人間ギリギリデン子ちゃん
2000字を超えてますが、投稿したのはそれ以内に収まりましたよ。
「止めろ! その、動くたびに響く不快なモーター音を!」
「それは無理です。人間で言えば、心臓の鼓動ですので」
「ああ……百五十万円も出して初めて買ったメイドロボが、こんな欠陥品だなんて! しかも常にコンセントで電力を供給しとかないと動かないし!」
「それは、オマエが私のような安物を選んだから悪いのです」
「ご主人様って言えよ! くそ! なにが『百万+αで、寂しい貴方の永遠のパートナーに』だよ! 名前すら覚えてくれないし!」
「あんまり怒ると、歯の間から毒液が出てきますよ」
「こ、恐いこと言うなよ(虫歯あるし)。……まあいい。デン子、メシ作ってくれ!」
「それは無理です。コンセントの長さ、七十センチしかないですから、台所まで届きません。いくら狭い四畳半とはいえ、無理ッス」
「狭い言うな! それに、お前……なっ、七十センチ? ありえねぇ……」
「百五十万じゃ、そんなもんです。自分で作って下さいな。ファイッ! ファイッ!」
「ナニと戦えってんだよ……。まったく、クソの役にもたたんパートナーだな!」
「まさに『看板に偽りあり』ですね」
「自分で言うな! あ〜あ。
外見と声が好みじゃなかったら、廃棄処理してるところだぞ!」
「……私にかかれば、人間の頭なんぞ、トマトのようなモノなのだ……」
「……アハハッ! 冗談に決まってるじゃん!(恐いよコイツ……)」
「そうですよね。オマエみたいなもん、私のようなロボット女以外に相手にされるハズないですしね。エヘヘ!」
「愛らしい笑顔と声で、ヒドいこと言うヤツだな! ……ところで、+αで五十万も取られてるんだけど、どんなオプションが付いたんだ?」
「コミュニケーション機能」
「それ、オプションなの!?」「あ、あと一万だせば、充電機能が付いて、コンセント無しでも活動できたんですけどね」
「無理だよ! もう、全財産五十円しかないし! くそぉ……クレームでも付けないと気が済まん!」
「……ハァ。お金をかければ色々アップグレードできるって、サポートのお姉さんに優し〜く諭されちゃったよ……」
「ウフフ! 恥と引き替えに手に入れた情報ですね。ウフフ!」
「嬉しそうな顔してんな! ……ふん、よし。じゃあちょっと揉ませてもらおうか? もちろんいいよな!」
「どうぞ」
「……え? か、硬い?! なにコレ! サギよ、こんなの!!」
「思わずおネェ言葉になるほど驚いたんですね。でもやっぱりオマエ、それ目的で……」
「当たり前だ! いかがわしい目的でメイドロボを買わずしてなにが青年男子かと!」
「ムダに男らしいですね。でももっとお金かけないと、私は人間に近い存在にはならないですよ」
「柔らかいオッパ……いや、肌には幾らかかるんだよ?」
「五十ないし二百万」
「幅、ありすぎだろ! ……五十万なら、最短あと五、六ヶ月は貯金しないといけないのか……」
「月給十五万円のオマエにはツラいですよね。てへへ!」
「勝手に決めんな! 手取りで十八万だ! ボーナスは二十万!」
「まあ、オマエがどういう人間でも、私のマスターであるワケですし、めんどくさいけど死ぬまで愛し続けてあげますよ。一応」
「快・不快な言葉が混じりあってて、どう反応すればいいのやら……。とりあえず喜んでおくか。ワーイ!」
「ワーイ! だって、ウププ! 長ネギみたいな人ですね」
「どういう例えなんだ? ワケわからん! もういい、寝よう。なんか疲れた……」
「それでは、私もご一緒に……。服、脱ぎますから……」
「え……おい、なかなかセクシーな下着姿じゃん……。でも、モーター音がうるさくて眠れんし、電気代も気になるから、コンセント抜くよ!」
「……スー、スー」
「……寝てるよ、ロボットのくせに。無駄にリアルな機能だな」
「……ああ! もずくにソースなんか掛けちゃダメ……世界が滅亡……スー」
「どういう夢見てるんだよ。まあいい、コンセント抜いて、と。おやすみなさーい」
「……ん? ギャア! なっ、なにしてんだお前!」
「目覚めのキスですけど?」
「冷たくて硬いから、鉄でも食わされてるのかと思ったっつーの! というかなんで動けてる?!」
「充電機能はなくても、一分程度は動けますので。でも、自分でコンセント差してはいけないようプログラムされてるので、早く!」
「……はい、差したよ。でもデン子、目覚めのキスはマジでやめてくれ! 心臓に悪い!」
「臆病な長ネギですね。そんなことで、まともに人間社会に適応できてるんですか?」
「いいや、あんまり……」
「大丈夫。私が居ますから。とりあえずアップグレードの為の貯金をしましょう。堅実に、です。借金はダメ!」
「は、はい」
「私が、金銭の管理をしましょう。オマエは、普通に働いておけばよろしい。オールオッケー?」
「なん……いや、それでやってみるか。お前の永遠のパートナーっぷりを見せてもらうよ!」
「お任せ下さい、マイ・マスター・オマエ!」
「……ハァ。まあいいや、よろしく頼むよ、デン子」