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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第3章
42/117

希望の灯が消えるとき

14 希望の灯が消えるとき

 とりあえず急浮上させてみる・・が、すぐに周りの4台も一緒に上昇し始める。

 反転して急降下しても、振りきれそうもない。


「逃げようなどと思わないことです・・・、これ以上往生際が悪いようだと攻撃許可を出しますよ。」

 所長が、最後通告とも取れる言葉を告げてくる。


「悪いのですが・・・もう俺は自分たちが生きるためには、他の世界の人たちを踏みにじっても構わないと言った考えにはついていけません。

 だから協力は出来ません。」


 どうなろうと、俺は元の世界の人々に肩入れするつもりはない。

 素直に降伏でもしてくれれば別なのだが・・・。


『ブンッ・・・シュッ』俺は、4台のマシンの中でもとりわけ動きの鈍いマシンを見つけ、そいつの方へ方向転換してみる。

『ガガガガガガッ・・・・』案の定、そのマシンはすぐにマシンガンを発射してきた。


『シュッ』『ガガガガッ』『シュッ』『ガガガガッ・・・ドーンッ』上下に浮いたり沈んだりを繰り返し、銃弾を避け続けていると、後方で爆発音が発生する。

 マシンガンの弾が、仲間のガードマシンに命中して爆発したのだ。


 よしっ・・・同士討ち成功・・・、尚も1台だけ動きの鈍いマシンに向けて、襲い掛かるようにして向かっていく。

『ガガガガガガッ』『シュッ・・・』『ガガガガッ』『シュッ』今度は左右にマシンを振りながら、方向を変えて襲い掛かる。


「阿寒君・・・、攻撃を止めてください。

 やみくもに撃ってしまうと簡単に躱されて、味方のマシンに当たってしまいます。


 君が味方を破壊してどうするのですか・・・、君は撃たなくてもいいですから新倉山さんが逃げようとするのを妨害するだけしてください。

 庭稲さんも同様に・・・、攻撃するのはラッキョウさんだけにしてください。」


 すぐに所長から指示が出る。

 しまった・・・、俺の考えを見透かされたようだ・・・。


 阿寒というのは一番若い学生だった奴だ。

 技術的に劣る訳ではないのだが、若い分すぐに動揺して、それが行動に出やすいタイプのやつで、俺が丸腰にも関わらず、体当たりもじさずと言った様子でかかって行ったものだからパニックに陥ったのだろう。


 庭稲も元居た仲間だった奴だが、余り操作がうまい方ではなかった。

 こいつらをうまく操ることができれば、それこそ同士討ちで数を減らしていく事も出来たはずだが、早々に対応されてしまったのは痛い。


 さすがにラッキョウ相手に丸腰ではきつい・・、いや武器を持っていたからと言って勝てるという訳でもないのだが余計に厳しい・・・、はてさてどうしたものか・・・。

『ガガッ』『シュッ』ラッキョウが後方の死角から銃撃してくるのを辛くも察知して、すぐに反転する。


『シュッ・・シュッ・・・・、シュッゴンッ』そうして数回方向を変えると、阿寒のマシンに体当たりをかます。

『シュッ・・・シュッ・・・ゴンッ』更に反転して庭稲のマシンにも体当たりをかまして、2台を飛ばした方向へ加速する。


『シュッ・・・ゴンッ・・・・ドーンッ』『ドッガーンッ』衝突と同時に自爆スイッチを押す。

 俺のマシンの爆発に誘発されて阿寒と庭稲のマシンも一緒に爆発したはずだ・・・、俺のマシンが粉々になり映像を見られないから確認のしようがないけど・・・。


 スーパーの駐車場であり、建物にも被害はそれほど及んではいないことだろう。

 何より客や店員は全て避難済みのはずだから、人的被害もなしで済んだはずだ。


「どうしたんだね?」

 赤城が真っ黒くなって何も映らないモニター画面を覗き込みながら尋ねてくる。


「はい、あのままいたら破壊されるか捕まっていたでしょうから、自ら進んで自爆しました。

 向こうのマシンも2台爆発に巻き込みましたから、道連れとしては良いでしょう。


 更に別の1台もそれなりの損傷を与えましたからね。」

 満足とは言わないが、それなりに損害を相手にも与えることができたのだ、戦果としてはまずまずだろう。


「ふうむ・・・だが、これからどうするね?」


「はい・・・、マシンは東京基地の物がまだ4台ありますから、それらを接続して次回の襲撃に備えますよ。」

 そうだ・・・無傷で陥落した東京基地には、まだ4台のガードマシンがあるのだ・・・、更にハンドアームマシンだってある。


 もしかすると丸腰のガードマシンより、ハンドアームマシンの方が戦えるかもしれないので、次はそっちで向かって見ることにしよう。


「今日の戦いで、向こうだって以前のようには簡単に強奪が出来なくなったことを認識したはずです。

 こちらの世界の攻撃装置に対しては圧倒的優位さを誇るマシンでも、同じマシン同士の戦いでは、ある程度の損傷が見込まれます。


 こちら側もマシンを1台失いましたが、向こうも多くのマシンを失ったはずです。

 当たり前ですが、向こうの世界では生産工場など機能していないはずなので、マシンなどの数も有限のはずです。


 それはこちら側だって同様ではありますが、同じ機能を持った装置を作り出す事はまだ出来なくても、対抗する装置を作り出す事が出来る、こちら側の世界の方が有利なはずです。

 それには、まだ少し時間がかかるでしょうが、その間は何とか俺が今あるマシンを使って時間稼ぎをしてみますよ。」


 完全とは言えないが、向こうの世界の強奪行為を阻止できたと感じられる、先ほどの戦いに俺はある程度満足していた。

 武器を装備していない丸腰の状態であそこまで戦えたのだから、この先武器装着が許されれば更なる効果が期待できるはずだ。


「ああそうだね・・・、君には本当に感謝しているよ・・・、ただ残念なことに、君が活動できるエリアは、ここ関東に限られてしまうということだね・・・。

 世界中で強奪が開始されてしまえば、関東エリアだけを守っても仕方がない事になってしまうな。」

 赤城は、残念そうに呟く。


 確かにそうだ・・・、世界中の基地はあらかた破壊され更にマシンは再起動できないくらいに分解されたと聞いている。

 中には分解の最中に誤って爆発したものもあったそうだ。(自爆プログラムが作動したと思われる)


 それでも軽微な損傷のものを選別するといっていたが、コントロール装置がなければ操作は出来ないわけだ。

 マシンがあったところで、インターネットなどの通信ネットワークが構築されていないこちらの世界では、遥か彼方の地球の裏側のマシン操作などできるはずもない(さすがに電波が届かないだろう)。


「航続距離がどこまでいけるかを早めに割り出して、行ける範囲であれば他地域の襲撃も対応したいと考えます。」


「おおそうだね・・・、コントロール装置は2台ある訳だろ?

 阿蘇がいるから、阿蘇に操作の手ほどきをしてやってくれないか?

 そうすれば1台は別働隊として稼働できるかも知れんし、武器も装着可能だ。」


 赤城が、突然思いついたかのように提案してくる。

 確かに、こちら側の人間であれば、マシンに武器を装填しても安全という認識なのだろう。


「分りました・・・、但し、操作に関してはさほど難しい事はないのですが、それでも技術の外に反射神経なども必要となって来ます。

 操作を教え込んで他の地域の襲撃に備えるのであれば、うってつけの人物がいますから彼に協力をお願いしてみてもいいですか?」


 そう、俺には一人ゲーマーの心当たりがあった。

 朋美に相談してみなければならないが、本人もゲーマーへの道を望んでいるのだから、恐らくは協力してくれるだろう。


「じゃあ、今日の所はここまでとして・・、後片付けに入るか。」

 突然の襲撃連絡で対応に時間をとられたが、ようやく解放されそうだ。

『キュィーン』などと考えていたら、金属が擦れるような回転音が、どこか遠くから響いてくる。


「あっあれは・・・?」

 阿蘇が指す方向へ目を向けると、遥か上空に浮かぶ黒い点が段々と大きくなってくるではないか。


「マシンだ・・、マシンがやって来ました。

 新倉山君のマシンは自爆したはずだから、あれは敵方のマシンに違いありません。」


「すっ、すぐにシャッターを閉じるんだ。

 基地の中のマシンを守れ。」

 赤城が大声で指示をすると、阿蘇が一目散に基地建物へ駆け寄って行く。


 俺は急ぎコントロールマシンで、他のマシンへの接続へ切り替えを始めようとした。

 ああっと・・・しまった、他のマシンは全てラッキョウ用のコントロール装置に接続したままになっている。


 俺がクーデターを企てた時のままで、こちらの世界での飛行実験では実際に動かすマシンは俺が担当していたマシンだけの予定だったので、他のマシンは全く考慮していなかった。

 すぐにラッキョウのマシンのコントロール装置を起動して、一旦接続を解除しなければならない。


 管理者権限でログインできていれば俺のマシンからでも接続解除が可能のはずだが、今はサーバー接続が叶わずにローカル起動でのアクセスだ。

 これではそれぞれのマシンごとに接続しているコントロール装置から、設定を切り替えて行く必要性があるのだ。


 幸いにも東京基地のマシン全てラッキョウのコントロール装置1台に接続したので、解除も可能なはずなのだが・・・、しまった・・・今日は晴れていたので、基地の外にコントロール装置を運び出して、青空のもとで操作していたのだが、ラッキョウのコントロール装置は基地の中に置きっぱなしだ。


 急いで俺も、阿蘇に続いて基地へと駆け出す。

『シュッ』そんな俺の横を、真っ黒い影が一瞬で追い越して行き、半開きのシャッターをくぐり抜け基地の中へと入って行った。


『ガガガガガガガガガガッ』すぐに基地の中から銃撃音が鳴り響き、同時に鋭い閃光がシャッターの隙間から見える。


「しまった・・・。」

 更に阿蘇は加速して基地へ向かう。


「止めた方がいい・・・、危険だ!」

 俺は手を伸ばして、阿蘇の左腕を掴んで止める。


「ええっ・・・しかし・・・。」

 そんな俺に対し、阿蘇は不満顔で振り返る。


「もう遅い・・・無理だ、下手に中に入って行けば、容赦なく銃撃の的にされてしまうだろう。

 今日の襲撃は、恐らく強奪行為に対して抵抗してくるであろうマシンを、おびき寄せるための罠だったんだ。

 なにせ東京基地には破壊されていないマシンが、少なくとも十台は残っていた訳だからね。


 そのうちの何台が起動されて、対応してくるか確認するつもりだったのではないかな。

 それが俺のマシン1台だけだったので、ある程度安心した。

 つまり俺のマシンさえ破壊してしまえば、こちら側の世界には対抗しうる手段は無くなる、ということだ。


 念のために東京基地に残された他のマシンも破壊してしまえば、こちらの世界で手出しできなくなると踏んだのだろう。

 それよりも・・・。」


 俺は、阿蘇をその場に残すと、そっと基地建物に近づき、中の様子をうかがう。

『ガガガガガガガガガガガッ』『ドーンッ』『ドーンッ』中からは銃撃音に続いて、破裂音が響いてくる。

 マシンガンでハチの巣になったマシンが、次々に爆発して行っているようだ。


『カチッ』『ガラガラガラガラガラッ』中のマシンがシャッターから離れていることを確認すると、コントロール装置でシャッター閉のコマンドを打つ。

 すぐに電動シャッターを、勢いよく閉じることができた。


「どうしたんだね?」

 すぐに赤城も駆け寄って来た。


「もう中のマシンは破壊され尽くしてしまったことでしょう。

 仕方がないのでシャッターを閉じて、敵のマシンを閉じ込めました。

 基地の建物の構造から言って、マシンの攻撃力をもってしても脱出は出来ないはずです。


 うまく行けばシャッターを閉じたことによって、コントロール電波が遮蔽されてしまい、中のマシンはコントロール不能に陥っているかも知れません。

 少し時間が経ってから、そっと中へ入ってみましょう。


 基本的に外部からの侵入を防ぐ目的があるので、シャッターは内部コントロールでしか開けることは出来ませんでしたが、俺のコントロール装置からでも近づけばシャッターの開閉は出来るので、大丈夫です。

 というか・・・、1m以内に近づかなければ操作できないので、マシンの侵入は許してしまいましたがね。」


「おおそうか・・・・、捕獲した1台だけでもコントロール出来るよう設定できるかも知れんな。

 不幸中の幸いと言ったところだな・・・。」


 まだまだあきらめるには早い・・・、何とか対抗手段は残されたとみていいだろう。

 赤城とそんな話をしていたら・・・・。

『ドンッ』強い衝撃音と共に、地面が揺れた・・・地震か?


「ううむ・・・・、恐らくマシンが自爆したのではないかな?

 コントロールを失うと自爆するよう設定していたのだろう・・・・、用意周到な相手のようだね。」


 赤城は、内部からの衝撃により外側へ大きく膨らんだ、丈夫なはずのシャッターを見ながら、あきらめ顔で呟く。

 内部爆発で膨張した空気により、一気に押し広げられシャッターが変形したのだ。

 うーん・・・、わずかな希望さえも全て打ち砕かれてしまった気分だ。


       続く



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