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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
26/88

ポンコツたちが行く!大海賊バーソロミュー・ロジャーズの秘宝

 見事大食い大会で優勝したリリ。優勝賞品はなんと海賊の宝の地図だった。

 地図には海のある一点にドクロマークが記されている。つまりお宝をゲットするためには航海しなければいけないのだ。

 

 ミツキさんと契約したおかげで私たちは海の中を自由に移動できるけど、さすがに泳いでいくには距離が遠すぎる。


 というわけで、私たち5人はミツキさんがレインボーフィッシュを掬った景品で貰った船を見に行くことに。しかし…案内された船は予想外のものだった。全員で案内した魚人のおじさんをジト目で睨む。


「…これが景品の船ですか?」

「そうだぜ」

「やけに小さいですぞ」

「誰も大型船なんて言ってないだろ?」

「というかこれ船なの?他の船と全く違うんだけど」

「証明書に書かれている船はこれだぜ!じゃあな!」

「あ、ちょっと!」


 おじさんが猛ダッシュでいなくなる。仕方なくあらためて案内された船を見る。周りに停泊している船とは一回り、いや、5周りくらい違う。

 直径6メートルくらいだろうか?私たち5人が乗るとギリギリくらいの大きさだ。しかも運転席以外は屋根がついていない。嵐とか来ようものなら一発でアウトな船だ。


 もっと立派な船を想像していた私たちは思わず立ち尽くしてしまう。

 そんなときに声をかけてくる2人の女性が。


「ありゃー。これは皆さん騙されたね~」

「大昔に作られた魔導式の船うお。買い手もいないほどの欠陥船うおね」

「うっちーさん。魚ちゃんさん」

「お祭りでは大会を盛り上げてくれてありがとねー!」


 港にやってきたのは大食い大会で司会をしていた2人だった。仲良く手を繋いでいる。


「お2人とも今日はどうしたんですか?」

「んー?今日はデートかな?」

「違ううお。噂でリリさんとルルさんが船を貰った話を聞いたから様子を見にきたうお」

「あら。ありがとううっちー。うおちゃん」

「いいってことよー!」


 大会の後にリリとうっちーは仲良くなっていた。今も会うなり2人でハイタッチしている。

 なんでもうっちーはフードファイターが好きらしい。だから大食い大会の司会も積極的にこなしているみたいだ。

 それよりも先ほど聞こえた魔導式という単語が気になるので魚ちゃんさんに聞いてみる。


「あの…さっき魔導式という話が出ましたがどういうことなのでしょうか?」

「船に六芒星のマークが書かれているのが見えるうお?」

「ありますね」

「そのマークが書かれている道具は魔道具シリーズと言われているうお」

「魔道具シリーズ…」


 この世界…レインスマルブに来て初めて出た単語だ。


 そもそもこの世界に魔法を使った道具がある事自体驚きだ。というのも、レインスマルブは魔法があるにはあるがあまり使われていない。そのせいかわからないけれど、地球のように機械や科学もちゃんと発展しているのであまり戸惑わずに生活できているのだ。


「知らないうおか。魔道具シリーズはまだ世界が魔力に頼っていた時代に作られた道具うお。珍しいことに動力が魔力うお」

「便利じゃないのですか?」


 つまり自家発電できるということだ。エコだと思う。

 首を傾げているとうっちーがチッチッチと手を揺らす。


「魔法全盛期時代は便利だったかもしれないけどね。機械が増えてきて魔法が使われなくなってきてから人々の魔力量も減ってきたんだよね。しかも魔道具は燃費が悪いこともあって、時代が進むにつれ使用する魔力量が足りなくなって使うことすら難しくなってきたんだよ」

「特に魔導式の船は最悪うお。燃費が悪すぎるから航海中に魔力が無くなって漂流なんて事態になりかねないうお」

「それは確かに危ないですなぁ」

「そんなわけでこの船は中古でも買い取ってくれないガラクタみたいなものだね!」


 なるほど。つまり私たちは騙されたのか。

 でもだ。実は私は魔力量には自信がある。人間国にいた時、魔法を教わったおじいちゃんにも魔力量の多さに驚かれたことあるし。もしかしたら私の魔力量なら運転できるかもしれない。そのことをうっちーと魚ちゃんさんに伝える。


「そうなの?それじゃあちょっとお試しで運転してみるかい?」

「いいんですか?」

「うん。この辺りを一周するくらいならクロネさんの魔力がもし力尽きても何とかなるだろうし、運転の仕方分からないでしょ?私たちが教えてあげるよ!」

「と言っても運転方法は簡単うおけどね」

「お言葉に甘えさせてもらいます」

「よーし!それじゃあ乗りこもー!」


 船…もとい小型ボートに乗り込む。私が運転席に座り、その両隣にうっちーとうおちゃんさんが立ち説明をしてくれる。


「すごく簡単だからすぐに覚えられるよ!まず、レバーがあるよね」

「ありますね」

「その状態が停止で、前に倒すと直進、後ろに倒すと後退するよ」

「停止状態でも水の流れで完全に止まることは難しいから注意するうお」

「なるほど」


 前に倒した進む。後ろに倒したら戻る。うん。わかりやすい。


「向きを変えるにはハンドルを回せばいいよ」

「船はハンドルを回した後しばらく経ってから進路がゆっくり変わるうお。直角に曲がることは出来ないから注意うお」

「わかりました」

「以上説明終わり!」

「え?もうですか?」

「あとは魔力がバッテリーだから、こまめに魔力を船に流し込めば動くよ」

「船にくっついているこの魔石に魔力を流し込むイメージで手をかざすうお」

「曲がる感覚とかは慣れだから、ここら辺をこのままぐるっと一周してみよー!」


 想像以上に簡単で驚いた。これなら私以外のメンバーにも運転を頼むことが出来る…と思う。

 そんなわけで初運転に挑戦することに。魔力を流し込み、停泊するためのロープを外して出発。


「うんうん。きちんと動くね」

「クロネさんの魔力量が多い話はどうやら本当のようだうお」

「わかるんですか?」

「そもそも動かすこと自体出来ない人がほとんどうお」

「そういうものですか」

「そういうものなんだよー」


 そんなに魔力を注いだつもりはないけど、どうやら私の想像以上に現代の魔法使いは軟弱のようだ。そういえば私が召喚された時も部屋の中に何十人も魔法使いがいた。あれは1人1人の魔力量が少ないせいだったのかもしれない。


 さて。そんな話よりも目先の運転だ。魚ちゃんさんの言う通り曲がろうとしてハンドルを切ったけど少ししか進路が変わらなかった。もっと思い切ってハンドルを回さないと曲がらないらしい。

 そして曲がるときはぐぐぐぐ~っと時間を掛けて曲がる。急な進路変更はある程度の慣れが必要のようだ。でもうっちーによるとこの船はかなり曲がりやすい部類に入るとのこと。大型船はこんな風に素早く曲がることなんて到底不可能で、それこそ経験と知識が必要になってくるらしい。初心者の私にとっては小型船でむしろ良かったのかもしれない。




 それから想像以上に船を動かすことが面白くてついつい3周もしてしまってから船を停泊する。


「どうだった?クロネさん」

「面白かったです。魔力の問題も何とかなりそうですし、今日は色々教えてくれてありがとうございました」

「いいんだよー。その代わりまた大食い大会がある時にはリリちゃんが参加してくれるとうっちー嬉しいな!」

「わかりました。リリはバンバン使ってくださって結構です」

「なんでクロネが返事するのよ!ま、気が向いたら参加してあげるわ!」

「おお!楽しみにしてるよー!じゃあね~」

「ばいばいうお」

「さようなら~」


 うっちーさんと魚ちゃんさんが離れていく。

 ルル様が2人の姿が見えなくなるまで手を振り続ける。それから私に目をキラキラさせながら聞いてくる。


「早速行けるのですか!?」

「そうですね。食料などを準備すればいつでも行けます」

「釣りの準備も人数分用意してよね!」

「うん」


 街に戻って買い出しと釣り道具を人数分用意をしに街へと戻る。


「そういえば、地図にはバーソロミュー・ロジャーズの宝と書かれていましたが…どんな人物なのでしょう?」

「ミツキさんはだれか知ってますか?」

「いえ…わからないですぅ」

「食料を買うときにでも聞いてみましょうか」


 食料品店に行き大量に物資を買い込みマジックバックの中に詰め込む。ついでに店主に海賊について尋ねてみた。


「聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「ん?なんだい?」

「バーソロミュー・ロジャーズという海賊を知っていますか?」

「なんだい。バーソロミュー・ロジャーズのことを知らないのかい?」

「はい。この街に来てから日が浅いもので。よろしければ教えてほしいのですが」

「たくさん買ってくれたからな。それくらいはお安い御用だ。俺もファンだからな。ちょっと話が長くなるぜ」


 それから店主によるロジャーズの長話が始まった。

 話しを纏めると…まず、私の知っている海賊とこの世界の海賊は全く別物らしい。

 私の海賊のイメージは金品を略奪したり、海軍と戦ったり…とあまりいい印象はない。けどこの世界の海賊とは海にいる魔物を狩る戦士のことを指すらしい。海を荒らすものとして海賊と呼ばれているようだ。


 そして海賊たちの中でもロジャーズは別格で唯一大海賊を名乗っているらしい。別名 黒鮫ブラックシャーク。この街の出身で、狩ってきた魔物もこの街で買い取りを済ませるようだ。


 ふらっと街に帰ってきてはAランクの魔物や極稀にSランクの魔物も狩ってきては大量の金貨と交換していき、稼いだ額は金貨500万枚以上と言われているらしい。なんと500億円也。


 だが、その稼いだ金貨は街に預けているわけではなく、自分で保管しているようだ。しかし船にそんな重量の金貨を置いておくことは難しいことから、どこかに隠しているのではないかと噂されている。


 現在も活動していて、間違いなく世界最強の一人である…と店主は自分のことのように自慢げだ。




 それから場所を移し、釣り道具を吟味しながらも私たちはバーソロミュー・ロジャーズについての話で持ち切りだった。


「聞いているだけでワクワクしましたね!幻の島クジラとの闘いとか海底のダンジョンのお話とか!」

「見たわけでもないくせに妙に詳しかったわね」

「それほど有名な魚人さんの隠し財産であればかなりすごい地図かもしれませんねぇ」

「リリお手柄」

「ふっふ~ん。感謝しなさいよね!」


 もし本物の宝の地図ならすごい価値があるだろう。なんでそんなものが大食い大会の優勝賞品なのかは謎だけど…


 釣り道具も購入し、方位磁石も買い準備万端で船着き場に戻ってきた。


「よーし!みんな乗り込めー!」

「お宝目指してしゅぱーつぅ」

「「「「おー」」」」


 伝説の海賊のお宝とは何なのか…楽しみである。

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