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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第7章
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監視部隊派遣

10 監視部隊派遣

 ううむ・・・確かに、植民地化された国や地域での建築工事すべてを妨害するわけにはいかないわけだ・・・、もしかしたら今回の娯楽施設というのは、キューブをスパイに持ち去られたことを懸念しての陽動作戦だったのかもしれない・・・、こちら側がどれだけの情報を掴んで、どのような行動に出るのかを見るために・・・。


 そのため爆弾を各工事現場に置いて行っても、それほど大きな反撃を行わなかったといえるのかもしれない。

 トンネル工事や地下鉄工事を始められたら、それら全てに対して妨害工作を行うことは、ほぼ不可能といっていいだろうし、植民地の人々の生活を邪魔することにもなりかねない。


「おっしゃることはごもっともです・・・植民地化された国や地域の住民は、こちら側世界の人々ですから、我々同様に自由に生活できる権利があるわけです。


 今回の攻撃前にフィリピン政府・・・いや統治下にあるフィリピン行政府といった方がいいでしょうか・・・、先ほど宣戦布告とともに攻撃の理由を明確にしておきました・・・、もちろん他の植民地でも同様に通達しました。

 あなた方が次元を超えて移住してくる可能性が高いと伝えてあります・・・。


 今までは生体の次元間移動が不可能という事で、こちらの世界へそちら側の世界から進出してくることは不可能と考えられていたから、彼らだっておとなしくそちら側からの指示に従っていたとも考えられませんか?

 なにせ、こちら側の世界での人手として必要性を感じられましたからね。


 だが、これからはどうでしょう・・・、そちら側から人が自由に移住してこられるとなると、彼らだって自分たちは用済みであることに気づくはずです。

 なにせ、あなたたちが自らの手で工場を運営し、農地を耕した方がいちいち指導したり指示したりする手間が省け、はるかに効率がいいわけですからね。


 力作業や繰り返し作業などの単純労働に関してはオートコントロールのマシンを使えばいいので、今でもそのような人出ですら不要となっているわけですからね。」

 赤城が向こう側世界の霧島博士の問いかけに、ゆっくりと答えていく。


「力仕事や単純作業などの需要もないとなると・・・それらの人々は、あなたたちが移住してくることを喜んで迎えるでしょうか?

 恐らく、移住してきた当初は大丈夫かもしれません・・・、それでも1年、2年先はどうでしょうか?


 数少ない植民地にそちら側世界で生き残った全ての人たちが順繰りに移住してくるまでには、それなりに時間がかかるでしょうが、それでも世界中の生き残った人々が移住してくるとなると、膨大なインフラ確保が必要となるでしょうし、もちろん住居も必要となります。


 今は閉鎖空間で生きることを余儀なくされていますが、移住してきて自由に地上で生活ができるようになれば、それなりの生活が望まれるわけですね・・・、そこで現地の人たちと平等に暮らすことが出来ますか?


 その点を懸念することは当たり前ですから、恐らく植民地化された国や地域でも、あなたたちの移住に関しては基本的には反対するのではないかと想定しております。


 まあ、これから各行政府から市民に対して通達がなされて、それこそ国民投票でも行われるかもしれません。

 それで反対となった場合、あなたたちはどうされますか?

 植民地化したときのように攻撃して、わずかばかりの生き残りだった人々までも、全て根絶やしにしますか?


 今回の我々の行動は、これから始まるであろう大規模な移住作戦に対しての危険性を、こちら側世界の人々に周知させるためのもので、この作戦自体が失敗してもいいと考えておりました。

 そちら側世界から移住してくるという新たなる脅威に対して、植民地化された国や地域の人々が自ら自覚して監視に当たらせる・・・。


 トンネル工事や地下鉄工事などはもっとも危険性が高いですから、機械任せの工事は許さずに常に住民監視の下での工事しか行わせないでしょう。

 植民地なので、住民の自由にはさせないと無視しますか?」


 質問に対して質問を投げかけるという訳ではないだろうが、赤城の問いかけは霧島博士からの質問に対する回答にもなっている。

 つまりは、このままでも向こう側世界からの移住は困難となったと言えるわけだ・・・、我々が直接手を下さなくても、植民地の住民たちが監視をしてくれる・・・。


「ともかく・・・、今回の暴挙に対しては断固とした態度をとるつもりです。

 いままでのことを反省し、少しばかりの反撃に際しては大目に見てきたのですが、もう限界です。

 報復措置に関しては十分吟味の上行うつもりですので後悔なさらぬよう・・・自分たちの愚かな行為を認めたうえで反省して許しを請うのでしたら、今のうちですよ。」


 ところが、所長はあくまでも強気でまくし立ててくる。

 強奪マシンの捕獲から始まって、巨大円盤と隠し農場の奪取から植民地の建築現場への干渉と、エスカレートしていく行為を許すことが出来なくなってきているのだろう。


「報復措置として・・・静止軌道上に配置してある攻撃衛星からの核攻撃をお考えでしたら、あきらめた方がよろしいですよ。

 円盤を奪取したすぐ後に、静止軌道上の衛星は全てそちら側の世界に送り返しました。


 さらに周回軌道上の衛星に関しても円盤の認識機能を用いて、武器を装備している衛星に関しては選別して送り返しました。


 全ての衛星を送り返してもよかったのですが、それを行うとこちら側でも巨大円盤やマシンの自動制御ができなくなる恐れがあるため、やめておきました。

 GPS機能や大気状態観測ですか?そういった機能は利用させていただいた方が、こちら側の社会の発展にもつながりますからね。」


 赤城が、前もって攻撃衛星はすべて送り返してしまっていることを伝える。

 そうなのだ・・・静止軌道上の円盤の処理が終わったあと、当分の間は隠し農場の家畜の回収に明け暮れていたのだが、一段落した後でまた他国の円盤と次元移送装置を取り付けた円盤で軌道上へと上がったのだ。


 そこで霧島博士がコントロール装置の解析スイッチを見つけて、周回軌道上に浮かんでいる衛星を選択すると、それがどのような機能を持った衛星か区分できることが分かった。



---------

「さあて・・・コントロール装置の全方位画面を開き、さらにこの宇宙空間に滞在しているときだけに出現する、サーチと書かれたアイコンをクリックしてくれ。

 すると・・・青や黄色など様々な点が画面上いっぱいに表示されるはずだ・・・。」


 4台の円盤で示し合わせて軌道上に上昇したのだが、今回は前回と異なり地上から3000キロの少し低めの高度での作業だ。


 霧島博士の指示通り、普段は表示されないアイコンをクリックすると、それまでのカメラ画像が突然カラフルに色付けされる。

 しかも、その点の数はすさまじく多い・・・。


「点の大きさや輝度は、恐らく衛星の大きさと重さを現しているのだろう。

 そうして色は、衛星の用途の識別と予想される。


 鈍くグレーに表示される点は・・・、恐らく使用済み衛星やロケットなどの残骸だろう・・・いわゆるごみの類だと推定している。」

 霧島博士の推測に基づいて、灰色表示される点に近づいて行って拡大表示すると、それは金属製の円筒のようだった。


「そうだね・・・今近寄ってくれたグレー表示の点は、恐らく地球の重力圏を脱出したロケットの燃料装置か何かの部品だろう・・・、向こう側の世界で処理に困って、攻撃衛星などとともにこちら側世界に送り込んできたものと考える。


 時間があれば、これらも送り返したいところだが、それはいずれの機会という事にして・・・、今回は赤く表示される点に注目してくれ。」

 霧島博士が、注意するべき衛星を特定する。


 ううむ・・・だが・・・赤く表示されるって・・・、見回した限り俺が見ている前方画面には一つも赤い点など見当たらない・・・、どこにあるというのだ?


「あった・・・、円盤の後ろモニターの左上方に一つあるよ・・・。」

 阿蘇が自分の持つコントロール装置を持ちあげて、俺に画面を見せてくれる。

 すぐに後方モニターを前面に切り替えて、阿蘇が言う点を確認してみると確かに赤く輝く点が表示されている。


「どれどれ・・・・。」

 すぐに後方へ円盤を移動させながら、その点をズームアップしていく。


「赤い点を見つけたら、その点にマウスの矢印を持って行ってみてくれ・・・、するとWeaponと表示されるはずだ・・・、つまり武器を搭載しているわけだね。」


 霧島博士に言われるがままにマウスカーソルを持っていくと、確かに武器表示がハイライトされる。

 ううむ・・・さすがだ・・・、こんな機能があることまで分かるとは・・・すごい・・・。


「実をいうと、前回静止軌道の攻撃衛星を送り返す作業をしたときに、この動作については確認済みだった。

 だが・・・一度にあまり多くのことを要求すると大変なので、静止軌道上の衛星の数はさほど多くはなかったので、全て送り返したという訳だ。」


 霧島博士が笑顔で説明してくれる・・・、まあ、送り返せるものならすべて送り返してしまった方が、よいとの判断だったのだろうが、こちらはあまりにも数が多いので、選択的に行うという事の様だ。


「では、4台しか来てはいないから、また前回のようにフォーメーションを組んで、その枠の中に衛星を入れて送り返そう。

 今回は無停電電源のスイッチをリモートできるようにしておいたから、選択的に移送できるはずだ。


 ただし、周回軌道だから衛星は常に動いているため、こちらもおなじ軌道で動きながら作業を行う必要性があるので、何とか円盤をうまく操作してくれ。」


 4台の円盤とうまく示し合わせながら対象の衛星とほぼ同じ速度で周回を行い、タイミングを合わせて次元移送装置を繋げた無停電電源装置のスイッチを入れて攻撃衛星を送り返す。


 モニター上に色分けて表示されるため、武器を搭載した赤表示の衛星のみを選択的に送り返していったのだ。

 静止軌道に比べて雑多な衛星がひしめく環境には、それほど多くの攻撃衛星はなかったようで、他の4ケ国と交代で2日ほどで処理を終えたのだった。

--------


「ばっばかな・・・、攻撃衛星を全部・・・?

 でっですが・・・、そちら側に送り込んである攻撃兵器は、それだけとは限りませんよ・・・。」


 所長の声のトーンが、だんだんと小さくなっていく。

 最後の方は・・、ただの強がりであってくれればいいのだが・・・・。


「おおっと・・・たった今、世界政府を通じて、フィリピンの行政府から連絡が入ってきましたよ。

 我々は次元を超えて豊かな生活を提供してくれる人々たちに深い感謝の意を持っているし、尊敬しその指示に従う意思も持っている。


 その高度な文明を持つ人々が我々の住む地にいらっしゃることは歓迎できるが、我々が用なしとなって処分されてしまうことは避けたい。

 そのような懸念がある限り、申し訳ないが向こう側世界の住民たちの移住は断固として拒否する。


 つきましては、今回の娯楽施設工事現場への監視として、世界政府に対し部隊派遣を要請いたします。」

 先ほどまで忙しそうに無線連絡を行っていた阿蘇からのメモを受け取った赤城が、その内容を読み上げる。


「なっ・・・なんという事を・・・。」


「まあまあ・・・、これが植民地の住民の総意であれば仕方がない・・・。」

 所長の驚きの声と、それを慰める霧島博士の声がスピーカーに流れてくる・・・、マイクはONにしたままとなっているようだ。


「では申し訳ありませんが植民地の要請に従い、各工事現場に我々の軍隊を派遣させていただきますので、マシンなど近づかせないようお願いいたします。

 代わりに、爆弾は回収させていただきますがね・・・危険ですから。


 工事は継続していただいても構いませんが、ガードマシンは絶対に近づけさせないでください。

 ハンドアームマシンと作業者までは認めますが、地下には当面の間部隊を常駐させていただきます。


 後ほど交代要員も運んできますので、ガードマシンの出撃はご容赦ください。

 恐らく他の植民地でも同様の要請が来ると思いますので、要請あり次第兵を派遣したいと考えております。

 よろしいですよね・・・?」

『カチッ』赤城は一方的にコメントすると、通信ソフトを終了させるよう指示をした。


「筑波に準備をして、1個小隊で倉庫に向かうよう指示してくれ。

 マニラの工事現場の監視業務を命じる・・・、後で交代要員を連れてくると言って置け。」


「はい。」

 赤城に支持され、阿蘇が無線機を使って筑波に呼び掛ける。

 いちいち客室まで行かなくても済むので、無線機があれば楽だ。


「筑波たちが倉庫に入りました。」

 すぐに阿蘇が無線機からの連絡を伝えてくれる。


「じゃあ彼らを転送して爆弾を回収してくれ・・・、起爆装置は起動していないね?」

 赤城が念のための確認をしてくる。


「はい・・・起爆装置どころかモーションセンサーなどのセンサー類もスイッチは入っていませんよ。

 もし入っていたら、先ほどのマシンとの戦いで爆発したはずです・・・。」

 あくまでも脅しと思っていたので、起爆装置どころかセンサー類も入れていない。


 そんなことしていたら、マシンとの空中戦だってすごく制限された戦いになっていたはずだ・・・、そういえば向こう側の連中は、センサー有効範囲を計算しながら戦っていたのだろうか?


「だったらよかったよ・・・、じゃあ筑波たちを送ってくれ。」


「はい。」

 倉庫内をスキャンさせて、そこにいる部隊員の座標を確認すると、マークしておく。


 円盤の高度を10mに変更してから工事現場の地下空間に部隊を転送する。

 その後すぐに爆弾と次元移送装置を転送ビームで回収する。

 すぐにダバオへ向かい、第3小隊を送り込み爆弾を回収、バギオでは第1小隊を送り込んで爆弾を回収した。



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