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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
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ポンコツ×なぞなぞ

 逃げることもできずに()()が近づいてくることをただ黙って見ていることしかできない。

 そしてついにそれが私たちの目の前に降り立った。


 全長は5メートルほど。とんでもなく大きい。あと1歩、目の前にいる存在が足を踏み出したら…私たちは踏みつぶされて死ぬ。そんな圧倒的存在が私たちを見下ろし、告げてくる。


『我はスフィルクス。汝らは旅人かや?』

「お話しできるんですね!そうです!私たちは海を見るために北を目指している旅の途中です」


 ルル様の言う通り、相手…スフィルクスが話しかけてきたことに驚いた。魔物は意思疎通が出来ない相手だと勝手に思い込んでいたが、どうやらそれは違ったらしい。スフィルクスには知性があり、会話も可能だ。

 それにしても全く物怖じせずに話すルル様が凄い。状況を分かっているのだろうか。いやわかっていない。


 スフィルクスは私たちが旅人だと知って嬉しそうだ。


『我は旅人を見つけたら、なぞなぞを出すことにしているのだ。もし汝らが我の望む答えを導き出したならば、我の知恵を貸すことを約束しよう』

「本当ですか!嬉しいです!」


 知恵を貸してくれることは嬉しいけど…大事なことをスフィルクスは言っていない。


「もし私たちが間違ったら…どうなるのでしょうか」

『…その時は…ふふ…あとのお楽しみだ』


 スフィルクスがよだれを垂らし妖艶に笑う。あ…死ぬわこれ。

 絶対に答えを間違えてはいけない。だがしかし!!ウチはポンコツが2人。つまり実質私とトトちゃんの閃きに賭けるしかないのだ!


「トトちゃん。頑張ろう!」

「わかりましたぞ!」

「私も頑張りますよ!なぞなぞ?が何か知りませんが!」

「なぞなぞ?よくわからないけどタダでは負けないわ!」


 駄目だこいつら…

 不安すぎる思いを胸に、スフィルクスの声を一言一句聞き逃さないよう注意深く聞く。


『では第一問。冷蔵庫の中に動物がいます。どんな動物?』


 問題は短い。冷蔵庫の中の動物?なんだろう。冷静になれ私…

 なぞなぞの基本は問題文をしっかり読むことだ。声に出してゆっくり発言してみよう。


「れいぞうこのなかにどうぶつがいます…う~ん」

「冷蔵庫の中、冷蔵庫の中、冷蔵庫の中…なんでござろうか…」


 ん?トトちゃんの声で分かったかも!れい ぞう こ の中だから、象だ!


「ぞ…」

「わかりました!豚さんと鶏の卵さんと牛さんと…ハムって何からできているのでしょう?」

「豚さんじゃないの?」

「じゃあさっき言ったのであとは…お野菜は動物じゃないし…あ!お正月にはカニが入っていることもあります!」

『………』


 いや、カニは動物じゃない…ってかお前んちの冷蔵庫の食材の話じゃねーよ!!

 スフィルクスさん唖然としてるじゃん!命掛かってるんだからボケとか要らないよ!


「はいはいはい!象です!冷蔵庫の文字の中に象が入っています!」

『あ…うん。正解。…コホン。では第二問』

「どうやら私の答えは違ったようですね」

「でもお姉ちゃん。積極的に答えていく姿勢は嫌いじゃないわ」

「次も頑張るね!」

「変に頑張らないで!応援してて!」

『…椅子は椅子でも辛くておいしい椅子は?』


 今回の問題は有名なパンはパンでも~ってなぞなぞと系統が似ていそうだ。

 椅子は椅子でも辛くておいしい…食べ物の中でイスの単語が含まれている料理を考えるってことかな…イス…ライス?

 もう少しで答えが出そう…そんなところにルルとリリのあほコンビがまたしゃしゃりだした。


「椅子って食べられるタイプのものもあるのですね!知りませんでした!」

「でもお尻で座っていた椅子よ?あたしは食べたくないわね」

「他にも家具で食べられるシリーズはあるのでしょうか?あればぜひ購入したいのですが」

「私たちは王女よ?それくらいすぐに手に入るわよ」

「一度見てみたいですね!」

『………』

「もうやめて!スフィルクスさんをこれ以上困らせないで!」

「わかりましたぞ!正解はカレーライス!辛くておいしい食べ物でイスも入っていますぞ!」

『あーうん。オッケー』


 ほらぁ!ルルとリリのせいでスフィルクスさん答えとかどうでもよさげになってんじゃーん!喰われるぞマジで私たち!


『…次の問題。見つけられるとつい怖い顔になってしまう野菜は?』


 もうあいつらが話し始める前に答えないと!えーとえーと見つけられるとつい怖い顔になる野菜…怖い野菜…恐ろしい野菜…


「野菜にも私たちと同じように感情があるのですか!?」

「聞いたことがあるわ!愛情をもって野菜を育てるとそれに応えてくれて美味しく実るとかなんとか!」

「なるほど!それと同じでいつもプンプンなお野菜もあるのですね~」

「いやあああああああーーーーーー!もうしゃべらんといてーーーーーーーー!!」


 なぞなぞの説明をポンコツ組にするべきだったー!

 スフィルクスさんを恐る恐る確認すると…やばいめっちゃ小刻みに震えてる。キレてんの?殺されるの?


『なるほど…なるほど。次で最後のなぞなぞだ。それで決めよう』

「な、何とか最後まで繋げられた…」

「心臓に悪いですぞぉ…」

『では最後の問題。朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何か』


 最後の最後で知ってる問題きた!最速で答える!

 だがポンコツ組も慣れてきたのか、むかつくことにレスポンスが異様に速い。


「時間毎に形態が変化する生物がいるのですか!かっこいいです!」

「見てみたいわね」

「答えは人です!赤ちゃんの時はよちよち歩きで4本足、成長したら2足歩行、老後は杖を突いて3本足!スフィルクスさん!こいつらは無視してください!」

「クロさんきちんと問題文聞いていましたか~?朝、昼、夜の話をしているのですよ?人の一生を聞いているのではないですよ~」

「これはお姉ちゃんが正しいわね」

「もうお願いだから君たち黙って」


 さも自分たちが正しいですみたいな態度を取ってるんじゃないよ!君たち全問不正解だからね!?もう最悪だよ…オワタだよ…


 スフィルクスさんは相変わらずプルプル震えて…ついに耐え切れなくなったのか笑いだした。え…?笑い堪えていたの?こいつらポンコツすぎて?


『ふ…あはははは!愉快愉快!そんな回答を聞いたのは生まれて初めてだ!実に素晴らしい!』

「えー…素晴らしいんだ…」

「やりましたね!」

「ど、どうなるのでしょう?」

『最初に言った通り、我の知恵を貸そう。何か聞きたいことはないか?』


 威圧感は消え、優しい笑みを浮かべるスフィルクスさん。よかった…本当によかった…今回はポンコツが良い方向に転んでくれた…

 人生で一番のピンチだったと思う。脇汗が凄い。




 聞きたいことは…ある。でもここは今回の功労者であるルル様からだろう。


「ルル様。何かスフィルクスさんに聞きたいことはありますか?」

「そうですね…私はテイムという魔法を使えるのですが、いまいちどうやって使えばいのかわからないのです。この魔法はどうやって使えばいいのかなどを教えてほしいです」

『なるほど。珍しい魔法だ。ではその問いに答えよう。テイムとは、魔物を捕まえ、使役する魔法だが…捕まえる方法は対象に自分の魔力を流し込み、順応すればテイム成功だ。ここで波長が合うかの問題がある。波長が合えば少量の魔力でもテイムが成功するし、合わなければいくら魔力を注ぎ込んでもテイムは成功しない。そして成功率を上げるためには相手が弱っていればなおよしだ』


 スフィルクスさん凄い詳しく教えてくれる!


『だが、高位の魔物となるとまた違う方法になる。我のような存在だな。高位の魔物は当然ながらそなたよりも魔力が多い者がほとんどだ。そのような相手にはいくら魔力を送っても意味がない』

「ではどうすればいいのでしょうか?」

『簡単だ。相手に自分のことを認めさせればよい。そして両者合意の下で契約を結ぶのだ。どれ。例として我がそなたと契約してやろう』


 ん?話が凄いことになっているような?ルル様も驚いている。


「いいのですか?」

『ああ。久しぶりに面白い存在だよそなたは。名前は?』

「ルルフレール・ランペルジュです。長いのでルルとお呼びください」

『うむ。ルルの寿命が尽きるまでは知恵を貸してやろう。腕を出すがいい』

「こうですか?」


 ルル様の手と、スフィルクスさんの前足が重ね合わさる。するとルル様の手が光りだし、幾何学的な模様が手の甲に現れる。スフィルクスさんはそれを確認して頷く。


『これで契約は完了だ』

「なんだか力が溢れてきます!」


 ルル様が手をぐるぐる回して嬉しさを表現している。ルル様凄いな。

 テイム順がスライム→スフィルクスさんとかレベル上がりすぎでしょ…


『テイムに関してはこんなところか。他の者は?名前も教えてくれ』

「拙はトトと申します!質問は特にないですぞ!」

「あたしはリリフレール・ランペルジュよ。お姉ちゃんの妹。あたしも聞きたいことは今のところないわね」

『ふむ。そうか。では最後はそなただな』


 私に全員の視線が集まる。私は…


「黒音寧々です。質問します。私は地球というこの世界とは違う場所で生まれ、育ちました。私はこのレインスマルブという世界から地球に帰ることはできるのでしょうか?」


3問目の答えはニラです。

ニラ見つける→睨みつける

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