ。途中何度魔物に襲われたかは知らないけど、平気な顔してあたしの国まで歩いてきたそうよ。それにクロネは私たちとの旅でほぼ毎日夜の見張りをしてくれているの。朝起きたら魔物がそこら中に転がっているのも珍しくないわ」
「私とリリもこれからは見張りしようね」
「いつの間にか暗くなったら寝ちゃうのよ…それはいいとして、普通の魔法使いにそんなことできるかしら?クロネ以外には出来ないでしょうね。だから!クロネをそこら辺の魔法使いと同じように考えている時点であんたは師匠失格よ!」
ビシっと指をさされる。別に魔法を教えただけで師匠とは思ったこともないのじゃが…
ともあれこの少女たちはクロネのことをよほど信頼しているようじゃ。姉も犬人の子も頷いている。
じゃがワシの見解は変わらない。いくらクロネが魔法使いとして優れていたとしても相性が悪すぎる。
「ここで議論していても意味がない。そろそろ戦い始めるようじゃし、どちらが正しいかは直接目で見て判断しようぞ」
「そうね!目にモノ見せてあげるわ!」
ともあれこれ以上話すと少女相手にむきになってしまいそうなので視線をアラタとクロネに戻す。
何事か話しているようじゃ。耳を澄ませる。
「開始の合図はどうする?」
「新くんが動いたら私も動く」
「それじゃ不公平じゃない?ボクがコインを飛ばすからさ。それが地面に着いたら同時に動くってことでどう?」
「いいよ」
「それじゃ…ほい」
アラタがコインを2人の中間地点に投げる。全員の視線がそこに集中し…
「スタートっ!」
「【結界魔法】」
コインが地面に落下すると同時にアラタが高速でクロネに接近する。だがクロネもそれは読んでいたようで結界魔法をいち早く展開する。
結界魔法を単独で展開できるその魔力と展開までの速さは称賛に値する。じゃがアラタは見た目に反してパワーもある。通常の結界魔法では紙切れのように突破されるじゃろう…
しかし結果は違った。結界とアラタの木刀による一撃がぶつかり合い…アラタが後ろに引く。結界には傷1つ付いていない。
「なんじゃと!?あの展開の速さで防御力もあるというのか!」
「クロさんの結界は凄いですよ!だって雷さえも防いじゃうんですから!」
「はぁ!?雷じゃと!?」
結界魔法で雷を防ぐなぞ聞いたこともないぞ?もしそれが真実ならアラタが突破することは不可能じゃ。アラタも目を見開いて自分の木刀を見つめている。
「これは予想外だ。まさか防がれるなんて思いもしなかったよ」
「そう?もし今のが全力なら、私には一生勝てないよ」
「へえ…言うじゃないか…じゃあちょっと本気出すよ。【二倍強化】」
アラタが身体強化の魔法を発動させる。ダブルは身体能力を2倍まで引き上げる。つまりスピードも、パワーも、すべてが先程の2倍だ。
「おお。先ほどよりも断然速いですぞ」
「なによ。さっきは手加減していたわけ?クロネ相手に」
「そうじゃな。身体強化を併用したアラタの戦闘が本来のスタイルじゃ」
「それでもクロさんの魔法は無敵ですけどね!ほら」
2倍の速さで動くアラタが先程と同じように正面から木刀を振りかぶる。
しかし結果は変わらなかった。結界は割れることはなく、クロネも微動だにしない。
「なんという硬度じゃ。あの一撃を受けてなお平然としておるとは…」
「元々クロさんは凄いですけど、あの杖で更に結界も強固なものを作ることが出来るようになったって言ってました!」
「クロネが使っておる杖か?そういえば見たこともない杖じゃ」
「あれは魚ちゃんさんが譲ってくれた魔法の杖で、魔力を増幅させてくれる力があるそうです」
「魚ちゃんさん?それに魔法の杖なのじゃから魔力を増幅させてくれるのは当然なのじゃが…」
じゃが魔力の増幅にもピンからキリまである。もちろんそこら辺で売っておる魔法の杖は魔力を全く伝達しない紛い物がほとんどじゃが。しかしクロネが使っている魔法の杖は造形がかなり凝っておる。おそらく本物じゃろう。使ってみれば一目瞭然なのじゃが…
「マジか…これでも壊れないなんて…」
「今度はこっちの番。【水球】…しっかり避けてね」
「嘘だろ!こんな初級魔法があるか!【三倍強化】!」
アラタが引いたことで余裕が出来たクロネが魔法を発動した。ウォーターボールという初級魔法の単語が聞こえたのじゃが…実物はそんな生易しいものではなかった。
クロネの頭上に浮いている水の球はまるで月じゃ…そんな錯覚を抱くほどの巨大な水の球がアラタに向かって飛んでいく。
普通の戦士なら為す術もなく洪水に巻き込まれて溺れるじゃろう。
しかしアラタは3倍速の加速で横に回避する。
目標のいない地面に着弾した水の球は破裂しそのまま巨大な水溜まりを作る。
もし後ろに後退していたなら破裂した水に巻き込まれて勝負は決まっていたじゃろう。
「ありえん…あんな魔法を使えるなぞ…」
「確かにあそこまで威力のある魔法を使ったのは初めて見たわね!トト。解説して頂戴」
「恐らくですが…クロネ殿の本来の実力に魔法の杖。そしてルル殿と契約したミツキ殿の恩恵が掛け合わさってあそこまでの大魔法に昇華したと推察いたしますぞ」
「ミツキ殿とは?」
「水龍神の娘様ですぞ」
「水龍神!?!?」
どんな人脈じゃ!いや神脈!?
詳しい事情を聞くと、どうやらこの人畜無害そうなルルという少女はテイムなる魔法を使うことができ、魔物と契約することで自由に使役、協力ができるというとんでもないユニーク魔法を使うことができるという。そして水龍神の娘と契約したことで味方の水関連のステータスが軒並み上昇しているらしい。
ビーチバレーの印象ではその…残念な子かと勝手に思っておったがどうやら思い違いじゃったようじゃな。さすがは王族か。
そしてさらにクロネの攻撃は激しさを増す。
「これでだめなら…【水弾】」
「ちょ!ふざけんな!」
今度は数を数えるのも馬鹿らしくなるほどの水の玉がクロネの周囲から次々に射出されていく。もはや狙いなどは定めずに所かまわずばら撒かれる水の弾丸を文句を言いながら必死に避け続けるアラタ。
「よくもまぁ避け切れるものね」
「アラタくんはまだ速くなるんですかね?」
「いや…アラタは3倍までが限界のはずじゃ。ダブルを使用した後でさえしばらく動けなくなるほどの反動を受けるのじゃ。トリプルが精一杯じゃろう」
それでも十分なほどアラタは圧倒的に強かったのじゃ。トリプルを使えば負けることはないと思っていたはずじゃ。それが蓋を開けてみればここまで一方的な展開になるとは…
そして戦いの終わりはすぐそこまで近づいていた。
「このままだとジリ貧だね。点でダメなら面。【大津波】
「くっそぉっ!!なんで!!くそおおおおお!!」
水弾を消したクロネがすかさず次の魔法を発動。
回避不可能な津波がアラタの目の前に出現し為す術もなく飲み込まれる。
そしてクロネが魔法を解いた後には気絶したアラタが地面に倒れていた。
「…勝負あったのう」
「やっぱりクロネのほうが強かったわね」
「ああ。じゃがまさかここまで圧倒的とは…」
魔法の根底を覆すような威力の魔法を連発したクロネに戦慄を覚える。強すぎると言ってもいい。
そのクロネはアラタに近づき呼吸を確認している。ほっとしているところを見るに無事のようじゃが…あそこまでボコボコにされたとあっては起きた後が大変そうじゃわい…
戦闘が終わったのでクロネと倒れているアラタに近づく。
「あ。みんな」
「見事であった。魔法使いとしては完全にお主に先を越されてしまったようじゃ」
「さすがはクロさんです!」
「それで、この子はどうするの?」
「起きてくるまでワシが傍にいよう。それで相談なのじゃが…」
「なんでしょうか?」
「この子は非常にプライドが高くてのう…おそらく負けたことがないはずじゃ。じゃから起きた後どのような反応をするか想像もつかん。お主たちに迷惑を掛けるかもしれんから、しばらくはアラタに近づかんほうがいいかもしれん」
暴れるか泣くか…ともかくクロネとはしばらく会わせないほうがいいことは確かじゃ。
「なるほど。私も顔を合わせづらいですし…このままエルフの里に行こうか?みんな?」
「そうね!海も堪能したし。ちょうどいいかもしれないわね!」
「私もいいですよ」
「拙も問題ないですぞ」
「すまんのう。追い出したみたいになってしもうて」
「いえ。それでは新くんが起きてくる前に出発してしまいますね」
「ああ。そうじゃ。クロネよ。伝えることがあるんじゃった」
「なんですか?」
「実はな…」
ワシが国王からクロネの捜索をするように命令されたこと。それは断ったが、強国のノウキングダムから要請があった以上捜索は続いているであろうことを伝える。
「人間国とノウキングダム。2国がお主たちを探しておるということを肝に銘じるのじゃ」
「わかりました。これから行くエルフの里は獣人国に近いですが、頭に入れておきます」
「うむ。では達者でな」
「はい。あ、これ人間国を出るときにおじいちゃんから貰ったお金です。使ってないので返しますね」
「おお。すまんな」
「ではおじいちゃんもお元気で」
「次会ったらあたしとも戦ってもらうわ!そのことをしっかり伝えなさいよね!」
4人が去っていくのを見送りアラタの横に座り込む。
クロネは想像以上に成長しておった。それは喜ばしいことでもあり、悪い人間に目を付けられそうで不安でもある。
そしてアラタには良い薬になったことじゃろう。どこか他人を見下していたアラタがこの先成長できるかどうか…
しばらくしてアラタがゆっくりと目を開ける。
起き上がろうとするが力の反動で起き上がれないようじゃ。
「…負けたんだ。ボクは」
「そうじゃのう」
「あんな大口叩いておいてこんなに無様に負けるとは思わなかったよ。はは」
「………」
「悔しいなぁ…」
「これからどうするのじゃ?彼女たちはエルフの里とやらに向かったようじゃが」
「…今追いかけてもまた負けるだけだ。そんなことになったら自分を許せない。もっと強く…強くならなきゃ…」
「…そうじゃのう」
アラタが苦痛を我慢して無理矢理起き上がる。
そして強い瞳でワシのほうを向く。
「じいさん。ノウキングダムに戻ろう」
「うぇ………」
「力が全てのあの国で鍛え直すんだ。そしてもう一度黒音と戦って次は勝つ」
「行きたくないんじゃが…」
「いいから行くよ!時間が惜しいんだ!」
「嫌じゃーーーーー!!!」
またあの国に戻るなんて、いやじゃあああああああああああああ!!!!!!!




