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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
24/88

ポンコツVS屋台の出し物


 宿を出た途端に活気が身体を伝う。どこを見ても魚人だらけだ。

 お祭りは1週間ほど続くらしく、今は半ばほど。それでも疲れを知らないのか、連日大賑わいだ。


「イカ焼き美味いよー!」

「タコのしゃぶしゃぶはいかがですかー?その場でしゃぶって食べていってください!」

「たこ焼きいかがっすかー!トッピング自由だよー!」

「おぉ~。賑わっていますねぇ」

「ミツキさんのおかげですよ。タコ料理とイカ料理が多いでしょう?みんなでキングオクトパスとクイーンクラーケンを調理しているんですよ」

「へえぇ」

「しかもそれだけじゃないですぞ!なんと!全て無料で提供しているらしいのですぞ!」

「えええええ!?」


 トトちゃんの言うように、出店のすべての料理が無料らしい。なんでもこれは水龍神様に感謝を捧げるお祭りなので採算度外視の企画というぶっ飛んだもののようだ。


 道の両端にズラッと屋台が並んでいる。どの屋台も魚人が料理をしているのでそこだけは異世界感満載だ。


 5人で屋台通りを練り歩く。ミツキさんはお祭りが初めてのようで、見るもの見るものすべてが新鮮のようだ。目を輝かせながらきょろきょろ周りを見渡している。


「何か食べますかぁ?」

「いえ。少し我慢します!」

「え?どうしてですかぁ?」

「これから大食い大会が始まるからよ!」

「大食い大会?」


 そう。今日は大食い対決が開催されるらしく、ルル様とリリはこの大会に合わせてここ数日はほとんど断食状態で過ごしていた。

 だから目に毒であるという理由と、ミツキさんが来るまで私たちだけでお祭りを楽しむのはいかがなものか?という二つの理由から、実は私たちも今日が初めてのお祭りなのだ。


「種目はたこ焼きらしいわ!」

「お昼からなので、午前中はゲーム中心で遊びましょう!」

「わかりましたぁ。それではあれはどうですか?」


 ミツキさんが指を指した先には輪投げの屋台があった。

 5人で近づいていく。どうやら台の上に景品が置かれていて、その景品に輪っこを投げて景品をくぐらせることが出来れば貰えるというゲームのようだ。


「楽しそうね!けど…」

「景品が微妙ですな…」


 景品はどう見ても手作りのぬいぐるみが多数を占めていた。しかも手足の生えた魚の人形であまり可愛くない。


「かわいいですよ?」

「ルル様正気ですか?」


 なぜこうも感性が違うのだろうか…?微塵もかわいいとは思わないのだが…

 ともあれルル様はやる気のようだ。魚人のおっさんにお金を渡してルル様が輪っこを5つもらう。


「いきますよー!とりゃ!」

「お姉ちゃん届いてない!」

「ほりゃ!」

「お姉ちゃんもっと全力で!」

「そいや!」

「お姉ちゃんおっさんは景品じゃないから!」

「む、難しいですね…」

「へたすぎでしょ…」


 奇跡的に屋台のおっさんの尾ひれに輪っこがハマった以外はノーコンのルル様。まぁ取れたとしても要らないからいいけどね。

 そのまま取れる気配がなく終わってしまいへこたれるルル様。落ち込んでいるルル様を見られて幸せ…

 しかしお祭りの雰囲気がルル様の復活を早めているのか、すぐに元気になるルル様。


「気を取り直して次に行きましょう!」

「あそこが賑わっているわね」


 魚人が集まっている屋台へと向かう。


「なになに?レインボーフィッシュ釣り?」

「釣ることが出来れば…船一隻贈呈!?」

「嬢ちゃんたちやっていくかい?一回金貨一枚で高いけどな!」


 なんとあの光り輝く魚を掬うことが出来れば船を一隻貰えるらしい。だけど一回一万円は高いな。でも商品が魅力的なだけに参加者は多いようだ。


「挑戦してみますか?」

「でもあの魚めちゃくちゃ機敏なんだけど…」

「レインボーフィッシュですからね」

「知ってるんですか?ミツキさん」

「レインボーフィッシュは超高速で移動する、ただでさえ捕まえることが困難な珍しい魔物ですぅ。それをあんな紙切れで捕まえるなど常人には不可能でしょう」


 なるほど。つまり取らせる気はさらさらないと。

 ミツキさんが言うことは本当みたいだ。魚に触れることもできずに紙がふやけてしまい破れてしまった魚人がまた一人悔しそうに帰っていく。

 それを見たミツキさんが店主に金貨を一枚渡す。どうやら金魚すくいに挑戦するようだ。勝算があるのだろうか?


「毎度。このポイで捕まえて、皿の中に入れることができれば船は嬢ちゃんのものだ」

「その言葉に嘘はないですかぁ?」

「ああ。証明書も用意してあるぜ。これで嘘はつけねえ」

「わかりましたぁ。やってみましょう」


 ミツキさんがポイを水に近づける。するとどうしたことか。さっきまで水中を縦横無尽に動き回っていたレインボーフィッシュがポイの近くでゆらゆら動いている。まるでポイが水に入るのを待っているみたいだ。


「いきますぅ」

「あ!?」


 そしてミツキさんが水の中にポイを入れた途端に自らポイに掬われに行くレインボーフィッシュ。そのままミツキさんはポイを持ち上げて見事レインボーフィッシュは皿の中に移動した。驚き何度も確認する店主。しかしレインボーフィッシュは無情にも皿の中を嬉しそうに泳いでいる。観客も大賑わいだ。


「ついに憎たらしいあいつを捕まえたやつが出たぞ!」

「姉ちゃん!俺たちの仇を取ってくれてありがとうな!」

「くっそ!なんで捕まえることが出来たんだ!?ありえねえ!」

「諦めろよおっさん!捕まえたところはみんなで見てたんだから言い逃れできねえぜ!」

「…しょうがねえなぁ!ほらよ!船の所有権が書いてある証明書だ!持ってきやがれ!」

「「「「ヒューヒュー!」」」」

「やったな姉ちゃん!」

「姉ちゃん顔見せてくれよ!サングラスとマスクでまったく顔がわからねえ」

「あ、ありがとうございますぅ…皆さん!先を急ぎましょう!」


 冷静になって人見知りモードになってしまったミツキさんが顔を真っ赤にしながら人込みから逃げるように退散する。

 そのまま走り続け屋台通りを少し外れたところでミツキさんがへたりこむ。


「はふぅ…疲れました…」

「でも凄いですねミツキさん!船貰えちゃいましたよ!」

「あの店主は少々卑怯でしたのでつい…あ、船は要らないので皆さんが使ってください」

「ええ!?そんな悪いですぞ!」

「でも私は船なんて必要ないですし…泳いだほうが速いので」

「あ、そっか」


 ミツキさんにとっては船よりも自分で泳いだほうがいいのか。

 しかしタダで貰うことも躊躇われたので…何かお祭りでミツキさんが気に入ったものがあれば私たちが買うということで決着した。船に比べれば何でもお安い御用である。


 それからもくじ引きやダーツなどを楽しんだが…ルル様は全てにおいて参加賞だったことを明記しておく。本当についていない残念美人である。




 そして時間もお昼時になり、ついに待ちに待った本日のメインイベントの時間になった。


「さぁ!皆様お待たせしました!たこ焼き大食い選手権の開催だ!」

「「「「おおおおお!!!」」」」

「司会は私、魚人アイドルのうっちーと!解説の魚ちゃんです!」

「うおうお!解説頑張りますうお!」

「さぁそれでは参加者を紹介しましょう!本日参加を表明してくれた猛者10人の登場~!」

「「「「「わぁあああああ!!!!」」」」」


 見るからに食べそうな巨大な魚人たちが登場していく中、明らかに場違いな小さな少女が2人。ルル様とリリだ。この日の為に断食を敢行していた2人…果たして勝機はあるのか!?


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