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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
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これも愛の鞭です!

 新たに忍者獣人トトちゃんを仲間に加え、4人での旅になった私たち。

 宿で朝食を食べ、王国から村までの道中で拾ったものや狩った魔物を売りに行くことに。


「売るものなんてあったかしら?」

「リリが狩ってくれた魔物と、夜に襲ってきた魔物、あとは薬草とかも拾ったね」

「ふーん。いつの間に」

「抜け目ないですな!クロネ殿は」


 マジックバッグを持っているので売れそうなものがあればどんどん詰めることにしている。要らないようなものでも意外に高く売れることがあるから楽しい。


 今回の売却では薬草が高値で売れたので総額金貨30枚ほど。日本円に換算すると30万円くらいか。魔物が低レベル帯だったので買取金額は少なかったが、当面の旅の資金には十分な額である。


 村で携帯食料や調味料を大量に購入し、ふと思いついたことをルル様に尋ねる。


「ルル様は武器を使うとしたら何を使いたいですか?」

「武器ですか?」

「はい」


 ルル様の自衛手段は確保したほうがいいだろう。

 リリのように素手でも格闘術を使いこなせるのであれば問題ないが、ルル様の武器装備ナシは文字通り最弱だ。

 ルル様は腕を組んで首を捻っている。


「何がいいんでしょうかね?」

「槍とかですかね?リーチ長いし…いっそ攻撃のことは考えないで盾だけ持つのもいいかも?」

「とりあえず武器屋に行ってみましょうよ」

「そうだね」


 武器屋に寄り物色することに。

 お店に入ると数多くの武器が所狭しと並んでいる。

 剣や槍、弓やボウガン、変わったものだと斧や鎌などもある。なかなか充実しているお店だ。


「いらっしゃい。探しているものがあれば呼んでくれ」

「初心者にお勧めの武器はありますか?」

「得意な武器はないのかい?」

「ええ」

「だったらやっぱり剣だろうな」


 私もそう思う。無難だけど。そんなわけで剣を選んでいると弓を抱えているルル様が目に入る。


「…何をしているんですかルル様?」

「私これが気に入りました!遠くから一方的にしゅぱぱぱっと倒すのカッコよくないですか!?」

「味方に当てそうなので却下です」

「当てないですよ!?」


 毎回ルル様の矢に怯えながら戦うの嫌すぎる。


「トトちゃんはどんな武器を使うの?」

「拙は小刀を使いますぞ!遠くにいる敵には手裏剣で牽制もします!」

「なるほど」


 リリは素手だから近接タイプ、私は魔法メインだから遠距離タイプ、トトちゃんは万能タイプ…かな?忍者だし。こうして考えるとかなりバランスがいい。ルル様は何でもいいな。


「ルル様の好きなものでいいですよ。弓以外で」

「いいんですか?なんでも?」

「はい。どれ選んでも戦力にはカウントしませんし」

「ひどい!!」


 それでも嬉しそうに武器を吟味するルル様。時折質問してくるので私や店主さんが答えながら待つこと10分、30分、1時間…なが…


「お姉ちゃん!なんでもいいから早く決めてよね!」

「えーとじゃあこれ!これにします!」


 ルル様が選んだ武器…それは鞭だった。SMプレイとかでよく使うやつ。


「ルル様それ使われる側ですよね?」

「違いますよ!これで敵を遠くから一方的に叩くんです!」


 遠くから一方的に攻撃することに執着しているルル様。


「まあいいですよ。店主さん。これ買います」

「毎度あり。金貨3枚だ」


 高い…ルル様を見ると嬉しそうに鞭を眺めている。…しょうがないな。

 というわけでルル様の武器を購入し。ようやく村を出ることに。

 

 暫くは見晴らしのいい草原だ。ルル様が上機嫌に鞭を振り回しているのを眺めながら歩いていく。


「早く魔物でないかな~♪ペシペシ」

「そんなへなへなしている鞭捌きでダメージが与えられると思っているのですか?」

「初めてなので大目に見てください!」


 腕の振りが遅いのか鞭の速度がのろい。もっと鞭なら痛そうな音が出せるはず。


「もっと手首のスナップを利かせて、あと脇も締めたほうがいいと思います」

「こうですか?」

「私たちにだけは当てないようにしてよね!お姉ちゃん」

「安心して!リリちゃん!」

「安心できないわ…」


 ルル様の前にだけは出ないようにしよう。

 それからゴブリンを見つけたので戦うことに。


 ルル様が嬉々として飛び出し鞭を振るう。

 しかし全く当たらない。当然である。動かない木にすら当てることが出来ないのに動き回っているゴブリンに攻撃が当たるはずがない。それでも一生懸命鞭を振り続けるルル様。


「このっ!このっ!まったくっ!当たらないですっ!」

「頑張ってルル様!」

「あの~。拙たちは攻撃しなくていいのですか?」

「お姉ちゃんの残念な戦い方を見るのもこの旅の楽しみよ」

「そうなのですか」


 武器持ちのゴブリンは処理してあとはルル様の勇姿を眺める。せっかくだからお昼を取りながら観戦。シートを引き、村で買った新鮮な野菜や卵を使ったサンドイッチを3人で分けて食べる。


「美味しいわね!」

「シャキシャキな野菜が美味ですぞ!」

「いい天気だし、風が気持ちいいし、のどかだなぁ」

「どうしてっ!みんなっ!手伝って!くれないのですか!…って何か食べてます!?」


 振り向き驚愕するルル様。


「勝ったらおいしいご飯が待ってますよ」

「もう無理です!腕が痛くて上がらないです!」

「では一発でも当てたらお昼を食べられることにしましょう」

「なんですかそのルール!?」


 成長するには実践が一番いいと聞く。これは愛の鞭なのですルル様。

 それから何とか一発ぺしっと当てた(0ダメージ)ルル様が笑顔でこちらに駆け寄ってくる。


「見ました!?当たりましたよ私の鞭が!」

「おめでとうございますルル様。どうぞ。サンドイッチです」

「わーい!いただきまーす!」


 追いかけてきているゴブリンを火魔法で焼きつつルル様にサンドイッチを渡す。

 それから先ほどの戦闘の感想を言い合いながらサンドイッチを食べる。


「縦に振ると当たる気がしないから、横に振ってみれば?お姉ちゃん」

「相手にしてみればそっちのほうが避けづらいかもね」

「こうですか?」

「「「いまやらないで!」」」


 馬鹿かこいつ…おっと口が悪くなってしまった。


「次はトトちゃんの戦闘も見たいわね」

「いいですぞ!」

「頑張ってねトトちゃん!」


 確かにトトちゃんがどれくらい戦えるかは知っておくべきだ。まぁ一人で王国から私たちを追いかけてくるくらいだから弱いはずはないだろう。


 実際ゴブリンとの戦闘は問題なく勝利していた。

 圧倒的なスピードでゴブリンを撹乱し、姿を見失ったところを後ろから短刀で刺す。ルル様とは違って安定感がある。


「よくやったわトト!流石は私のトトね!」

「ありがとうございますリリ殿!」


 すっかりリリとも仲良くなったようで何より。


 そのほかにもトトちゃんは優秀だった。犬の獣人だからか嗅覚が異常に鋭く、食べられる野草や木の実などがわかるらしい。

 今も道端で拾った食べられそうな草をチェックしてもらっている。


「くんくん。これは食べられないと思いますぞ」

「そっか。いけると思ったんだけど」

「どんな匂いがするんですか?トトちゃん?」

「変な匂いがします!」


 どう変なんだろう?謎である。

 そんなこんなでトトちゃんが加入してくれたことで旅はより順調なものになっていった。




 そして夜。いつものようにドラム缶を出し、魔法でお湯を張る。


「これは何ですか?」

「お風呂だよ」

「クロネが毎日入れ入れってうるさいのよね」

「疲れも取れるし、気持ちいいし私は好きですよ」

「お、お風呂ですか…拙はちょっと…」


 トトちゃんがお風呂と聞いてたじろいでいる。なんでだろう?犬ってお風呂嫌いが多いらしいけどそれかな?


「お風呂嫌い?トトちゃん」

「お湯の中に身体を入れるのが怖いと言いますか…」

「一緒に入るから大丈夫だよ」

「そうよ!あたしと一緒に入りなさい!」

「うぅ…では試しに一度だけ…」


 トトちゃんが忍者服を脱いでいく。

 胸は私より大きいのか小さいのか…それに獣人の裸はどうなっているのか…尻尾はどこについているのか…調べることが多いお風呂タイムになりそうだ。


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