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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第4章
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情報の宝庫

9 情報の宝庫

「実際にマシン操作手順に従い、マシン操作を試してみた。

 もちろんここにはマシンがないので、何も動くことはなかったがね・・・、マシンコントロール用の信号が装置から出ているはずだから、あらゆる周波数帯で電波を拾ってみた。


 すると、かなり高い周波数レベル帯で受信することができた。

 この周波数帯は、マシンで強奪行為が行われているときに受信された意味不明な信号と同一の周波数帯だから、ほぼ間違いがないだろう。


 一見すると音声信号でも映像信号でもなく何の意味もない信号だが、君が言っていた通りデジタル信号と考え、各操作に値する信号を拾ってみることにした。

 もちろんここにはデジタル通信装置などないので、受信はあくまでもアナログで行い、その信号を解析する。


 うまくいくかどうかわからないが、潜水艦のソナー担当者に音声解析を行わせる予定だ。」

 霧島博士はマシンコントロールプログラムを起動させ、ハンドアームマシンを操作するコマンドをいくつか操作して見せた。


 俺はここまで細かく扱い方を説明はしなかったから、おそらく昨晩取説を読んで取得したのだろうと思われる。

 ほとんど寝ずに作業していたと見えて、目が充血して真っ赤だ。


「すごいだろう、ハンドアームマシンとガードマシンか?これらの取り扱い説明書も書き写し済みだ。

 これから各国語に翻訳して、マシンの図面とともに世界中に配布予定だ。


 もちろん君が心配している通り、向こう側の世界にはこれらの資料を手に入れたことや、東京基地のハンドアームマシンが無事であったことなど、伝わることがないように暗号で送信される。

 操作方法がわかると、対抗手段も浮かぶかもしれないからな。


 あと、マシンの構造図から弱点など予想できないか、これから検討予定だ。」

 感心しながら霧島博士が操作する様子を眺めていると、やはり目を真っ赤に充血させた赤城がやってきた。

 2人して昨晩は徹夜だったのだろう。


「大したものですね、俺なんかコントロール装置の中に、操作手順書が保存されていることすら知りませんでした。

 ましてやマシンの図面まで・・・、考えてみれば、このコントロール装置だけで独立して機能させることができるよう設計されているようですから、当然といえば当然のことですよね。


 俺が今まで考えもしなかっただけで、言われてみればもっともといった感があります。

 関数電卓といい、道具というものは、やはり使うべき人が使うとその機能が発揮できるということですね。

 まだ調べきれていない情報があるかもしれませんから、もうしばらくコントロール装置は、預けて置きましょうか?」


 霧島博士がコントロール装置を使えば、俺なんかよりよほどこの世界の役に立てることができそうな予感がする。


「おおそうか・・・、ちょ、ちょっと待っていてくれ・・・。」

 すると赤城は急いで霧島博士のもとへ・・・。


「いや・・・聞いたところによると、君はハンドアームマシンの操作にさほど慣れていないから、練習予定だったのだろう?

 だったら、持ち帰って練習した方がいい。


 その方が、強奪行為を1度でも2度でも阻止できる可能性がある。

 向こうの世界側でも強奪行為への妨害は構わないと言っているのだからな、正式な戦闘行為として行うがいい。


 こちらの世界の兵器では、残念ながら今のところは対抗兵器など見当たらん。

 そりゃバズーカ砲など強力な火器を用いれば話は別だが・・・、あれはこちら側の世界に優秀な狙撃手というか、扱いに慣れた兵士がいたから行えたことだ。


 ふつう街中であのようなものを振り回せば、こちら側の被害の方が甚大となる。

 むやみに抵抗して犠牲者を増やしてはかなわないから、君の扱うマシン以外では当面抵抗はしないことにする。


 そうはいっても、やはり食料物資をそのまま奪われるのは癪だから、店員やその場にいた客たちが抵抗して多くの犠牲者を出してしまったようだが、今後は一切抵抗しないよう通達をお願いした。


 なあに、対抗手段ができるまでの辛抱だといえば、納得してくれるはずだ。

 これから我々は取得したデータを解析していくわけだが、その過程でもう一度貸してくれということもあるかもしれんが、とりあえずは大丈夫だ。


 それに・・・おおい、ちょっと持ってきてくれ。」

 振り向いた霧島博士は立ち上がると、大声で奥の方へと声をかける。


「はーい、ただいま・・・。」

 すると白衣姿の若い女の子が、台車を押しながらやってきた。


 よく見ると昨日研究所で見かけた女の子・・・、持ってきたものはやはり無停電電源装置と、30センチほどの大きさの方の次元移送装置のようだ。


「移送器と発信装置を向こう側の世界へ送り込んで、向こう側の世界の現状を探ります。

 テレビカメラと発信装置を移送器と一緒に送り付け、それを移送器のそばに置いた中継装置を介して中継すれば、向こうの様子を受信することができるということでしたよね?」


 若い研究員は、台車に乗せた大きな箱からハンディタイプ(とっても一抱えはありそうだが)のビデオカメラと発信装置と中継装置と思しき黒い箱2つに加えて、大きな丸いゴムを取り出し広げて見せる。


「ああ・・・電波も含めて一方通行なので、向こうにも次元移送装置を送り付けて、こちら側の世界へ電波を送信する必要性があると俺は考えている。

 これは・・・風船か何かかな?空中に浮かせて映像を撮影しようということかな?」

 俺は自らの理論・・といっても、あくまでも状況からの推定でしかないのだが・・・を披露する。


「はい・・・、バルーンにヘリウムガスを詰めて、上空に飛ばそうと考えています。

 火力調整で上昇や下降が可能な熱気球も検討しましたが、どうせ向こうに送ってしまうとコントロールできないので、それならば、ということでバルーンを浮かばせることにしました。


 重しを付けて数十メートルの高さまで上げて、周囲の状況を観察いたします。

 東京の中心部で移送すれば、その周囲の様子が見られると考えています。」

 研究員は、撮影道具を箱にしまいながら説明する。


「移送器の送る場所は、どこか人里離れた・・・、できれば海上が適していると、俺は考えている。」

 俺は、探査機の送付場所に注文を付ける。


「それは、どうしてだね?」

 はたで研究員とのやり取りを見ていた霧島博士が訪ねてくる。


「はあ、あくまでも俺の予想にすぎませんが、電波も一方通行ではあるにしても、移送器を通じて送ることができます。

 それと同じように、放射能も送られてくるのではないかと・・・。


 おそらく向こう側の世界では、核爆弾による高熱はおさまっていると考えますが、それでも残留放射能は高いレベルで維持されているのではないかと推定されます。

 なにせ、あのすさまじいまでの破壊力の爆弾が、世界中に爆撃されたわけですからね。


 死の灰と呼ばれる残集放射能は、今でも世界中を舞っているのではないかと考えます。

 ですから、地上へ移送器を送り届けるのは危険と考えています。

 なにせ、高濃度の放射能を送付しかねませんからね。


 ですから少しでも影響が少ないと想定される、陸地から離れた海上に移送器を送り届けて、そこから陸地への中継を行うのがいいと考えています。


 それと・・・移送器につける無停電電源装置ですが、その中間にスイッチ・・・できれば遠隔操作ができるスイッチがいいのですが、なければタイマースイッチでもつけて、向こうからの発信を限定的にするのがよいと考えています。


 なにせ、いったん送り付けてしまうと、こちらからは触れませんから、仮に海上からでも高濃度の放射能が送られてきた場合、何もできずに蓄電池が切れるまで放射能が送り続けられてしまう恐れがあります。

 そうならないように、できればコントロールできる何かを付けられた方がいいと考えています。」


 俺は、移送器を送り込んで向こうの世界の様子を探るといわれて、無停電電源装置を地下基地へ取りに行った時から考え続けていた、安全に行うための施策を披露する。


「おおそうか・・リモートのオンオフができるスイッチを介せば、向こうからの送信を入り切りできるということだな。

 万が一のための安全策というわけだ。


 それと・・、確かに放射能だって電波の一種といえないことはない。

 移送器の移送対象となっても不思議はないはずだ。


 わかった、移送器を送り付ける先を検討することにするか・・・、だがそうなると空気はどうなるのだね?

 空気までも一方通行で送り続けてしまうと、その場所が真空状態になってしまわないのかね?」

 霧島博士が至極当然な疑問を投げつけてくる。


「そのことに関しては俺も悩みましたが・・・空気の成分、つまり酸素分子や窒素分子などに関しては移送対象から外しているとか・・・、を想定しています。


 最初は、こちらから物を送ると、送ったものと同じ大きさの空間がこちら側に送られてきて相殺されるのではないかと仮定してみたのです。

 要するに、移送する空間を入れ替えていると想定してみました。


 そうすると、電波を送っているときに空気が一緒に送られていても、向こうからも同じだけ空気が送られてくるわけですから、問題ないわけです。


 でもそうなると電波なども双方向で通信できるはずなので、現状と異なるわけで・・・、それに双方向に物質を移送させることができるとなると、移送する場所にある物質も微粒子化する必要性がありますよね。


 装置も何もないのにそんなこと起こりうるはずもないし・・・ですので、何か除外する手続きがあるのではないかと・・・、だから、もしかすると放射能などの危険物質は、移送除外となっている可能性も無きにしも非ずなのですが・・・、確認するには実験するしか方法はありません。」


 マシンが破壊されてからの2ケ月間、ただぶらぶらとしていたわけではない。

 こちら側の世界の図書館に通って科学の勉強・・・特に放射能とか分子・原子などに関しての、教材を読み漁ったりもしていたのだ。


 そのうえで考え付いた、次元移送装置の特性がこれなのだ。

 まあ、これが絶対正解というつもりはないが、一応つじつまだけは合わせていると俺自身は満足している。


「ううん、なるほど・・・、少し実験も必要のようだね。

 分かった、検討してみよう。」

 霧島博士が研究員にあれこれ指示をすると、研究員はそのまま台車を押して面会室の奥へと戻っていった。


「さすが向こうの世界の装置に関しては、君の見識が役に立つね。

 自警団へ入団しての初仕事というわけだ。」


 その様子を見ていたのか阿蘇が、嬉しそうに笑顔で話しかけてきた。

 朝迎えに来てくれた時に、入団することを返事しておいたのだった。


「ああそうだったな・・・先ほど阿蘇から報告を受けて、自警団本部には本日付で入団手続きをするよう、指示を出しておいたところだ。

 ここから帰るときに寄って行ってくれ。


 これからもよろしく。」

 赤城も一緒に笑顔で右手を差し出してきた。


「お世話になります、よろしくお願いいたします。」

 俺はそういって深く頭を下げて右手を差し出し、赤城と固い握手を交わした。



「では、クラッチを踏んでギアをローに入れ、ゆっくりとクラッチを緩めながらアクセルを踏み込んでいく・・・クラッチを半分くらい戻した状態で一瞬止めて、そこからアクセルを踏み込んでいくような感じで・・・。」

 サイドミラーがいくつも取り付けられた教習車の助手席で、中年太りの教官が指示を出す。


『ガギャギャギャッ・・・、ガグン』言われたとおりにやったつもりだが、車は弱い衝撃とともに、エンジンが止まってしまった。


「はいやり直し・・・・サイドブレーキを上げてキーを戻し、クラッチを切ってギアをニュートラルに・・・、ブレーキを踏みながらキーを回して・・・。」

 このような失敗に慣れているのか、少しも動じることなく教官は淡々と指示を出す。


 ここは自警団本部・・・といっても、日本国軍本部基地と書かれた広大な基地の中の一角で、自警団本部は日本国軍の東京基地の中に間借りしているようだ。


 阿蘇の説明では、健康な男子は20歳になると徴兵されて、日本国軍に在籍する。

 20歳の誕生日から2年間、軍隊で軍事教育を受けるということらしいが、2年間の兵役を務めた後は、大学へ戻るなり会社勤めするなり自由ということだが、そのまま軍に残る場合は、自警団に配属されるということらしい。


 つまり、兵役を終えた軍人が所属するのが自警団ということのようで、有事の際は自警団が国軍に戻って戦地へ向かうことになるのだそうだが、未知なる次元からの攻撃の際は、国を挙げての反撃とみられないように自警団の肩書を解かずに、対応していたということらしい。


 国軍に徴兵された時の研修期間中に、だれもが自動車免許の取得(希望すれば2輪免許や、大型免許も取得させてくれるらしい)するので、中途入団する俺が免許を持っていないため、特別取得のための教習をさせてくれることになったのだ。


 というか、阿蘇が無理やりねじ込んだらしい。

 なにせ教習所は、基地の中にあるのだ。

『ブロロロロロロッ』ようやく車はゆっくりと、教習所のコースを走りだした。


「はいウインカーを出して減速、ギアをセカンドに入れて・・・ハンドルを切る。」

 教官が次々と指示を出してくる。


 俺はオートマチック車の運転なら何とかこなせるつもりだったが、ギアチェンジしながらクラッチ操作とアクセル操作に加えハンドル操作など、とても追いついていかずに、すぐにエンストを繰り返した。


「はい、じゃあ本日はここまで、また明日来てください。」

 教官に教習のハンコをもらい教習所を後にして、日本国軍本部ビルの5階にある自警団本部に向かう。



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