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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
31/88

宝箱の中身は…?

 宝箱の周りに全員が集まる。先ほどまで戦っていた麒麟は人化し、少し下がって私たちを遠巻きに見ている。

 代表してリリが開けることに。全員が息をのむ中ゆっくりと宝箱を開け…中を確認すると何やらカードが見える。それも一枚や二枚ではなく宝箱の中にぎっしり同じようなカードが入っている。


「ん?なにこれ?」

「カード…?」


 試しに一つ手に取ってみると…


「黒鮫大海賊団団員証?」

「海賊団に入団できるってことなのかな?」

「そのとーーーり!」

「誰!?」


 声がした方向を全員が振り向く。

 振り向いた先には…浜辺で別れたはずのうっちーと魚ちゃんさんがいた。こちらに向かってすごい勢いで走ってくる。リリがいち早く2人に反応する。


「うっちー!それに魚ちゃんも。どうしてこんなところに?」

「何か知っているのですか?」

「ふっふっふ。改めて自己紹介をさせてもらうとしよう!」


 手で顔を隠し、足を広げ中二ポーズを決めるうっちーさん。


「ある時は魚人界のスーパーアイドル。またある時は大食い大会の司会。しかしてその正体は…黒鮫大海賊団副団長のうっちー様なのだ!」

「同じく副団長の魚うお」


 ばばーん!とセルフ効果音でポーズを決めるノリノリのうっちーさんと、その横でノーリアクションの魚ちゃんさん。ルル様とリリが「な、なんだってーー!?」といい反応を返している。私も内心かなり驚いていた。


 つまり、お宝の地図を私たちに渡したのも、魔導船について詳して説明してくれたことも全てうっちーさん達の海賊団へスカウトをするための策略だったわけだ。やけに親身にしてくれると思っていたけどそんな思惑があったとは。


「キリちゃんとあそこまでいい勝負をするとは思わなかったよ!戦闘面は文句なく合格だし、この島まで無事に到着できたことも高評価!」

「まさか結界魔法で雷を防ぐことができるとは思わなかったうお。クロネさんの魔法技術には脱帽うお」

「ありがとうございます」

「キリちゃんとは誰のことですか?」

「それは私のことだ」

「キリちゃんも海賊団の一員なんだよー」


 先程まで戦っていた麒麟のことか。そりゃ団員証を守っていたのだから関係者なのだろう。


「もしかして、港からずっと私たちを追ってきていた船はうっちーさん達ですか?」

「ありゃ。気づいてたんだ。やるねやるね。そうだよ!不安にさせちゃったかな?」

「正体がわからなかったので不気味でしたね」

「ごめんうお」


 どこで私たちがお宝を目指していることがバレたのかわからなかったけど、地図を渡した本人が追ってきていたのか。そりゃ知っているわけだ。


「うっちーって黒鮫海賊団だったんだ!すげーー!!」

「サイン欲しい!」

「いいよー」

「服に書いてください!」

「はいよー」

「あ!ズルい!私も私も!」

「「「私も!」」」


 子ども達にも大人気なのか。黒鮫海賊団。あとなぜかサインペンを持参しているうっちー。

 サインをしながら今回の経緯を説明してくれる。


「私は副団長の中でもスカウト担当なんだ」

「魚は船や装備の開発担当うお」

「へー。そうだったのね」

「それで、大食い大会でリリを見た時ピンときたね!この子は大物だって!」

「大物だもの!」

「それで、仲間の人達の実力も見たくて地図を渡したわけ」

「危なくなったら助けるつもりだったうおが、心配いらなかったよううお」

「リリだけじゃなくて、みんな個性的で見てて面白かったよ」


 うっちーは大陸中を巡り気に入った人をスカウトしているらしい。ただしそれは裏の顔で、あくまで表向きはアイドルとして活動しているらしいけど。また、相応の実力や個性がないと入団出来ないらしく、こっそり実力を試しているようだ。それでお眼鏡に適った者には入団の打診をするとのこと。


「君たちは十分入団の資格ありと判断したのだよ!」

「この世界のほとんどは海で構成されているうお。まだまだ未知の領域がたくさんあるうお。ぜひあなたたちの力を借りたいうお」

「どうだい?黒鮫海賊団に入ってみないかい?」


 2人が私たちの応答を待っている。海賊団か…どうなんだろう。海の上でずっと生活することがあまり想像できない。でももしルル様が行きたいと言うのならば…私はそこについていく。ルル様の行くところが私の居場所だから。


 そんなわけでルル様を覗き見ると…腕を組んで唸っている。悩んではいるようだ。

 一方リリはすでに答えを持っている様子。いつもの自信満々の顔でうんうん頷いている。


「確かにうっちーや魚ちゃんと一緒に遊ぶのは魅力的ね」

「そうでしょ!」

「でも断るわ!」

「なんで!?」


 ビシッと指を差され、後ろに仰け反るうっちーさん。

 まぁリリの回答はおおよそ予想がついていた。その理由も。


「黒鮫海賊団に入るってことは、バーソロなんちゃらの手下になるってことよね?」

「うんまぁそうだけど…」

「そんなのダメよ!あたしが欲しいならあたしを船長にして、名前もリリ海賊団に改名してよね!」

「ムチャクチャだなこの子!?」

「無理ならこの話は断るわ!」

「それは難しいよ…」


 リリらしいなぁ。


「ルル様はどうですか?」

「そうですねぇ。私もリリちゃん海賊団になら喜んで入るのですが…ごめんなさい!」

「そっかぁ…ちなみにクロネさんは?」

「申し訳ありません。ルル様が入らないのであれば私も入ることはできません」

「ちぇ~。振られちゃったかぁ」

「仕方ないうお。それと皆さんを勝手に試してしまったことをお詫びするうお。これはお詫びの品なので受け取ってほしいうお」


 魚ちゃんさんが人数分の何かの玉をくれる。なんだろう?綺麗な色をしているけど…


「これは最近魚たちが見つけた真珠うお。持っているだけで魔力を増大させてくれる変わったアイテムうお。必要なければ売ればいいうお」

「持っているだけでですか。それはいいですね」

「あとこれはクロネさんに魚からプレゼントうお。その真珠を使った魔法の杖うお」

「いいんですか?」

「いいうお。この杖も魔力を増幅させる効果があるうお。これでたくさん活躍してほしいうお」

「ありがとうございます」


 魚ちゃんさんから魔法の杖を受け取る。木の先端が丸まっていて、その丸みにちょうど真珠が挟まっている。これを持ってとんがり帽子を被ったら完全に魔法使いのコスプレに見えるのではなかろうか。


 しかし魔力を増幅させてくれるアイテムはありがたい。魔法の威力を上げることが今後の課題だったので素直に嬉しい。あと杖に魚ちゃんのサイン?とナンバリングが彫ってある。番号は111だ。そのサインを見ていることを魚ちゃんが気付いたのか、ちょっぴり頬を赤らめながら説明してくれる。


「私は道具を作ることが趣味で、作った順番を作品に掘るようにしているうお。それ以上の意味はないのであまり気にしないでくれると助かるうお」

「なるほど」


 111作品もすでに作っているのか。魚ちゃんさん凄いな。


「でも、入団しないのにこんなに良い品を貰ってしまってもいいのですか?」

「いいうお。それはあまり手間も掛かっていないし魔法使いじゃない魚が持っていても意味ないうおから」

「そうですか…ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」


 うっちーさんも魚ちゃんさんもそこまで強引に勧誘はしていないようで、このまま穏便に終わりそうだ。


 そんな時にずっと後ろでこそこそしていたリトルリバーズの面々が、ガチガチに緊張しながらうっちーさん達に話しかけようとしていた。


「あ、あの!!」

「ん?なんだい?」

「「「「「私たちを黒鮫海賊団に入団させてください!」」」」」

「ええ!?」


 うっちーが驚き目を見開いて子どもたちを見ている。そのあとに困ったように魚ちゃんさんに話しかける。


「う~ん…見ていた限り君たちは何もしてなかったよね?それに子どもを入団させるのはちょっとなぁ…危ないし。ね、魚ちゃん」

「………」

「魚ちゃん?」

「…クロネさん達の船の近くに止めてあったボートは君たちのもので間違いないうお?」

「そうです」

「それがどうしたのさ魚ちゃん」

「ここに来る前に確認させてもらったうおが、あの5艇のボートも魔導式のものだったうお。それをこの子たちは苦もなく毎日運転していることは知っているうおね?」

「うん。つまり?」

「この子たちの魔力量はとんでもない量かもしれないうお。将来性は高い気がするうお」

「へー。この子たちがねぇ」

「「「「「………」」」」」


 直立不動で整列しているリトルリバーズを顎に手を乗せながらじっくり観察するうっちーさん。そんな緊張する時間がしばらく経過し、うっちーさんが手をポンと鳴らす。


「よし。わかった。君たちは黒鮫海賊団に入りたいんだよね?」

「はい!」

「それじゃあ君たちがもう少し大人になったら私たちが直々に入団試験を行ってあげる。それまでは海賊団見習いってことでビシバシ働いてもらおう。どうだい?」


 5人がお互いの目を見合わせて、嬉しそうにハイタッチする。


「やったぁ!あの黒鮫海賊団に入れた!」

「夢が叶ったね!」

「どんなことするんだろう!?たのしみー!」

「こらこら。見習いだからね?見習い…って聞いてないや」


 わーわー盛り上がって本当にうれしそうだ。一緒にいた時間は短いけど、彼女たちには頑張ってもらいたい。



「これからよろしくお願いします!」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

「うん。まぁ…よろしくね。それで、ほかに何か聞きたいことはある?」

「私はないです」

「みんなもいい?…それじゃあそろそろ帰ろうか?実は私これから街に戻ってお仕事あるんだよね」

「私たちも帰りましょうか?」

「そうね。お宝も確認できたし、帰ってもいいわね」

「久しぶりにベッドで寝たいですぅ」


 思っていたようなお宝ではなかったけど、いい経験になったし良しとしよう。

 

 こうして私たちのお宝探しは幕を閉じた。

 


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