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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
29/88

目指せ海賊!リトルリバーズ!

 嵐の中心地に存在する島へと上陸した私たちは中央にそびえ立つ山の頂上を目指すことにした。


「やっぱり秘宝があるとしたら目立つところよね!」

「他に情報もありませんしぃ」

「早速向かってみましょう」


 船を降りて歩き始める。リトルリバーズも後ろをついてくる。

 そんな中スフィルクスさんは翼をはためかせ飛び立ってしまった。


「スフィルクスさん!どこに行くんですか!?」

「少し散策にな。危なくなったら呼んでくれ」

「あ…行っちゃいました」


 どうやらスフィルクスさんは別行動のようだ。頼れる戦力が減ってしまったことは残念だけど仕方がない。


 気を取り直して進む。


「そういえば、リトルリバーズの一人一人の名前って知らないわね」

「そうですね!せっかくなので教えてください」

「いいよ!私がリトルリバーズ隊長のチャーリーだぁ!」


 ボートの色と髪の色を合わせているのか真っ赤な髪の女の子だ。リーダーなのに一番背が小さいのはいじってはいけないポイントなのだろうか?


「ふっふっふ。私は蒼の彗星!サッチ!」

「黄色の煌き!リック!」

「ぴ、ぴんくの愛を届けます…スプー…ですの」

「緑のフットー」

「5人合わせて~」

「「「「「リトルリバーズ!」」」」」」


 ババーンと効果音が聞こえてきそうだ。しっかりポーズを決めている。ルル様がなにかしらの琴線に触れたのか目を輝かせて拍手を送っている。


 それから私たちの名前も教えてあげて、5人がどうして海の警護団をしているのかを聞いた。


 5人が一斉に話し始めたので分かりづらかったけど…


 要約すると5人は北の街で生まれ、いつも一緒に遊んでいた。そんなある日浜辺で遊んでいると、たくさんの捨てられているボートを発見した。大人に聞いても使い物にならないから誰のものでもないと答えが返ってきたので5人はそのボートで遊ぶことにした。


 初めは大人の言うように動く気配がなかった。けどチャーリーがボートについていた石に触れると、ほんの少しだけ動き出したのだ。その代わりチャーリーは倒れてしまって大変だったけど。


 それから何度も石に触れて検証したところ、魔力を流し込めば少しだけ動いてくれることがわかった。だけど使う魔力が多く、自分たちの魔力量ではすぐに倒れてしまう。


 普通の子どもならここでボートに乗ることを諦めてしまうだろう。だけどリトルリバーズは違った。5人は毎日話し合っていたのだ。将来は海賊になって海の世界で過ごすんだ!と。でも船を買うにはたくさんの金貨が必要で、海賊になるのはまだ先の話だと幼い彼女たちもわかっていた。

 でもその夢を今すぐに叶えてくれる可能性を秘めているアイテムが目の前にあったのだ。魔力が足りないくらいで彼女たちはボートに乗ることを諦めなかった。


 しばらくは数メートル動くだけでへとへとになった。けど、毎日少しずつ動く距離が伸びていることがわかり、5人のやる気に繋がった。


 毎日遊び終わった後、ボートに乗り込み魔力が空になるまで石に流し込む。そんな生活を数年続けていると…浜辺を自由に動けるようにまで成長した。大人たちは半信半疑だったが、彼女たちは毎日魔力を限界まで消費する生活を続けたおかげで体内の魔力量が爆発的に増えていたのだ。


 嬉しくなった5人はその後も毎日同じ生活を続けることで、自由に海を動き回れるまでに成長した。そして海に生きる海賊のように海賊名をリトルリバーズとして活動しようとしたが、海にすむ魔物は凶暴で、彼女たちの手には負えなかった。だから魔物を倒せるようになるまでは海の警護団として活動することにしたようだ。そんな時に私たちと出会った。


「お宝をゲットするのは海賊のロマンだ!」

「だから海賊になる第一歩として私たちを付け狙ってたのね」

「「「「「そう!」」」」」


 なるほど。海賊と言えばお宝。わかりやすい。あと彼女たちの話の中で興味深いことがいくつかあった。一つは彼女たちが乗っているボートも魔力で動く古代の遺産だということ。もう一つは魔力を使い切ることで総魔力量が増えるかもしれないこと。そんな話は聞いたことがなかったけど興味深い話だ。試してみる価値は大いにある。


「どれくらいボートで進めるようになったの?」

「今ならどこまでだって行けるの!」

「…魔力量だけならこの世界でもトップクラスになっているのかもね。リトルリバーズは」

「最近魔力を空にするまで運転したら日が暮れちゃうよ」


 私とどっちが魔力量多いのかな?調べられる機械とかあればいいのに。

 ただ、彼女たちは魔力は多いけど魔法は使えないとのこと。だから戦闘では数に入れないでほしいと念を押された。


 あとリトルリバーズはうるさい。山を登っている間もずっと話しかけてくる。


「ねえねえ。クロネさんは異世界から来たって本当?」

「ほんと」

「「「「「すごーーい!!」」」」」


「どんなところだったの?」「ここみたいに海ある?」「こっちの世界とどっちが楽しいの?」「面白いものある?」「変わった食べ物は?」


「一斉に話さないで。順番に答えてあげるから」


 うるさいけど、いちいち大げさにリアクションしてくれるから私もついつい面白おかしく話をしてしまう。


「空を飛ぶ機械もあるんだ」

「空を飛べるの!?」

「かっこいー!」

「どこまでいけるの?」

「うーん。月まで行くこともできる」

「月ってあれ?夜お空に光ってる?」

「そうそう」

「「「「「「すごーい!!」」」」」」


 キャッキャと仲良く異世界についての話で盛り上がっている。うん。うるさくて苦手だったけどこうしてみるとみんなかわいいかな。なぜかルル様も混ざっているけど。


 そんな和気あいあいの空気の中、トトちゃんが口を閉じるジェスチャーをする。


「近くに魔物の気配がするのですぞ」

「島にも魔物がいるのですねぇ」

「ようやくあたしの出番ね!」

「私たちは物陰に隠れてるので!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


 リトルリバーズ(+ルル様)が木の裏に隠れる。

 しばらくすると前方から喉を鳴らした2体の魔物が近づいてきた。


「グルルルル」

「見たことの無い魔物ですぞ」

「結構強そうじゃない」


 虎のような魔物だ。体に白と黒のジグザグ模様が入っていて機敏そう。うろうろしてこちらの様子を窺っている。


「あのぅ…私は地上で戦ったことがないので見学でいいですかぁ」

「わかりました」


 ミツキさんが戦闘に参加しないから、私とリリ、トトちゃんで何とかしないといけない。いつも通りのメンバーだ。


「それじゃあ私が援護するからリリとトトちゃんは自由に戦っていいよ」

「久しぶりの戦闘ね!楽しみだわ!」

「油断はしないようにお願いしますぞ」

「来るよ」


 あちらの様子見は終わったようで、どうやら戦う気満々のようだ。威嚇しながらこちらに向かってくる。


 私は少し後退し、魔法の準備をする。

 リリは虎に合わせて前に出る。いつものように接近戦を挑むようだ。トトちゃんは手裏剣を投げて牽制している。まだどれくらい相手が強いのかわからないので戦力を測るつもりか。


「いくわよ!はあああああ!」

「グルるっ!」


 虎の前足での攻撃を横に移動し回避したリリがそのまま横腹を殴りつける。普通ならここで相手は戦闘不能になるのだが、吹き飛んだ虎は綺麗に回転して着地した。まだ戦えるようだ。だけどダメージがあるのか動きがぎこちない。


 もう一体の魔物はトトちゃんの手裏剣が刺さっているがあまりダメージはない様子。なかなか強い相手だ。


 まずはリリの攻撃で弱っている相手にターゲットを絞ろう。


「【ストーンバレット】」

「…!」


 石の弾丸で攻撃を仕掛ける。虎は鈍っている体で何とか避けようとするが…避けた先にはリリが待ち構えている。


「ナイスアシストよクロネ!くらえええ!」

「キャイン!」


 近づいてきた魔物目掛けてリリが回し蹴りをお見舞いし、もろに受けてしまった虎はそのまま飛ばされて倒れた。残りは一体。


「あ、逃げたわね」

「追いますか?」

「いや。放っておこう」


 もう一体はすごい速さでいなくなってしまった。

 仲間がやられたのを見てすぐに撤退するところから知恵もあるようだ。


 ともあれ無事に戦闘を乗り切った。ルル様と子ども達が集まってくる。


「3人とも強いんだね!」

「魔法ってあんなにすごいんだ!」

「ルルさんは戦ってなかったけど?」

「私は弱いので」

「そうなんだ。確かに弱そう!」

「私たちより弱そう!」

「うう…素直な子どもの言葉が痛いです…」


 落ち込んでいるルル様の頭をなでなでしながら先ほどの戦闘を振り返る。


「結構強い相手だったね」

「私の一撃を耐えられるとは思わなかったわ!」

「これから先も用心するべきですな」


 最初に遭遇した魔物であのレベルなのだ。もっと強い魔物がいてもおかしくない。

 改めて気を引き締めよう。そう考えているとリトルリバーズのやる気がなさそうな子…フットちゃん?が倒れている魔物を指さして聞いてくる。


「倒した魔物はどうするの?」

「そうだね…今日の夕食にしようか」

「わーい!お肉だ!」

「久しぶりだね!」

「たのしみー!」


 最近は海上生活が長かったから必然的に食事も海鮮ばかりに偏っていた。お肉を食べれると聞いて全員のテンションが上がる。もちろん私も楽しみだ。


 ということで倒した虎型の魔物はとりあえず血抜きだけしてマジックバックの中に入れた。

 それからはしばらく魔物に会うこともなく山を登り続ける。


 登山中に島の中にも食べられそうなものをいくつか発見した。キノコも自生しているしリンゴのような果物も木に生っている。サバイバル生活ができそう。その中でもあるキノコにリトルリバーズの面々が反応する。


「ああ!このキノコ知ってる!」

「たまにロジャーズさんが持ってくるキノコだ!」

「ロジャーズってバーソロミュー・ロジャーズ?」

「そうなの!」


 詳しく事情を聴いてみると、たまに街へロジャーズが帰ってきた時売りに出す物の中にこのキノコもあるらしい。街やその周囲には生息していない珍しいキノコで、しかもおいしいことから大人気の商品らしい。リトルリバーズも一度お金を出し合って食べたことがあり覚えていたようだ。


「こんなところにあったんだね!」

「つまり、バーソロミュー・ロジャーズもこの島に来ていた可能性が高いってことだよね」

「そうですね!」


 予想外のところで地図の信憑性が上がった。もしかしたら本当にとんでもないお宝があるのかも…?



 期待感が高まり、次第に歩く速度も上がっていく。ルル様も目標があると頑張ることができるのか、疲れてはいるようだが音は上げない。ルル様えらい!


 そうしてペースが速かったこともあり、わずか数時間で山頂に到着することができた。


「ついたーーー!」

「疲れたーー!」

「もう歩けません…」

『遅かったな』

「スフィルクスさん」


 頂上に到着するとスフィルクスさんがいた。


「お宝はありましたか?」

『あるな。あそこだ』

「んん!?」


 確かにこれがお宝です!と言わんばかりの金ぴかの宝箱がある。ただし巨大な魔物がその後ろで寝そべっているが。


『麒麟という珍しい魔物だ。非常に機動力が高く雷を操ると言われている。こ奴はどうやら宝箱を守っているようで近づくと攻撃してくる』

「麒麟…ですか」


 鹿のような体格だけれど、銀色に光っている体。それに額には大きな角がある。存在感も途中で会った虎の魔物とは別格だ。


『どうする?戦うか、退くか』

「戦うに決まっているわ!」

「ここまで来たんだから、何もしないで帰るのもね」

「やるしかなさそうですな」

「私は応援してますので!」

「「「「「私たちも!」」」」」

「雷ですか。私と相性が悪そうですが…いざとなったら加勢しますぅ」

『我も初めは見学しよう。そなたたちの可能性を見せてみよ』


 秘宝を守護する麒麟との戦闘。果たして3人で勝てるような相手なのだろうか…?

 緊張しながらも私たちは宝箱に近づいて行った。


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