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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第6章
81/117

操作

  11 操作

「ちょ・・・ちょっと待ってください・・・、いきなり人はちょっと怖いです・・・。」


 よく考えてみたら円盤どころか転送ビームだって、俺がいたころの世界で一般的な技術ではない。

 理由はわからないが、異次元世界で成し遂げている技術は、驚くほど未知のハイテクなのだ。

 仕組みはわからないし、下手に操作して円盤下部が開かずに衝突してバラバラになってしまったら困る。


「おおそうか・・・じゃあ、下と上で転送実験でもするか?

 だが・・俺たち自身がこうやって安全の乗り込んでいるわけだから、そのままでも大丈夫な気もするがね。」

 赤城は俺の意見は尊重してくれるようだが、それでも気の回しすぎとか慎重すぎのように感じているのかもしれないな・・・。


「そうはおっしゃいますが・・・、恐らくこれが円盤内に収容したり排出したりするプログラムなのでしょう、これにもWとLとHとKGとPを入力するようになっています。


 恐らく幅と奥行と高さと重さと数を入力して、転送するものの識別をするのでしょうが、KGは重さの単位ですからいいのですが、L・W・Hに関しては長さであることはわかりますが、単位が明確ではありません。


 成牛や豚の群れを収容したわけなので、大きさや重さに関してはアバウトな面はあると考えますが、メートルだと思っていてミリだったりしたら何が運ばれてくるかわかりませんし、体の一部だけ吸い上げようとするなんてことになったら、そりゃ大変です。


 ですので・・・、まずは試験をしてみたいと思います。」

 未知の技術なのだ・・・、慎重に越したことはない・・・と俺は考える。


「ふむ、そうか・・・阿蘇よ、霧島博士にお願いして、転送用のサンプルを準備するように伝えろ。」


「はい、分かりました・・・。

 霧島博士・・・阿蘇です・・・。」

 すぐに阿蘇が通信を始める。


「はい、分かりました・・・、新倉山君・・・、まずは完全に視認可能な高さにするようにって・・、座標はそのままでいいから、Hに30を入力するように言っている。

 その後で、幅0.5で奥行きが0.7、高さが1.3に重さが1で数量も1で入力してくれって言っている。」


「了解!」

 阿蘇の言った通り入力して、転送ボタンを押す。


「木製の椅子が転送されてきました・・・!」

 すぐに通路の向こう側から、叫ぶような声が聞こえてくる。

 倉庫の様子を見に行ってくれた奴からだ・・・。


「長さの単位はメートルのようだな・・・。」

 赤城が満足そうにつぶやく。


「おいっ・・・八甲田!・・・おいっ・・・、寝ています。

 転送と同時に、倉庫内に催眠ガスが散布されるようです・・・。」

 するとすぐに通路の向こう側から、別の叫び声が・・・。


「おお・・、試験してみてよかったようだな・・、念のために動物実験もしておいてみるか?

 おい、阿蘇、霧島博士にお願いしてみろ。」


「分かりました・・・、ちょっと待っていてくれと言っています。」



 その後、催眠ガス散布のオプションを解除する設定を見つけ、マウス実験を行って生体の安全を確認したのち、霧島博士を転送した。

 マウスを入れていた檻ごと転送されたので、ものを入れた容器の転送も可能という事が分かったと霧島博士が喜んでいた。


「おお・・・これが円盤の操作室か・・・、今は新倉山君がコントロール装置を接続しているんだね?

 ううん・・・、どのような操作手法なのか・・・。」


 霧島博士はマイコントロール装置(霧島博士の研究用に割り当てられたコントロール装置)をもって、手持無沙汰そうに集中制御室のパネルの前で、うろうろと歩き回る。


「制御用のカード差込口なら、スロットが4つありましたから、霧島博士の分も差し込めますよ。」

 本来なら俺の接続ケーブル用のカードを引き抜いて、霧島博士にどうぞというのが筋なのだろうが、幸いにもまだ空きスロットが3つもある。


 俺のコントロール装置を接続したままでも、霧島博士のコントロール装置を接続することは可能だ・・・といっても、接続用のケーブルを持ってきていればの話ではあるのだが・・・、ケーブルは10本あって7本配布して俺が一本使っているから、残りは2本あるはずなのだ。


「おおそうかね・・・、どこに差し込めばいいのだね?」

 霧島博士が接続ケーブルをポケットから取り出しながら、俺に問いかける。

 よかった・・・、「ここです。」すぐに、カードのスロットを指し示し、挿入していただく。


「一旦ログオフしてください。

 コントロールに参加するには、この円盤用の管理者IDでログインしなおす必要性があります。」

 霧島博士のコントロール装置をログオフしていただき、管理者IDとパスワードを俺が入力する。


「これがパスワードです・・・。」

 すぐに、管理者IDとパスワードをメモ書きして、霧島博士に手渡しておく。


「おおそうかね・・・ありがとう。

 でもさすがだね・・・、こんなすごい最新兵器をまんまと奪い取ってしまうのだから・・・。

 それはそうと・・・、この白く四角いマークは何の表示だね?上にV字マークが描かれているが・・・?」


 霧島博士がコントロール装置の画面を見ながら、俺に問いかけてくる・・・白い四角・・・?何かと思ったら、封筒の図・・・、という事はメールだ・・・、すぐにダブルクリックしてみる。


 ううむ・・・先ほど警報のアイコンを見つけたことで安心してしまって、その他のアイコンに注視していなかったようだ・・・、恐らくずっと前から連絡しようとしてもできなかったので、メールを送ってきていたのだろうな。

 すると、無線、音声プログラム、インストールしてください・・・、とテキストメッセージが画面に表示される・・・。


 なんのこっちゃと思いながらヘルプ画面を起動し、無線、音声プログラムと入力してみると、ファイル名に下線付きで表示される。

 すぐにダブルクリックすると、インストールが開始された。


「このファイル名をダブルクリックしてください。」

 すぐに霧島博士にもインストールしていただく・・・、受信ファイルではないようだから、ウィルスファイルという事はないだろう。


「新倉山さん?あなたですよね・・・、大変なことをしてくれましたね・・・。

 今回の出来事は、そちら側の世界からの宣戦布告と受け取ってよろしいという事ですよね?」


 インストールが終わるとほぼ同時に、聞きなれた声がコントロール装置を通じて聞こえてきた。

 通信のプログラムがマシンと円盤では異なるのだろう・・・、まあ、20年以上も世代が違うのだから、やむを得ないか・・・。


「所長・・・、お久しぶりです、新倉山です。

 大変申し訳ありませんが、こちら側の世界の人たちは、そちら側の世界に従属するつもりはありません。

 ですが、あまりに強烈な火器を示されたものですから、対抗できるまでは準備をしておりました。


 今回ようやく、円盤内へ潜入する算段が付きましたもので、潜入してコントロールを奪い取りました。

 これで、そちら側の世界から送り込まれた兵器である円盤は、全て廃棄したか乗っ取ったはずです。」


 先ほど阿蘇が他国状況を無線で確認し、俺が指示を出したおかげという事もないだろうが、7ケ国すべてで円盤の奪取に成功したという連絡が入ってきたと、赤城に報告していた。

 さらに牛のはく製に爆薬を詰めた爆弾の送付にも成功し、多くは円盤が成層圏に達した時点で自爆させたはずだ。


「そうですか・・・どこの国の円盤とも連絡が取れなくなったようで、全て破壊されたものとばかり推察していましたが・・・、乗っ取られた円盤は1機だけではないというわけですね。


 そうなると所有するコントロール装置は、複数台あるという事ですか・・・?

 一体どうやって?

 あなたが運び込んだコントロール装置の予備を破壊して、安心していたのが失敗だったようですね。」


「あっ・・・ああ・・・、そうですね・・・、コントロール装置は複数台ありますよ・・・。」

 ううむ・・・余計なことを言わない方がよかったか・・・、下手に詮索されてしまうと、外国にあるはずの地下基地への潜入が難しくなるかもしれない。


「あなたがお持ちのコントロール装置をベースに、そちらの世界の技術力でコピーなさった訳でしょうか?

 そうであれば、相当に高度な技術力と評価せざるを得ない・・・。」


「あっ・・いやあ・・・、どうしてコントロール装置が複数台あるのかは、秘密です・・・。」

 とりあえず、見当違いな推測をしてくれているうちにお茶を濁しておく。


「まあいいでしょう・・・、事実は事実でしょうから・・・。


 さて、別にそちら側の世界との通商をお断りされたところで、こちらにとっては痛くもかゆくもありません。

 すでにご承知おきのように、こちら側の世界の植民地で生産される食料及び工業製品だけで、十分に我々は生活していけますからね。


 食肉の加工や日常製品などの供給に関しては、こちら側の世界からお願いしたことですので、不要になったからといって、ではやめますというのではあまりにも失礼と考えて、手間がかかるが仕方がないとして継続していただけのことです。


 本来なら円盤ごと引っ込めて引退でもよかったのですよ。

 それをただ惰性で引っ張っていたから、管理もずさんになってほころびが生じたという事ですよね。

 反省しております。」


 冷ややかなコメントが返ってきた・・・、怒り心頭といったところだろう。

 なにせ植民地化された地域での収穫だけで、向こう側の世界の生き残りが生活できるという事は強がりでもなんでもなく、まぎれもない事実であろうからだ。


 食肉の品質の良さとファッションセンスの高さを評価され、高値で取引されるから少しでも多くの原材料供給を望んでいたのは、こちら側の世界の方だ。

 加工の委託の必要性がなくなっても、仕方なく継続していたことがあだになったのでは、浮かばれないだろうな。


「そうはおっしゃいますが、植民地化された地域だって我々が巨大円盤を奪い取ったという報が伝われば、そちら側の世界からの独立を宣言することだって考えられますよ。

 もういい加減降伏された方が、よろしいのではないですか?」

 何と答えていいものか考えあぐねていたら、赤城が俺の背中越しにコメントする。


「降伏・・・?そんな必要性は、まったく考えておりません。

 何機の円盤を乗っ取ったのか知りませんが、その円盤で押しかければ植民地を解放できると思ったら大間違いですよ。

 こちら側の世界でも最新鋭と言えるようなセキュリティシステムで守られていますからね。」


 すぐに強気の発言が返ってくる。

 ま、そうだろうな・・、奪ったばかりで操縦にも慣れていないし、第一俺にはどの様な火器がこの円盤に積まれているのかすらわからない。


 なにせ植民地化された国々が円盤に破壊されたところは、海外ニュースで知っただけで、実際にどのような攻撃を円盤がしたのか、あまりよくは知らないのだ。


「植民地化された地域を攻めに行くつもりはありません。

 そんなことをしても、こちら側の世界の人間どうしで殺しあうようなものです。

 そんな不毛な戦いはごめんです。


 それよりも、その地域の人たちに訴えて、自主的な独立を支援していくつもりです。」

 まあ、どうせ攻め込むつもりはないはずなので、俺が代わりにコメントしておく。


「そうですか・・・、無駄な努力と感じますがね・・・。

 今回の件に関して、何らかの報復をするかどうかは、もう少し話し合ってから決めます。

 認識としては通商条約破棄の宣戦布告という事ですね・・・。」


「あっ・・もしもし・・・、まだ伝えていないことが・・・。」

 しかし、このコメントを最後に無線は切れてしまった様子だ。


「あーあ・・・、牧場に残された家畜や作物をどうするのか、聞きそびれましたね。

 向こう側の世界は、まだ円盤を持っていますかね?」

 霧島博士の方に振り返ると、笑顔で首を横に振られてしまった・・・、そうだろうな、分かるはずもない。


「ふうむ・・・弱ったね・・・。

 まあまずは円盤を奪取した7ケ国に連絡して、移送器を円盤下部に垂らした状態で、衛星軌道まで上昇するよう指示を出してくれ。」


 すぐに霧島博士から阿蘇に指示がでる・・・、ううむ・・・向こう側世界との通信が終わって、これで本日の業務終了と考えていたのだが甘かった。


「では、座標をそのままにしてHに2メートルと入力をする・・・。

 ようし、外の連中に円盤の下に無停電電源装置を接続した移送器をしっかりと括り付けるよう、無線で指示を出してくれ。」

 今度は霧島博士の研究所スタッフ宛の指示がでる・・・いったい何が始まるのだ?


「OKのようです・・・。」

 阿蘇が無線機の前で大声を発する。


「そうか、ようし、では成層圏へ上がるぞ・・・。」

「ちょ・・・ちょっと待っていてください・・・。」

 成層圏と聞いて、思わず一旦停止をお願いする。


「どうしたんだい?この円盤の構造を見る限り、成層圏どころか惑星間飛行だって可能とみているよ。」

 霧島博士が怪訝な表情を見せる。


「ちょっとトイレに行かせてください・・・」

 重力があるうちに、トイレがあった方へと駆け出す。


「おおそうか・・・じゃあ、皆も用足しを済ませておくといい。」

 俺の背後で霧島博士が笑いながらコメントし、トイレ休憩となった。



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