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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第7章
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隣国支援

3 隣国支援

「おはよう・・・、今日は中国奥地の隠し農場へ向かわなければいけないみたいだよ。」

 翌朝、自警団本部についた早々、阿蘇が本日の出張先を連絡ボードを見ながら読み上げる。


「えっ・・・?だって中国には中国用の円盤があるはずだろ?

 それとも、整備不良か何かで動かなくなってしまったのかい?」


 お隣の国である中国は当然と言えなくもないがコントロール装置を配布してあり、特攻作戦で巨大円盤の奪取に成功している国だ。

 自国の農場に関しては自国の円盤で十分対応可能なはずだ。


「いや・・・だって中国は広いからね・・・、隠し農場だって発見されただけで30ケ所もあって、そのすべてまでは手が回らないみたいだよ・・・。


 何せコントロール装置の使い方だってままならないから、円盤操作もさほどうまくない様子だし、君が操縦すれば国内4ケ所の隠し農場だって半日と少しで行き来できるのだが、どうやら他国では1日で3ケ所が限界と言われているらしい。


 中国は中国で近隣諸国の隠し農場の捜索の協力をしなければならないので、遠方の農場まではとても手が回らないから、応援の要請が来ているようだ。

 中国奥地に点在する農場へ捜索隊の送迎をする。」


 阿蘇が本日の目的地と中継先の座標が記入された用紙を受け取り、無線機を入れたリュックのポケットに収納する。


「はあ・・・?お隣の国のお手伝い・・・?

 そっそんなこと始めたら、他の地域の分まで手伝ってくれって要請が来るんじゃあないのかい?


 何も俺の円盤操作がうまいわけでもなんでもなくて・・・、あんなものただ単に座標を入力するだけだからね・・・、目的地に着いたらすぐに次へ行けるよう、円盤内でも休むことなく常に次の目的地チェックと、座標入力を欠かさないだけだぜ・・・。


 しかも複数の目的地があるときはどの順路を通れば効率的か、常に地図とにらめっこしながら最短ルートを検討しているだけだ。


 そうして何とかノルマを早く切り上げようとしているのに・・・、頑張ったら頑張っただけさらに割り振られるんじゃあ、もうこの先頑張り甲斐がなくなってしまうよ。」

 何という事だ・・・、少しでも早く終わらせようと一心不乱で頑張ってきたことがかえって裏目に・・・。


「まあまあ・・・僕だって君が円盤操作しているときに、ほとんど休憩もとらずにぶっ通しに操作しているところはずっと見ているから理解しているさ。


 それにマシンと違って円盤の方の操作に関して、技術的関与の部分は少ないというのも理解はしているよ・・・、といっても僕なんかじゃあ、円盤を目的地まで動かすだけでもいちいち悩んでしまうとは思うけどね。

 君が頑張っているのは僕も理解はしているんだけど、他の国の担当者だって頑張っているはずだよ・・・。


 そもそもコントロール装置の表記は基本的に日本語だからね・・・、それは当たり前の話で、何せ君がいた東京の地下基地のコントロール装置をこちらの次元に運び入れたわけだから・・・・。


 マルチ言語の装置だから、一応中国語表記に設定変更を君がしてくれたみたいだけど、ヘルプの大半は日本語だし、向こうだって大変なんだと思うよ・・・だから応援要請をして来たら文句を言わずに引き受けようよ。

 こう言ったことはお互い様だから、今度こちらが困ったときには向こうが助けてくれるさ。」


 阿蘇は俺が円盤内で休憩もとらずに作業しているのを見ていると言っているが、阿蘇だって円盤内では基本操作方法を手順化するため、俺の操作手順を8ミリに収めたりしているから、休みがないのはお互い様なのだ。

 それなのに、彼は文句ひとつ言わずに理不尽な要望にも応えようとしている。


 確かに、まったくの未知なる技術の巨大円盤を操作するのだ・・・、手順一つ間違えただけでビルや山に激突したりしては大変なので、慎重な操作が望まれる。

 各国語で操作ガイドを作成するために、基本となる俺の操作を記録してそれを各国語に翻訳して都度配布しているのだ。


 ここの環境が恵まれているのは認める・・・、だが、それなら各国の地下基地を見つけてそこからコントロール装置と備品を持ち帰るよう、地下基地捜索を真剣に行えばいいのだ。


 そうすれば自国語のコントロール装置が手に入るわけだ・・・、だが、そう簡単にはいかない・・・、何せ地下基地だからな・・・、どこに穴を掘って作っているか・・・全くわからないわけだからな・・・。


 東京の地下基地だって、俺がたまたまそこから出てきたからわかっただけで、探して簡単にわかるものとは言えないわけだ・・・、隠し農場をα線を頼りに捜索したのとはわけが違う・・・。


 地上の強奪基地の近くにあることはまず間違いはないわけだが・・・、日本にだって大阪や名古屋など大都市には強奪基地がほかにもあったのだが、それらの地下基地はいまだに見つかってはいない・・・、つまりそれだけ見つけることは難しいのだ。


「はいはい・・・分かりました・・・。じゃあ行こう・・・。」

 基地前のグラウンドに浮かべてある巨大円盤に乗り込むと、すぐに行き先座標を入力して中国奥地へと向かった。



「ええー・・・、あんなに荷物があるのかい?

 一体何日間くらい滞在して、がれきの調査をするつもりなんだい?

 ふつうは3日程度で長くても1週間くらいだろ?それともそんなに大ぐらいばかりという事なのかい?」


 待ち合わせ先へ到着して、調査隊と一緒に持っていく荷物の多さに驚く。

 人はある程度の大きさと人数を入力すれば円盤へ収容できるが、持っていくものに関しては個別に入力が必要だ。


 荷物の大きさと重さを設定していかなければならないのだが・・・、持ち込むリスト表を見る限り、揃えておいてくれればいいのに段ボール箱は重さも大きさも異なり、更に一抱え以上はありそうな大きさのものが数百個はあるため、個別入力だけでも相当な時間が必要となる。


「これでも随分と絞ったらしいよ・・・、なにせ円盤で運ぶわけだからどれだけでも持っていけるはずだと、当初主張していたようだね。

 せめて荷物の大きさと重さは揃えるよう要求したんだけど、そんな面倒なことはやりたくはないと突っぱねられた・・・。」


 阿蘇がため息交じりに答える。

 他の地域もこれだと、確かに一つの隠し農場へ調査隊を送り届けるだけでも、ずいぶんと時間を使ってしまうな。


 日本とその担当区域に関しては、今のところは荷物の多さもそれほど多くはないし、また全て同じ大きさの段ボール箱に詰めてくれるし、重さの違いもせいぜい3種類までに調整してくれている・・・、みんな物分かりがいいので作業が速いという事なわけだ。


「だって・・・いくら荷物を積めるからって、こんなには必要ないはずだろ?

 遊びに行くわけじゃあないから、数日分の食料とせいぜい医薬品だけ持っていけばいいのじゃあないのか?」

 そもそも荷物が多すぎるのだ・・・、一体向こうで何をしたいのだ?


「いやあ、彼らは長期間現地に留まるわけだから、それなりに荷物は必要となるさ・・・、なにせ現地には人の宿泊施設などはないわけだからね。


 彼らは調査隊というよりも農業従事者たちさ・・・、向こうの農場で酪農や田畑を耕して農場経営をする家族たちだね。」

 阿蘇がとんでもないことを言い始める。


「農場経営って・・・、向こう側世界の隠し農場を引き継ぐという事なのかい?」


「ああその通りさ・・・せっかく農場として開墾されている所を放置してしまうのはもったいないからって、そのまま人を送り込めば、家畜も移動させないで済むという事で・・・家畜はそのまま残されているらしい。


 日本だって同じ考えを持っているけど、まずは現地へ行くための道の確保が先決という事で、ある程度道路整備をしてから、移住者を募る計画がされていると聞いたよ。

 半年から1年程度であれば、放置しても何とか復帰可能だろうという目論見の様だね。


 恐らく他の国でも同じような計画だろう・・・お隣の国だけは、もうそのままダイレクトに人を送り込んで、道の整備は同時進行という事らしい。

 まあ、円盤があるから緊急時の対応は可能だしね。」


 阿蘇は分厚い冊子を手に持ちながら説明する。

 円盤白書・・・政府が発行した、向こう側世界から奪取した巨大円盤や、高品質の家畜や農作物をどのようにこちら側世界の発展のために寄与させるのかを取りまとめた、経済書だ。


 世界規模の特攻作戦を成功させたにもかかわらず、向こう側世界との関係に変化を見いだせないことに対して、焦った政府が何らかの価値を見出すために、これからの展望はこうなっていますよという事をまとめたものだ。


 俺にも配布されたが、あまりにも分厚すぎるわ活字は小さすぎるわで、最初のページを開いただけで読むのをやめてしまった・・・、今でも自警団事務所の俺の机の引き出しの中に、ほぼ新品状態で保管してある。


 奴はそれを熟読して、今後の俺たちの職務に関して色々と予想していたのだろう・・・、こういった要求も奴にとっては想定内なのだ。


 まあ確かに一見無茶なようにも見えるが、いちいち家畜や種もみなどを移動させて保管しておく必要もなく、今ある施設をそのまま継続利用するだけだから、合理的と言えば合理的だ。


「じゃあ、これまでの3ケ月間はどうしていたんだい?

 まさか家畜たちをそのまま放置していたわけじゃあないよね?」

 当たり前だが、唐突な疑問・・・。


「これまでの3ケ月間は軍の調査隊が常駐して、農場管理も行っていたと聞いている。

 現地調査も終わって、これからは本格的に農場経営という事になり、希望者家族が向かうわけだね。

 だから宿泊場所もテントという訳にはいかず、家を建てるつもりのようだから建築資材が多いし、家具なども一緒に運び入れるという事だね・・・。


 食料に関しては種が混じると困るから野菜などの生ものは持ち込み厳禁として、レトルトや缶詰などの加工食品のみにしてある。

 まあ、農場で肉や野菜は十分に手に入るからね・・・。」


 阿蘇が配送リストを眺めながら告げる。

 おおそうか・・・だったらこれだけの大荷物だって仕方がない・・・、いうなれば引っ越しなわけだからな。


「分かった・・・だがこんなに重さや大きさが異なる様々な資材を入力して運び入れることは、ほぼ不可能だ。

 いちいち計測して表にまとめ、入力していくだけで下手をすると何日かかかってしまう。

 仕方がないから、マシンを利用させてもらうよ。」


 俺はコントロール装置を使って、円盤内のハンドアームマシンを起動させ、眼下の物資スペースを指定する。

 こうすることにより、マシンはそれぞれ運ぶものの大きさと重さを個別に認識し、ハンドアームでつかんで円盤内へ運び入れてくれるはずだ。


 人に関しては子供もいるようなので2回に分けなければならないが、ある程度大きさと体重を入力すれば、転送ビームでの収容が可能だ。


「そっ・・・そんなことが可能なのかい?だったら、この荷物のリストを個別で入力していかなくても大丈夫という事なのかい?」

 阿蘇が俺の操作画面を見ながら、驚いた表情を見せる。


「そうだよ・・・運ぶもののある場所を指定しておけば、後は円盤の人工知能で勝手にハンドアームマシンをコントロールして、円盤内へ運び入れてくれる。

 もともと市場などから食料や物資を強奪していたのだから、それと同じことをやらせるだけさ。


 降ろす時だって個別にスキャンさせてもいいのだが、細かいものや大きさがそろっていないものなどはマシンに認識させた方が、はるかに手際よく搬出できるさ。」


 俺は当たり前のことを当たり前のように告げる。

 円盤内でマシンとの戦闘になったが、捕縛装置で捕縛しただけなのでマシンに損傷はない・・・動くわけだ。


「そっ・・・そうだよね・・・確かに・・・、まったく思いつかなかった・・・、やっぱり君はすごいよ。

 ちょっと申し訳ないが、もう一度設定からやり直してくれないか?

 手順を撮影して各国に配布するよ。」


 阿蘇はそういうと、俺が再設定してハンドアームマシンを起動させたうえで、移送させる物資があるエリアを指定してから自動制御に切り替えるまでの手順を、コントロール装置のカメラで記録し始める。

 もちろん・・・、円盤を所持している国へ配布するためだろう。


 まあこれで応援に行く回数が減ってくれるのであれば、ありがたい・・・。


 中国奥地の農場へ移住する家族を送り届けると同時に、駐在していた軍隊を引き揚げる。

 長い駐在を終えた軍の人たちからは感謝され、お礼にまたまたブランドの肉やコメなどを頂いた。

 このような作業をこの日だけで3ケ所こなし、基地へと戻る。


「じゃあ今日の分のレポートを仕上げてから、やってもらったハンドアームの操作手順を各国に配布しておくよ。

 どこの国でも隠し農場への建築資材の搬入に頭を悩ませていたみたいだから、これでずいぶん助かると思うよ。

 道路整備だって両側から始めれば半分の工期で済むわけだからね。


 ブルトーザーやミキサー車などは円盤で回収可能だけど、生コンの袋とか砂利とか鉄筋とか個別に設定していくと大変だからね。

 もしかすると、休みを許可される日も近いんじゃないかな?」

 阿蘇がうれしいことを言ってくれる。



「ただいまー・・・。」

 阿蘇の言葉を胸に、少しうきうきした気分で帰宅する。


「おかえりー・・・、ずいぶんうれしそうだけど・・・休みが取れたのね?

 そうなんでしょ?いつ?何日間?」

 アパートのドアを開けたとたんに、朋美が嬉しそうに笑顔で抱き着いてきた。


「いっいやあ・・・、それが今日は赤城参謀に会えなくて、休みのことは言い出せなかった・・・。

 明日は必ず、赤城参謀を探してでも休暇を申し込むから、もう少し待ってくれ。」

 俺の笑顔に反応して朋美が勘違いしてしまったようだ・・・申し訳ない。


「ええーっ・・・、じゃあどうしてうれしそうな顔しているのよ。」

 朋美が赤く染まった頬を膨らませる・・・ううむかわいい・・・。


「ああ・・・・、今日はお隣の国の手伝いをしたのだけど、他国でどうにも作業が停滞している理由が分かったようなんだ・・・、これで飛躍的に円盤の活動が促進されれば、休みがもらえる日も近いんじゃないかと・・・。


 それと・・・今日は隠し農場へ人の送り迎えをしたので、お礼にとまたまたブランド肉やコメなど頂いてきた。

 阿蘇と山分けにしたが、それでも大量だ・・・これを園へも配ることにして、とりあえずはこれで我慢してもらいたい。」

 そういって大量の肉が入ったクーラーボックスを手渡し、もう一度車へ戻って米袋を取ってくる。


「えー・・・仕方がないわねぇ・・・、でもちゃんと明日には赤城先生に話をして、いつ休みが頂けるか確認してきてよ。」


「はい・・・分かりました。」

 土産の肉のおかげで、朋美の機嫌も少しはよくなったようだ。



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