ポンコツVSドラム缶
主人公を女の子に変更しました。
ドラム缶の中に魔法で熱湯を入れ準備完了。
この絶妙な湯温(41℃)を魔法で再現するのに何か月掛かったことか…(ウォーターとファイアの合わせ技)。
「準備できましたよ」
「ふーん。誰から入るの?」
「わ、私は最後でいいですよ?」
「え?せっかくだし一緒に入ろうよ。お姉ちゃん」
「恥ずかしいので遠慮します…!」
「お姉ちゃんの身体が恥ずかしいのは誰だって知ってるよ」
「ひどい!!」
「私は2人が入っている間周囲を警戒していますので、ゆっくり浸かってください」
「気が利くじゃない!」
さて。2人が脱いでいる間にタオルや着替えを準備しておかないと。
リュックからバスタオルと上がった後の着替えを用意しようとして…気づく。
「リリ。そういえば旅の準備とか…してるはずないよね」
「何も持ってきていないわ!」
だろうね。
ルル様の服を…いや、体型的に着れないから私のを貸すしかないか。
「それじゃあとりあえず私のジャージでも着てもらおうかな」
「なんでもいいわよ。それより見なさい!このあたしの完璧なプロポーションを!」
リリが全裸になって私にセクシーポーズを決めてくる。
中学生くらいの体形なのはまだいいが、問題は胸だ。男の子かと思うくらいに、無い。無の境地である。それを自信満々に見せつけてくる。
対するルル様は私に見えないようにリリの後ろへと隠れている。
だが体格的にいろいろはみ出して見える。少しぽちゃっとしていて胸はばいんばいんだ。
普通なら誰がどう見てもリリが隠れるべきで、ルル様が自信を持つべきだと思うだろう。
しかし。彼女たちが生まれた王国ではなんと!リリの体型のほうがモテるのである!
それはなぜかというと、王国の連中は胸が邪魔なものだと本気で思っているからだ。
でかいと戦闘中の妨げになるし、足元も疎かになってしまう。胸があったせいで矢に当たった…って昔話もある。
そんなこんなで、国民全員が胸はただの脂肪で余計なものだという考え方なのだ。私のような貧乳による妬みとかではなく。
だからノウ・キングダムでは胸が大きい人は残念な目で見られるし、貧乳だと羨ましがられる。
さて。その話を踏まえて両者を改めてみると、なぜこのような反応になるのかわかってもらえたと思う。ちなみに私は異世界人だからシンプルにぽっちゃり巨乳が好き。
「リリは何カップなの?」
「ふふん。AAAカップよ!」
「…それはすごいな」
「でしょう!?」
AAAカップとは、トップバストとアンダーバストの差が5cm前後の胸のことだ。AAカップでも珍しいと言われており、私は成人女性でAAAカップ保持者と出会ったことがない。
リリはルル様と双子だから…16歳か。
いや~。珍しい。ノウ・キングダムで【神の造形】と噂れていただけはある。
「ちなみにルル様は?」
「…何がですかぁ」
「カップですよ」
「言いたくありません」
「そっとしておいてあげなさいよあんた」
ああ。そっか。お城で馬鹿にされていたこともあったんだ。どうも感覚が日本と違いすぎて困る。ここはしっかりフォローしなくては。
「ルル様」
「なんですか」
「私は、ルル様のように大きいおっぱいが一番好きです」
「ええ!?」
「あんた…特殊ね」
「そうなんです。だからもし世界中の人間があなたのおっぱいを否定しても、私だけは否定しない!大好きだから!」
「ク…クロさん…」
「こいつヤバいわ…」
私の力説が伝わったのか、ルル様が目をうるうるさせながらゆっくりとリリの前から出てくる。残念ながら両手で身体を隠しているが…いやむしろそれがいい。
「それで?お姉ちゃんって何カップなの?」
「…ぇ…」
「え?なんて?」
「Fカップ…です」
「ふぉおおお!羨ましいですFカップ!最高じゃないですか!」
「あんたキャラ違くない?」
「リリも胸が大きい人はダメなの?」
「ダメっていうかかわいそうっていうか…」
「う~…」
「あ。お姉ちゃんはいつもかわいそうだよ?胸に限ったことじゃなく」
「追い打ち!?」
まあでもこれが王国のルル様の評価なんだよね。
しかしやっぱりおっぱいは良いものだと思う。それをもっと多くの人に知ってもらいたい。
というわけで。まずはリリに布教していこう。
「リリ」
「なによ」
「ルル様のおっぱいを触ってみて」
「ええ…」
「騙されたと思って」
「しょうがないわねぇ。ってか寒いんだけど」
2人が全裸なの忘れてた。
2人にドラム缶風呂に入ってもらう。
だがそこで事件が。ポンコツ妹が危なく溺れるところだった。
「ちょ!足つかないんだけど!?」
「リリちゃん!バシャバシャしないで!目にお湯が!目が!」
「見た目でリリの身長じゃ足が着かないって分かるよねぇ!?早くルル様に掴まって!」
「はぁ…はぁ…死ぬかと思ったわ…」
「どうして飛び込むかなー…」
「しょうがないじゃない!思ったより深くてびっくりしたんだもん!」
ルル様から離れ、ふちを掴んでそっぽを向くリリ。
風呂で溺れるかけるとは…
と若干ハプニングがあったものの、それからはゆったり浸かる姉妹。
「…意外に気持ちいじゃない」
「あったまりますぅ…」
「お風呂にはリラックスさせる不思議な力があります。それにお風呂に入るとぐっすり眠れますよ」
「そうなんですかぁ…」
「ふーん」
「さあリリ。温まったところで目の前にあるおっぱいを触ってみて」
「まだやるの…まぁいいけど」
こんなもの触って何になるのかしら…とぶつぶつ文句を言いながらもルル様の胸を触るリリ。
「な…これは…!」
想像以上に柔らかかったのだろう。胸の中に手が沈み込み、驚愕に目を見開くリリ。
それから無心でこねくり回すリリと小さく呻きながら目を瞑っているルル様。
「どうだいリリ?素晴らしいものだろう」
「なぜかしら…ずっと触っていたくなるわね…」
「あがったら顔をうずめてみるといい」
「…気持ち良さそうね」
「だろう?」
「恥ずかしいんですけど~…」
リリを皮切りに王国の意識を変えていき、ゆくゆくはルル様も体型のことで馬鹿にされることのない国になればいいな。決して自分の嗜好を押し付けているわけではなく。
「そろそろ上がろうかしら」
「そうですね。十分温まりました~」
「良かったです。椅子の場所をしっかり確認して、慎重に降りてくださいね」
転んだりしたら大変だ。
この姉妹ならやりかねないので念押ししておく。
「そんなことわかってるわ…よっと…」
リリが勢いよくあがる。
でもその後のルル様が続かない。
「あ、あれ?うんしょ…ん?」
「どうしたんですか?」
なぜか動かずにじっとしているルル様。
リリもよくわかっていないのか頭にはてなマークが浮かんでいる様子。
「「??」」
「え~と…これどうやってあがるんでしょう?」
うん?ルル様の言いたいことがわからない。
「どうと言われても…こう両手でふちを掴んで上がればいいんですよ」
「ふーん!ふん!ふん!…ダメです!身体が浮きません!」
なん…だと…
どんだけ筋力ないの…?
肘は上下に動いているし、顔も精一杯上を向いているんだけど身体は微動だにしていない。
「…わかりました。私がルル様を持ち上げます」
「…お願いします」
「お姉ちゃん…」
段差を上り、ルル様の脇を掴んで持ち上げようとするも…
「あは!…あはははは!ちょ!ちょっと待ってくださいクロさん!」
脇の下を掴まれてこそばゆかったのか暴れるルル様。それから今度は腕を引っ張るも「痛いです!もげます!」と断念。
ど…どないせいっちゅうねーーん。
「…ではこうしましょう。私も一度お風呂に入り、お風呂の中から持ち上げます。それならこちょばしくないし、痛くもないです」
「ごめんなさい!それでお願いします」
まったく。お風呂でこんなに騒がしくなってしまうなんて…
バスタオルや着替えを用意してから自分の服を脱いでいく。その私の様子をじっと見ているポンコツ姉妹。恥ずかしいからやめてほしい。
「ふーん。結構いい身体してるじゃない」
「それは貧乳ということ?バカにしてるの?」
「な、なんで怒ってるのよ!」
これでもBカップはあるんだから!
大変遺憾だが、ルル様に場所を空けてもらいお風呂に入る。
それで、どこを持ち上げようか?脇はダメだったし…お尻?かな。
「ルル様。お尻を持ち上げますので、それに動きを合わせて何とか上がってみてください」
「わかりました!」
「いきますよ。せーの!」
「ふんぬ!あ、上がりました!」
「その調子で足をくぐらせてください!リリ!念のため落っこちないように支えてあげて!」
「わかったわ!」
ルル様がリリに支えられながら何とか右足を台の上に乗せることに成功する。そのことに安心したのか腕の力が明らかに抜けている。
「アソコが痛いです!」
「腕に力入れてください!あとアソコとか言わない!」
「ご、ごめんなさい!」
そしてどうにかこうにか上がることに成功したルル様が息も絶え絶えにへたりこむ。
なぜお風呂でそこまで疲弊するんですかルル様…
毎日の入浴は大変だからやめようかな…そう考えさせられるお風呂タイムだった。
一日の疲れを取るべくゆっくり浸かり休息する。
上がる頃にはルル様はすでにテントの中で寝ていた。
怒涛の一日だったからそれも当然だろう。今までの人生でこんなに充実した一日は無かったんじゃないだろうか。大変だったろうけど、今日のルル様はいつも笑顔だった。城でよく見る作り笑いではなく自然な笑顔だ。
唐突で、考えなしに行動してしまった感は否めないけど…こうなったからにはルル様を絶対に幸せにしてみせる。
眠っているルル様の頬を撫でながら誓う。
さて。それでは護衛らしく夜の見張り番をしますか。
そう思い外に出ると、リリが仁王立ちでこちらを見ていた。
「…リリは寝なくていいの?」
「眠いけど、あんたと話したいことがあるから我慢するわ」
「…」
なんだろうか?考えてみればリリと二人きりで話すのはこれが初めてかもしれない。いつもルル様が間にいたから。
こちらを見るリリの顔は真剣そのもの。
「あたしはあんたが何者なのかよく知らないわ」
「言ったことないからね」
「いつの間にかお姉ちゃんの傍にいて、あたしに対して口の利き方が悪いし…お姉ちゃんはそれまでずっとあたししか見てなかったのに…最近はいつもあんたの話ばっかり!あたしはあんたを信用してないし、嫌いだわ!だからあんたのこともっと教えなさい!」
若干支離滅裂だが、言いたいことはわかる。
リリは私という存在がよくわからなくて不安なんだろう。
私はリリの噂は様々なところで聞いていたからある程度は知っているが、リリは私のことを何も知らない。
それは一緒に旅をする上ではよくないだろう。知らない人と行動するのはストレスになるし気味が悪いのはわかる。
「わかった。私の話をしよう。少し長くなるけどいい?」
「しょうがないわね」
「じゃあそうだなぁ。私が王国に亡命したときのことから話そうか」
「あたしの国の出身じゃないの?」
「そういうことになるね。そもそもなんで亡命したかというと…」
過去のことを思い出しながら私はゆっくりと話し出す。
私が人間国で召喚された時からこれまでのことを…