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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
36/88

水着コンテスト(2人)&追跡者とのビーチバレー対決!?

アラタ視点です。

 ボクは初めて黒音の噂を聞いた時から気に食わなかった。


 曰く、初めての異世界召喚の成功者。

 曰く、歴代最強の魔法使い。


 教えた魔法は全て覚え、独自の魔法を作り出したこともあるとか。まぁそこはいい。問題は城で、異世界人の中で誰が一番かわいいかの人気投票が裏で行われていたことだ。偶然兵士がその話をしているところを聞いたボクは無理矢理問い詰めた。


 すると1位は断トツで黒音だと自白しやがった。ボクはランキング外。どうやら城ではボクが男だということは噂になっているらしく、女装という文化が定着していないせいで腫物を扱うように接されていることは知っていた。


 だけど!可愛さに男も女も関係ないだろ。

 可愛くても男の子だからちょっと…って引く奴の意味がボクにはわからない。こういう奴は芸術品を見て感動した後に子どもが描いたと分かった時、手のひらを返してこき下ろすに違いない。


 その頃は自分がランキング外の事実を思い出すだけでムカムカして、城にいる魔法使いに片っ端から勝負を挑んでボコボコにしていた。


 そのおかげで強さのランキングはボクが1位で2位が黒音だったようだけど、やっぱり納得いかなかった。




 そんな経緯があり、ボクは直接会ったこともない黒音という少女に敵愾心を勝手に持ち、人間国を出るというじいさんに付いて行くことであわよくば黒音に会い可愛さでも、強さでもボクが1位だと証明したかった。


 そんな因縁の相手が海を見ていると声を掛けてきた。

 4人いるけど…じいさんと話している奴が黒音なんだろう。


 歳はボクと同じくらい…20歳前後かな。黒髪のセミロングで身長は160くらい。


 見た目が日本人であることからも同郷なのではないかと思う。ただ仲良くなろうとは思わなかった。考えるよりも先にボクと勝負をしろと言葉が出る。相手は困惑しているが構うものか。


「勝負ってなにで勝負するのよ?」


 黒音の傍にいた金髪の少女が訪ねてくる。

 紅い服の自己主張の強い服を着た小さな少女だ。勝負と聞いて目を輝かせている。


 さて。咄嗟に勝負を仕掛けてしまったけど具体的には何も考えていない。

 けど単純な戦闘をする気はない。


「まずは可愛さ勝負だ!」

「可愛さ勝負…ですか?」

「そう。水着に着替えて、どちらがより可愛いか決めよう」

「ええ…水着ですか…そもそも私が勝負をするメリットが無いような気が…」

「面白そうじゃない!行くわよクロネ!」

「ちょ!はなせーー!」


 黒音が金髪の少女に引っ張られていく。

 ボクも準備しにいかないと。


「じいさん。さっき買った水着出して」

「本当にこれを着るのか…?」

「じいさんはここで待機ね。覗いたら殺すから」

「男を覗く趣味はないわい」


 街に来てすぐに買った水着を持って岩陰まで移動する。

 買ったのは白のビキニとショートパンツ。それと緑色のパレオも買った。


 この街の水着は種類が豊富だったので選ぶのが楽しかった。海が近いこともあるだろうけど、日本と比較しても見劣りしない品揃えだった。その分決めるのに時間が掛かってしまい、じいさんは腰が痛いだのと文句を言ってきたがあれくらいの時間すら待てないとは情けない。


 


 着替えた後に一応鏡で問題ないか確認する。下半身もパレオで隠れているので違和感はない。


「…よし。かわいい」


 岩陰から出て先ほどの場所に戻ると黒音はすでに着替え終えて戻ってきていた。

 名前と被せたのだろうか。黒のビキニを着て恥ずかしそうに身体を手で隠している。


「くっ…もう着ることはないと思ってたのにどうしてこうなった…」

「かわいいですよクロさん!」

「あら。来たようね。それでどうやって勝ち負けを決めるの?」

「そうだな…じいさんとそっちの3人でそれぞれかわいいと思うほうを指差してくれ。身内だからってのはナシで純粋な可愛さで」

「いいわよ!」


 じいさんと金髪少女(小)と金髪少女(大)、それに忍者の格好をした犬耳少女の4人に投票してもらう。

 まさか黒のビキニという攻めた水着で来るとは思わなかったが問題ない。ボクのほうが可愛い。


「それじゃあ一斉に指差すよ。せーの!はい!」


 4人の投票は…

 ボク→金髪少女(小)、犬耳少女

 黒音→じいさん、金髪少女(大)


「おいじじい」

「だってお主男じゃん…」

「「「「ええ!?男!?」」」」


 ボクと初対面の4人が大げさに驚いている。うん。その反応は見飽きた。


「これがリアル男の娘ですか」

「あたしを騙すなんてやるわね!」

「はぁ~。つまりそのパンツの中には…」

「ルル殿。やめてください」


 4者4様の反応だが嫌悪感は抱いていないようだ。

 それにしても引き分けかぁ。クソじじいがボクに入れてれば勝ってたのに…


「それぞれ理由を聞いてもいいかな?あ。クソじじい以外の」

「おーーい!なんじゃその態度は!?」

「あたしはあなたのその理想的な胸に着目したわ!それに筋肉もかなりついているみたいだし、へなちょこな見た目のクロネよりはあなたに投票したわけ」

「拙も理想的な筋肉の付き方をしていたので投票しましたぞ」

「私はクロさん一筋なので!」


 おっぱいが大きい金髪少女が黒音に抱きついている。黒音も満更ではない様子。なるほどそういう関係なのか。それならしょうがないな。


「第一回戦は引き分けということで次にいこう」

「まだあるんですか…」

「当然だよ。これは君と決着をつけるための勝負なんだから」

「…私、何かしましたっけ?」

「次の対決は…ビーチバレーだ!」

「「「びーちばれー?」」」


 相手の3人が首を傾げているので説明する。


 1チーム2名の選手で対戦。ボールへの接触は3回まで(ブロックも含める)、この回数以内で相手コートにボールを返し、相手がボールを戻せなければ得点となるラリーポイント制をとる。点数はわかりやすいように10点先取で1セット。3本勝負で先に2セット取ったほうの勝ちだ。その他のサーブやらの細かい説明もつけ足していく。


「ボクはじいさんと組むから、そっちは黒音の他に誰か1人パートナーを選んでよ」

「ええ~。ワシもやるの?」

「歳なんだからさ。運動も大事だよ」

「しょうがないのう」


 黒音は魔法使いらしいから普通にやったらボクが圧勝してしまうだろう。じいさんはいいハンデだ。


 あちらの様子を見ると…揉めているようだ。


「クロさんのパートナーは私です!」

「あたしだってこの遊びしてみたいわよ!」

「クロさんはどっちと組みたいんですか!?」

「えーと…新…くん?途中で交代してもいいですか?」

「構わないよ」

「それじゃあ1セット目はルル様で、2セット目はリリと組む。これでいい?」

「仕方ないわね」

「やっぱり私が一番なんですね!!」

「いえ。最初にやらかしてもまだ挽回出来るので」

「私やらかす前提!?!?」


 どうやらあちらはセットごとに相手を変えるようだ。特に問題ないだろう。


「で、どこでやるの?」

「ここでやろう。ボールは買ってあるんだけど、コートが無いから…じいさん魔法でコート作ってよ」

「ワシに無茶ぶり!?」

「魔法でパパっと」

「あのな。魔法はそんな万能ではないのじゃ」

「ええ~。じいさん相変わらずだなぁ」

「どういうことじゃ!?」


 となると自前で作るしかないのか…

 ネットとか売ってるのかな?と考えていると黒音がおずおずと手を挙げている。


「何?」

「私ならたぶん作れると思います」

「え?ホント?」

「はい」

「じゃあ作ってもらおうかな」

「わかりました」


 黒音が地面に手を置き魔法を発動させる。

 するとみるみる四角いコートの白い線が地面に描かれていき、中央に砂で作られたネットが出現する。


「流石はクロさんです!」

「ふーん。この中で遊ぶのね」

「こんな魔法は見たことも聞いたこともないのじゃが…」


 ネットに近づきを触ってみるが固い。弾力性はさすがに無いが、これならボールが当たっても崩れる心配はないだろう。


 それにしてもじいさんでも出来ないような魔法を平気な顔してやってのけるとは…

 城での魔法使いとしての黒音の評価は正しかったということか。


 ボクにはここまでの魔法の才能が無かったのに…

 嫉妬の感情をなんとか抑えて冷静なフリをする。


「ありがとう黒音。それじゃあ始める前に参加する人は水着に着替えてもらおうか」

「私もですか!?」

「ワシもですか!?持ってませんけど!?」

「じいさんのはボクが買っておいたから。早く着替えてきて。そっちのおっぱいさんも水着のほうが動きやすいでしょ」

「この年になって海パンを履くのか…」

「おっぱいさん…」


 2人がなぜか沈んだ顔で着替えに向かう。小さいほうの…リリ?も黒音から水着を受け取ってスキップしながら着替えに行った。

 それから黒音がボクに話しかけてくる。


「あの」

「ん?なに?」

「ルル様は自分の大きな胸がコンプレックスなのです。だから胸のことはあまり触れないであげてください」

「そうなんだ。それは…ごめんね。それじゃあルルさんって呼ぶよ」

「ありがとうございます」


 よっぽどルルさんが好きなのかな?ボクの言葉を聞いてほっとしたようだ。


「…敬語使わなくていいよ。同い年くらいでしょ。あとルルさんって君の彼女なの?」

「まだ付き合ってはいないけど…好きだよ。今は王女(笑)と護衛の関係だけど、いずれは告白するつもり」

「へえ」


 そう言いながら顔を赤らめる黒音。

 この子のことを勝手に敵視してたけど…意外に可愛いとこあるな。悪い子でもなさそうだ。

 始めてしまった手前勝負は続けるけど。


「お待たせしました~」

「うぅ…なんでこんなことをしとるんじゃワシは…」


 胸を大きく揺らしながら走ってくるルルさんと、下を向いてとぼとぼ歩いてくるじいさん。ひげもじゃでひょろひょろのじいさんの海パン姿は哀愁が漂う。


 じいさんをいじりたいけど、一度ルルさんの近くに行ってさっきのことを謝りに行く。


「さっきはおっぱいさんって呼んでごめん。ルルさんって呼んでもいいかな?」

「…はい!私もアラタくんって呼びますね」

「うん」

「おお。アラタが成長しておる…」

「うるさいな。さっさとコートに行くよ」


 横で感動しているような態度を見せる鬱陶しいじいさんを引っ張ってコートに入る。黒音とルルさんも反対側のコートに入り準備は万端だ。


「拙が審判を務めさせていただきますぞ。よろしくですぞ。どちらからサーブをしますかな?」

「先手は譲ってあげるよ」

「ではルル様。サーブをお願いします」

「任せてください!」


 ボールを受け取ったルルさんが後ろに下がる。


「相手のコートにボールを飛ばせばいいだけですよね!」

「ボールを少し上にあげて、手を下から上に振ってください。ボールをよく見て、手にしっかり当ててみてください」

「???わかりました!」


 初めてでサーブを入れられるなら大したものだけど…お手並み拝見といこうか。


「はぁあああ!えい!」

「「「「「………」」」」」


 天高くボールを上げ、目を瞑ってフルスイングするルルさん。当然あたるはずもなく…横に腕を振った反動で一回転してそのまま転んでしまった。


 え?冗談…なんだろうか…?黒音の説明を何一つ守ってないんだけど…

 黒音を見ると目を回して倒れているルルさんを恍惚の表情で見下ろしている。ええ…


「目が回ります~」

「予想通りのサーブでしたねルル様」

「…アラタチーム一点先取ですぞ」

「お姉ちゃんのサーブは一生入らないわね!」


 波乱の幕開けとなったビーチバレー対決。

 正直…負ける気がしない。


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