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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
16/88

海だ~~~!!!

 なぞなぞの見事な回答(?)でスフィルクスさんに気に入られたルル様はそのまま契約をし、協力関係となった。

 そして好意で背中に乗せてもらい、目的地まで送ってもらえることになった私たちは超高速で流れていく景色を堪能していた。


「速いですねえ」

「歩いていくのと何倍くらい違うのかしらね」

「あ、また魔物が轢かれましたぞ」

「何が起こったのか絶対わからないよね」


 スフィルクスさんの走る速度は尋常ではなかった。

 高速道路を走るよりも断然速いので時速200キロは優に超えていると思う。

 なのに風圧は全く感じることが無い。スフィルクスさんに聞いてみると障壁の魔法を展開しているから自身の周囲が無風状態になっているのだとか。

 障壁の魔法は便利そうなのでスフィルクスさんに移動中教えてもらい、精度は低いけれども一応展開はできるようになった。

 魔法で遊んでいると時間が経つのが早く、いつの間にか海の近くまで到着していた。


『着いたぞ』

「ありがとうございました!スフィルクスさん!」

「あっという間でしたな」

「ここが水の都ウンディですか」

「海はどこにあるのよ?」

「目の前に見えているのがウンディの南門なので、反対の北門から出るとすぐ海だっておじいちゃんが言ってたね」


 北には町があり、その奥に漁港が存在しているらしい。

 私たちは南門から少し離れたところで降ろしてもらった。スフィルクスさんの見た目は魔王の幹部みたいな様相なのでもし街の住人に見られでもしたら大変なことになるかもしれないからね。

 全員が地面に降りたことを確認するとスフィルクスさんが翼をはためかせる。


『我はここで別れよう』

「ええ!?一緒に行かないんですか?」

『ああ。何かあれば我を呼ぶがいい。右手に魔力を集め我のことを念じればその思いに応えよう』


 スフィルクスさんは一緒に行動はしないようだ。戦力大幅アップだと考えていただけに残念。

 挨拶もそこそこに空へと旅立ってしまった。


「いい人…魔物?でしたね」

「世界のことを色々知ってそうだし、何かあったら助けてもらいましょう」

「拙は怖かったですぞぉ」


 トトちゃんが怖がるのもわかる。一歩間違えれば食べられていたのかもしれないから…

 いかんいかん。せっかくのメインイベントなのに。気を取り直して3人に話しかける。


「さて。いよいよ念願の海ですよ」

「レッツゴーです!」


 南門を抜けてウンディに入る。


「うわぁ」

「活気が凄いですね」

「ワクワクしてくるわね!」

「お魚がたくさんですぞお」


 門を抜けた途端、至る所で掛け声が飛び交っている。

 魚市場のような風景だ。シートの上に種類豊富な魚が並べられ、売り買いが行われている。


 それはいいのだが…一つだけとんでもない違和感がある。


「…魚が魚を売ってるわね」

「買っている人も魚人さんですぞ」

「お魚フィーバーですね!」


 そうなのだ。みんなの言う通り売ってる人も顔が魚で、買っている人も顔が魚っぽい。どちらも二足歩行なので魚人という魚本来とは違う種族なのかもしれないけどシュールさが半端ではない。


 ただ、魚人と一括りにしていいのかわからないほど個人差があるようだ。

 完全に身体にも鱗がついていて顔も魚で、ぶっちゃけ魔物と言われても納得してしまうような者から、完全に見た目が人間だけど髪だけ青色とか、尻尾にちょこんと尾ひれがついているとか、耳だけ魚の者もいる。魚に手足がにょきっと出ているヤバいのは…見なかったことにしよう。


「とりあえず見て回る?面白そうだし」

「そうだね」


 市場を歩いてみることに。


 活気があり、人が少なくて静かなところがどこにもない。

 比較的店主さんが人っぽいところを選び物色する。

 魚は捌く前のものをあまり見たことがないので種類は全くわからないけど、全体的に大きい。それに明らかに見たことがない深海魚のような見た目の魚も多い。

 ほえーとかこれ何の魚?とか観光客丸出しの私たちを見て店主さんも苦笑いだ。


「それにしてもグロテスクなものが多いわね」

「ちょっとリリちゃん!店員さんに聞かれちゃうよ!」

「ははは。その通りだから気にすんな。見ない顔だけど旅行者かい?」

「はい。さっきこの街に着いたばかりです」

「そうか。遠いところよく来たな。歓迎するぜ」


 身体が青色なところ以外は人間に近い店主さんが気さくに声をかけてくれた。


「ありがとうございます。ここはいつもこんなに熱気があるんですか?」

「ああ。昨日と今朝の獲れたてを売ってるからな。毎日こんなもんだよ」

「新鮮なのですね!」

「味見してみるか?ちょっと待っててくれ」


 売り物の一つを店主さんが手に取って、その場で包丁で捌いてくれる。その手際は見事で、みるみるうちに刺身の状態になったいく。


「そこに醤油あるからつけて食べてみなよ」

「わぁ!いただきまーす」


 ルル様に続いて私たちもお言葉に甘えて味見をしてみる。

 マグロの味に似ているけど、ほんのり甘くておいしい。口に入れて数度噛んだだけでほぐれてなくなってしまった。

 新鮮な刺身って身がしまってそうで硬いのかと思っていたけどそんなことはなく、とろけるような触感だ。


「甘みもあっておいしいわね」

「口の中で溶けてなくなりました!」

「おかわりしたいくらですぞ!」

「気に入ってもらえてなによりだ。実はその魚はな。魔物なんだぞ」

「「「「ええ!?」」」」

「食べてもらったもの以外も、全部魔物だ」


 これ魔物なのか。言われてみればどの魚も凶暴そうな見た目をしている。それに普通じゃないようなものもたくさん。光っている貝や透明な魚、緑の魚まである。あれ食べられるものなのかな…?


「ここらで売られているほとんどが魔物だな。魔物は海を荒らすから駆除対象なんだが、同時に美味いことから俺たちの街では主食になってるんだぜ」

「「「「へええ」」」」


 魚人さんは魚を食べているわけじゃなくて魔物を食べていたのか。それがいいのかはわからないけど。


「共食いじゃなくてよかったわ!」

「またリリはそういうことを平気で言う…」

「魚も食うけどな!焼いたらうまいし!はっはっは」

「聞きたくなかった!」


 魚人の闇を垣間見たところで市場を離れて海を見に行くことに。

 味見をたくさんさせてもらったからお腹もいっぱいだ(ただし買ってない)。


「クロネだけは海を見たことがあるんだっけ?」

「うん。ここの世界じゃないけど」

「ふ~ん。今度異世界について聞かせなさいよ」

「機会があればね」

「見えてきたのですぞ!」

「わ~い!」

「ルル様!走ったら転びますよ」


 結局4人で海まで走ることに。

 そして辿り着いた先には…私の想像以上に美しい海がそこにあった。


 薄い緑色の、限りなく透明な海。海底がくっきり見えるほどの透明度。ちらほら船が見えるが、まるで空を浮いているようだ。底に船の影がはっきりと見える。


「キレイですねぇ。クロさんが見たがっていただけはあります」

「私もこんなに素敵な海を見たのは初めてです」

「あの浮かんでいるのに乗ってみたいわ」

「船だね。あれに乗って釣りをして、さっき売られていた市場の魔物を捕まえるんじゃないかな」

「なにそれ!楽しそうじゃない!」

「私も船で釣りしてみたいです!」

「拙も釣りはしたことがないのでやってみたいですぞお!」

「ちょっと!わかったから離れて!」


 3人に子供のように詰め寄られる。

 一斉に上目遣いで頼まれたら断れる人いるんだろうか?私も釣りはしてみたかったからいいんだけど。


 ということで、船を借りられる場所がないか探しているとこんなアナウンスが鳴った。


「Aランクのキングオクトパスとクイーンクラーケンが出現中だぁ!釣って名を上げたい奴は今すぐ近くの漁船に乗り込めえ!!」

「キングオクトパス!?」

「クイーンクラーケン!」

「行くしかないわね!」

「乗り込むのですぞお!」

「ちょっと!みんなストップストップ!」


 Aランクの魔物って言ってたから!超危険だから!

 私の制止も聞かずに3人とも近くに停泊していた船にわ~!と乗り込んでしまった。どうしよう…私AランクどころかBランクの魔物でさえ戦ったことないのに!


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