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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
12/88

お風呂は苦手ですぞ~!

 トトちゃんと初めてお風呂へ入ることに。

 ただし、ここは草原のど真ん中でいつ魔物に襲われてもおかしくはない場所だ。そんなところで一斉にお風呂へ入るのはマズい。だから2人ずつ分かれて入ることになった。


「どういう風に分けるんですか?」

「ルル様以外はここ周辺の魔物には問題なく勝てるので誰と組んでも大丈夫です」

「言い方にトゲを感じるのですが!」

「グーパーで同じ人と入りましょうか」

「いいわよ」

「わかりましたぞ!」

「うぅ…無視されました…いいですけどぉ…」


 そしてグーが私とトトちゃん。パーがルル様とリリだったので先に私たちから入ることに。なぜならこの王女様たちは先にお風呂に入ってしまうと寝てしまうからだ。見張りをしてもらうには後回しにしなければいけない。


 ということで2人には周囲を警戒してもらいながらトトちゃんと一緒に服を脱ぐ。

 イヌ耳がぺたんとへこたれていることからお風呂ギライだということが丸わかりだ。そわそわしているし、逃げ出さないように目を光らせておく。


「トトちゃん。諦めて一緒に入ろうね」

「わ、わかりましたぞ!覚悟を決めます!」


 がばっとトトちゃんが忍者服を脱ぐ。

 肌は真っ白で身体は華奢だ。胸は…推定Bカップくらいだろうか?私と同じくらい(よかった)。そして一番気になっていた尻尾の位置だけど…お尻のちょっと上にちょこんと生えていた。動いていて可愛らしい。


「は、恥ずかしいですぞ~」

「寒いから早く入ろう」


 急いで台座を上ってお湯に入る。だけどトトちゃんはお湯が張ってあるドラム缶を覗き込んだまま入ろうとしない。


「思ったより深そうですぞ…」

「大丈夫だよ。ルル様が溺れかけたことがあるけどふちを掴めばへっちゃらだよ」

「大丈夫じゃなさそうですぞ!」

「じゃあ私が抱っこしてあげる。それなら怖くないでしょ」

「お、お願いしますぞ」


 私に抱き着きながら慎重にお湯に入るトトちゃん。そして肩まで使ったところでようやく安堵したのか大きく息を吐く。


「ふぅ…怖かったですぞ~」

「でも気持ちいいでしょ?」

「そう…ですな。身体はぽかぽかだけど顔は風が気持ちよくて丁度いい気分ですぞ」


 そうそう。それが露天風呂の醍醐味だよね。顔と身体の温度差が何とも言えない心地良さ。


「はぁ…ずっと入っていられるー」

「ただクロネ殿と距離が近くて恥ずかしいですぞ」


 私たちは抱き合っている状態でお湯に浸かっているので自然と距離も近い。でもなんだろう。トトちゃんに抱き着かれてもドキドキしない。言い方は悪いかもしれないけど、愛犬にじゃれつかれているような…そんな気分だ。可愛いけど変な気分にはならない。


 けどトトちゃんは私とは違うようで、顔を真っ赤にして犬耳がピコピコしきりに動いている。見えないけど尻尾も動いていることだろう。その丸い耳が愛らしいのでついなでなでしてしまう。


「はうっ!!」

「あ、嫌だった?」

「嫌ではないのですが…敏感なところですので…」

「ほほう。なでなで」

「はううう!!あまり撫でないでくれると助かるですぞ~!」


 それからもしきりに撫でまわしてスッキリしたところでお風呂から上がることに。


「満喫したー」

「ふにゅぅぅ…」

「あんた容赦ないわね…」

「明日は私がトトちゃんと入りたいです!」


 やっぱりお風呂は良い。出来れば毎日入りたい。

 そしてトトちゃんの胸を確認してわかったことは…

 ルル様>>>私≧トトちゃん>>>リリ

 ということ。バランスがいいメンバーだ。


 それから全員でルル様をお湯に入れて、お湯から出し(ドラム缶を自力で跨げない為)、お水を飲んで野営の準備。


 例のごとくルル様とリリは起きていようと努力するが…ぱたりと力尽きたように寝てしまったので私とトトちゃんで見張りを交代しながら夜を明かすことにした。


「2時間交代と4時間交代だったらどっちがいいかな?」

「4時間交代でいいのではないですかな?」

「わかった。そうしよう。どっちから寝る?」

「お先に寝てもらってもいいですぞ!」

「うん。じゃあお言葉に甘えて寝かせてもらうね。4時間経ったら遠慮なく起こしていいから」

「わかりましたぞー!」


 トトちゃんが先に見張りを受け持ってくれたのでテントの中に入って寝る。

 テントの中でのんきに寝ている王女様2人にチョップしてから私も仮眠を取る。心の中で4時間後に起きる…4時間後に起きる…と唱える。こうしながら寝ると目覚ましが無くても時間通りに目が覚めるのだ。私の特技の1つ。


 旅の途中でもぐっすり眠れることに幸せを感じながら眠りにつく…

 そして4時間後。パチッと目が覚める。流石は私。


 テントから出て焚き火の近くに行くとトトちゃんが腕立て伏せをしていた。


「おや。クロネ殿。自分で起きられたのですな」

「運動しているの?偉いね」

「一日でもトレーニングを欠かすと身体が鈍ってしまいますからな!」


 おお。こういうところはノウキングダム出身っぽい。朝からジョギングをする人で溢れているからね。あの国は。街を歩くと筋トレしている人が必ずいる。正直引く。


「毎日やっているとか…私なら絶対続かないな」

「最初はきついですが…慣れてくると毎日やらないといけない気持ちになってくるのです」

「へぇー。今日の分は終わった?」

「はいですぞ!」


 元気よく立ち上がるトトちゃん。

 よく見るとその後ろに狼っぽい魔物が倒れている。


「あの魔物襲ってきたの?」

「はいですぞ!」

「お疲れ様。トトちゃんが居てくれてよかったよ。倒した魔物はマジックバッグに入れておいてね。次の村か町で売るから」

「なるほど」

「それじゃあ寝ていいよ。あとは朝まで私が見張りするから」

「わかりましたぞー!それではよろしくお願いします!」


 トトちゃんが走ってテントの中に入っていく。元気だなー。

 私はトレーニングとかしたくないので焚き火の前に座って火の動きをぼ~っと眺める。

 これが案外飽きない。いつ見ても動き方は違うし、薪がパチパチ燃える音も聞いてて心地いい。なんだろうね。よくわからないけど焚き火を見ていると癒される。


 焚き火を見ながら今日一日あったことやルル様のドジっぷりを思い出しながらのんびり過ごしていると辺りが明るくなっていく。

 ルル様を鞭で叩いたらどんな反応をしてくれるだろうか…非常に興味がある。見た目通りのMだから痛がりながらも気持ちよくなるのかな?

 でも普通に痛くて泣いてしまう可能性が高そうなのでやめておこう。イジメたいけど、嫌われたくはないのだ。その匙加減が難しい。




 完全に日が昇り、鳥の鳴き声が聞こえてきたので3人を起こしに行く。

 なかなか寝袋から出たがらない3人を無理やり引っ張り出し、朝食を食べて出発。


「見渡す限り何もないですね~」

「魔物に奇襲されないのはいいですが、ここまで何もないと面白みに欠けますね」

「何かしながら行きましょうよ!退屈でつまらないわ!」

「走り込みますか!?」

「ルル様が使い物にならなくなるのでダメ」

「やってみる前から否定的でどうするのですかクロさん!」

「では走りますか?」

「やりましょう!」


 ルル様はポンコツなのにやる気に満ち溢れているのが面白い。あの家庭環境でこのような明るい性格のまま育ったとか天使か。


 早朝から4人で何もない草原をひたすら走るという謎の青春ごっこをすることに。


「あのぽつんと立っている木まで競争よ!」

「せっかくなので負けた人は罰ゲームをしましょう」

「いいですね!」


 ルル様がなぜ乗り気なのか理解できない。


「では負けた人は今日1日勝った3人の命令は絶対に聞くということで」

「乗ったわ!」

「負けられないのですぞ~!」

「負けませんよ!」

「一斉にスタートするとルル様の負けが確定するのでハンデを設けましょう」

「なるほどね!いいわよ」


 ルル様がこのままだとかわいそうなのでスタートの時間差をつけることでいい勝負になるよう調整することに。

 ちなみに木までの距離はだいたい1キロくらい。どれくらいかかるのかはよくわからない。だから各自ルル様にギリギリ追いつきそうな頃スタートすることになった。


「先に走りますね!行ってきます!」


 ルル様が元気よく走りだす。その走りは…おっそい。もしかしたら小走りでも勝てるかもしれない。あと手と足の動きが一緒!それ恥ずかしいやつ!


「私は…リュックも背負っているし、半分くらいまでいったら走り出すね」

「あたしはもっと後でも勝てそうだわ!」

「拙もリリ殿と同時にスタートしますぞ!」


 ルル様の恥ずかしいフォームを眺めること5分。そろそろ半分くらいまで到達したので走り出すことに。


「ではお先に失礼します」

「お互い頑張りましょうぞ!」


 さてさて。どうなることやら。ゆっくりと走り出しながら考える。

 ルル様が負けて恥ずかしいことをたくさん命令するのはとても楽しそうだ。でも一方でリリが負けて悔しがるところも見たいし、トトちゃんに命令するのもありだ。それに勝負事にめっぽう弱いルル様を勝たせることで自信を付けてもらいたいという思いもある。


 とにかく自分が負けなければどう転んでも美味しいので適当に邪魔しながら走ることにしよう。


 私が走り出した約1分後に後ろから二人が猛追してくる。

 その速さは尋常ではない。100メートル走なら10秒切るくらいのスピードだ。このままだと2人に負ける。


「【エアーズロック】」

「「な!!」」


 後ろを振り向き両手を地面につけて土魔法を発動。地面を盛り上げて直進できないようにする。迂回するにしても登るにしてもこれで時間を稼げる。


「ちょっと!魔法使うなんて聞いてないわよ!」

「卑怯ですぞ!」

「魔法使わないなんて言ってないし」


 何か喚いているが勝てばいいのだ!過程は関係ない。

 これで少しはいい勝負になるだろう…と考えていたが私はリリを甘く見ていた。


「こんな魔法であたしをどうにかできると思っているのかしら!吹き飛べえええ!」

「おお!流石はリリ殿ですぞ!」

「…破天荒娘め」


 迂回するでも登るでもなく、リリは蹴りで盛り上がった土を吹き飛ばした。私の背中に飛んできた土が当たって痛い。


「あっはっは!あたし最強!」


 それからあっという間に私とルル様を追い抜きリリが一位。遅れてトトちゃんが二位。

 勝負は私とルル様の一騎打ちになった。


「はぁ…はぁ…負けたくないけど…もう走れないですぅ…」

「ルル様。お先に失礼します」


 早歩きしたほうが速いんじゃないかという憔悴しきったルル様を追い抜きゴール。

 そのあとヘロヘロになりながら何とか完走したルル様が最下位。


「よく走り切りましたねルル様」

「えへへ。頑張りました!」

「でも罰ゲームですよ」

「そんな!?頑張ったのに!!」


 頑張っても負けは負け。さて。どんな命令をしよっかなー。


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