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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第2章
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第4の選択肢

少々中断しましたが、連載再開します。ただし、いまだに先の見通しがついていない手探り状態です。休み休みとなるか・・・。

1話 第4の選択肢

 あれから、どれくらいの時が過ぎたのだろうか・・・、ロッカーに保存しておいた食料は既に底をつき、空腹で意識はもうろうとしている。


 3週間分はあるだろうと踏んでいた食料だったが、異次元世界から攻撃を受けて地上が破壊された時に自暴自棄になってしまい、カップめんやレトルト食品など、次々と袋を開けて床にまき散らすと言う異常行動をとってしまったため、1週間分ほどは無駄に廃棄してしまったというのが実情だ。


 今は乾麺など、まだ食べられそうなものを見つけては拾い食いしている有様で、これ以上は持ちそうにない。

 女性たち含め他メンバーのロッカーも開けてみたが(不審物を持ち込ませない様定期的にチェックすると言うふれこみで、鍵はかけられないようになっていた)、男たちのロッカーはほぼ空で、期待していた女性陣のロッカーも、小さな菓子袋が1つくらい入っていたのみであった。


 これから俺にできる事の新たな1つが浮かんだが・・・、それは行わないことにしようと決めた。

 そう・・・、俺の目の前のメモ用紙には、3つの行動について記載されている。

 いわゆる、これからするべき行動の選択肢だ。


1.何の望みもないことに失望して、直ちに命を絶つ若しくは食料が無くなり次第自殺する。

2.一か八か、時限移送装置で向こうの世界へと旅立つ。

3.とりあえず、食べ物がある1週間は生きて、これまでの事を反省する。死ぬのは自然に任せる。


 なにせ、地上は恐らく核爆弾の影響で、今でも相当な高温だろうし、例え温度が下がっていたとしても高濃度の放射能に満たされていることだろう。

 世界中に撃ちこまれた核爆弾の影響がある程度消えるには、今後、何年何十年とかかるのではないだろうか。


 選択した訳ではないのだが、とりあえず3番目の成り行き任せとも思える状態ではあるのだが、残念ながらあまりの惨劇を見たストレスからか、貴重な食料の大半を床にぶちまけてしまっているので、生きていられる時間は短くなってしまっている。


 更に思いついた4つ目の選択肢・・・、余り思いついては欲しくなかったのだが、ぼーっとしている時に考え付いてしまった。

 それは、異次元世界への報復とも言える行動だ。


 幸いにも、東京基地は安全と目されているのか、ダメージは負っていない。

 その為、5台のガードマシンはそのまま保存されているし、うち1台はすぐにでも行動できる状態だ。

 その1台を使って、異次元世界の住民に報復して行くと言う選択肢だ。


 なにせ、如何に一方的な侵略行動をしていたとはいえ、大半の一般人に対して危害を加えた覚えはないし、食料調達の際に攻撃してくる敵軍を相手にしていただけだ。


 少なくとも俺達・・・、我々のチームメンバーはその様に行動していたはず(当初は破廉恥な行動に出た奴もいたのだが、注意した後は兵士以外は的にしないようになっていた。)だし、俺自身は兵士ですらなるべく傷つけないように扱っていた。


 ところが、向こうの対応はどうだ・・・、次元移送装置を手に入れて、こちらの世界を攻撃可能となった途端に、核攻撃だ。

 こちらの世界は壊滅状態・・・、陸地から離れた島々の人など辺境の地の人は生き延びている可能性はあるが、主要都市・・・、つまり食料など物資の強奪をおこなっていた都市部の人々は、全滅したことだろう。


 今この世界の人口100億と言われていたが、そのうち99%くらいは犠牲になったのではないかと考えている。

 しかもその大半は、異世界から強奪していたことなど、露ほども知らない一般の人たちなのだ。

 いくら一方的に強奪されていたとはいえ、余りにもひどい行為ではないのか?


 その報復として、残されたマシンを使って、異次元世界を攻撃すると言うものだ。

 幸いなことに、銃弾の予備はふんだんにあるし、一般市民を巻き込んでの報復であるならば、恐らく万を越える人々を対象にできるであろう。


 それでも、こちらの世界の犠牲者の1%にも達しないだろうが、何も知らずに一瞬で命を奪われた人々の、恨みを晴らす一役にはなるかもしれない。


 そんなことまで思いついてしまった訳ではあるのだが、俺としては未だに異次元世界の人々に対する恨みつらみを感じてはいない。

 一部の人々の暴走行為ではあったのかもしれないが、それだけのことをして来たのだ。


 自分たちの事を一切明かさずに、強奪をひたすら繰り返していたのだ。

 向こうの人々にとって、それは恐怖以外の何物でもなかったであろう。

 なにせ、一方的に攻撃されるばかりなのだ、向こうからこちらの世界にアクセスする手段は一切なかったわけなのだから。


 強奪用のアームマシンやガードマシン攻略に手を焼いていたと言う事はあったのだろうが、それだって基地ごと大きな爆弾で吹き飛ばしてしまえば済む事であったのだろう。

 しかし、そんなことをしたら、次にどんな報復が待っているか分らない。


 それこそ核爆弾で主要都市の一つや2つが吹き飛ばされるかもしれないと言う懸念は持っていたことだろう。

 いや、まったく姿を見せずに攻撃を仕掛けてくる、未知なる技術力を持つ敵であるわけだから、もっと強力な殺戮兵器を想定していた可能性だってある。


 その為、直接的に基地やマシンを攻撃する以外は行っていなかったのだ・・・、地域戦でしか対応できないと思わせておくために・・・。

 そうしていながらも、いつか反撃の機会が来るだろうと信じて、一気に逆転に転じるための兵器を作って準備していたのだろう。


 そうでなければ、あんな短期間で世界中を破壊できるだけの核爆弾を、各地で準備できるはずもない。

 相応の報復でしかないのだと、俺自身はなぜか納得できているのだ。


 勿論こんなことを考えるのも、知らなかったとはいえ強奪行為に加担させられていた立場からであり、何も知らずに、それこそ何もしていないにもかかわらず犠牲になった人たち及び、わずかながら生き残った方たちは、とてもそのような考えには至らないことは判っている。


 しかも、この報復を生み出したのは、俺の責任なのだ。

 異次元世界に対する卑劣な強奪行為を明らかにするためとはいえ、全ての操作基地を封鎖すべきではなかったのかもしれない。


 日本基地だけの封鎖であるならば、他の基地を防衛することは出来たわけだから、向こうの世界の強奪基地が破壊されることもなく、次元移送装置を利用されることもなかったとも言えるのだが、他の基地から東京基地のアクセス権を剥奪されてしまえば、ここはただの地下空間でしかない。


 基地のコントロールは、それぞれ独立しておらず、ネットワークでつながっていたからこそ、ここだけですべての基地の封鎖が可能であったわけだが、逆にいえば、他の基地をそのままにしておいた場合は、今度は東京基地を封鎖することが簡単であった訳だ。


 如何にこちら側にもシステムの管理者権限があったにしても、権限を剥奪されてしまえば何もできなくなってしまう。

 寄ってたかって複数の基地からコンタクトされれば、たった一人だけの操作では対応が間に合わず、権限を剥奪されてしまったであろうことは明白なのだ。


 だからこそ全ての基地を封鎖して籠城した訳なのだが、その代償は大きかったと言える。

 おおよそ百億の人口が消滅してしまったのだ。

 起きてしまったことは仕方がないでは済まされない程、衝撃的な結末となってしまった。


 そんなこんなを幾度となく繰り返し考えては、止めどない堂々巡りの思考が続いて行くだけの日々だった。

 しかし、そんな時間もそろそろ終わりを告げようとしていた。

 食料はばかげた行為も手伝って、とっくに底をつき、ここ数日間は床に散らばった乾麺の破片を見つけては口に運ぶ程度で、大半は同時にばらまいたレトルトまみれになっているので、食べられる状態ではなくなっていた。


 水だけはぶちまけなかったので、大事に使っていたのだが、残りのペットボトルは2Lが1本だけとなり、トイレというか洗面の水に関しては、恐らく貯湯タンクからの供給だったのだろうが、昨日から水洗を流す水も出ない状態だ。

 こんなことなら、トイレを毎回流すのではなかったと後悔もしているが、今更仕方がない。


 このまま死んでいくのが普通なのだろうが、自分がしでかしたことに対する代償があまりにも大きかったため、実をいうとこのまま死んでいくことを悔やんでいる。


 勿論、向こうの世界への報復ができなかったことを悔やんでいるのではなく、こちらの世界が犠牲になってでも、向こうの世界に平和が訪れたということが、正しい選択であったのかどうかを、見極めてからでないと、到底死んでも死にきれないと感じるようになってきたのである。


 向こうの世界の様子は、東京基地分でしか今では確認ができないが、平穏無事な様子が映し出されているが、とりわけ喜びに満ち溢れていると言った様子ではない。

 どちらかというと、淡々と日々の生活を行っていると言った感じであり、こちらの世界を破壊しつくしたと言う喜びというか、侵略行為は止まったのだと言う安ど感は感じられないのだ。


 強大な敵の侵略を防いだのだから、数ヶ月間は喜びの祭りを繰り広げたほうがいいと言うのではない。

 しかし、俺が籠城している最中に、侵略活動停止を喜ぶかのような盛大なパレードが催されていたのだが、あれはあくまでも核攻撃を悟られないためのカモフラージュでしかなかったわけだ。


 こちらの世界を死滅させられるだけの爆弾を送り込むことに成功したはずなのに、その後の祝勝のパレードというかお祝い事が一切なされてはいない。

 未だに東京基地周辺には遠巻きではあるが、軍の車両が待機していて、こちらの動き次第では、いつでも攻撃に転じようと身構えている様子が、たまに俺のマシンを上空まで上昇させて周囲を見回した時に確認できる。


 恐らく、他の基地・・・と言うか、今では破壊されまくっているだろうから、基地跡と言おうか・・・、モニターが繋がっていないというか、次元移送装置を全て持っていかれたためだろう、他の基地からの映像は届かなくなって久しい・・・のだが、それらの周辺でも警戒を怠ってはいないだろう。


 つまり、こちら側の世界からの反撃を警戒し続けている訳であり、勝利したことに気付けていないのかもしれない。

 そうであれば、俺のマシンを使って、こちらの世界は核攻撃で壊滅状態であるというメッセージを、道路に書きこんでやってもいいのだが、俺は別の事を思いついた。


 俺がマシンを操作して、こちらの世界の事を如何に書いたところで、肝心の俺が無事であるのだから、そんなメッセージは信じるに足りないと感じられる恐れがある。

 どの道、これから何年間も侵略行為がなければ自然と納得するのだろうが、余計な気苦労をなくしてやるためにも、向こうの世界からの報復攻撃は成功したのだと、知らせてやることを考えついた。


 その為、向こうの世界からの攻撃により、こちら側のカメラ映像が全て途絶えた瞬間までのビデオと、向こうの世界の様子をモニターしていたビデオを重ね合わせて、1枚のディスクに焼いてみた。

 このディスクを、向こうの世界に送ってやればいい・・・、次元移送装置がこの部屋にもあることは発見済みなのだ。


 ワープロでのメッセージも添えておく。

 そうした準備をしながら、ふと思いついたのが、ディスクを送るだけで、果たして誰かがそれを見つけてくれるだろうかということだ。


 向こうで強奪した物資を東京の基地に運び入れると、そのままこちら側の東京の同じ番地の倉庫に次元移送されていた。

 恐らく、移送元と移送先の地球上の座標は同じなのだろう。

 なにせ、次元移送装置自体に転送先の座標を入力するようなコントロール装置は付いていないのだ。


 この装置は次元間を移送するだけで、場所の指定は出来ないのだと考えるのが自然だ。

 そうなると、この部屋から転送した物は、多分東京の湾岸エリアのビルの地下深くにある空間に移送されるはずだ。


 考えるに自動活動ロボットを地下空間に一旦移送して、向こうの住民に気づかれないように地上へ進出し、地上基地を作り上げて行ったのではないだろうか。

 物資を地上へ直接送り込んでしまっては目立つし、ましてや見たこともない自動ロボットが建物を建築していたら、すぐに通報されて警察や軍部が出張って来ただろう。


 地下へ一旦物資を送り込んで、深夜にでも密かに地上へ運び、建築を続けるなどといった方策が取られたのではないだろうか。(まあ、深夜に指定場所に資材を送り込んですぐに組み立てるという手もあるのだが、それでも送り込んだ作業ロボットの隠れ場所として、地下空間は必要となるだろうと考える)


 掘削装置を真っ先に送り込んでおけば、地下空間を確保できるだろうし、安全に移動できる地上までのルートの確保も出来たであろう。

 そう考えると、この基地から送り込んだものは向こうの世界でも地下深くに伝送されるだけで、人目に触れることはまずないだろうといえる。


 それではディスクを送り込む意味が無くなってしまう。

 そうこう悩んでいる時に、ふと、ロッカーの中にあったある装置の事を思い出した。

 AED装置・・・、心臓発作などの心停止を電気ショックで復活させる装置だ。


 次元移送装置は生身の生命体は移動できないだろうと、俺の友人に言われたし、現に異次元世界と繋がっていたにもかかわらず、マシンを送り込むだけで人による侵略を行っていなかったことからも、生体は移動できないということは納得できる。


 まあ、あいつが言っていた通り、原子とか素粒子レベルに分解される時点で、一旦死んでしまうと言うか、生命体ではなくなってしまうのだろう。

 そうして向こうの世界で再構築されるわけだ。


 再構築された時にうまいこと電気ショックが加わったら、蘇生しないだろうか・・・、ふと、AED装置を救急箱が入っていたロッカーから取出し、取扱説明書を読んでみる。


 すると、タイマー機能もあってスイッチを入れた後、約2分後に電気ショックが発生しますとある。

 だったら、タイマーをセットして俺の体にAEDのプローブを付けておけば、うまい事行けば再構築された後に電気ショックが加わるはずだ。


 問題なのは心停止しなかった場合だ・・・、正常な人間に強烈な電気ショックを与えると、そのショックで心停止してしまう恐れがあるので、絶対に正常な人には使用しないようにと但し書きがある。

 つまり、次元移動しても生きていた場合は、電気ショックによって死んでしまう恐れがある。


 そうでなくても、電気ショックを与えても蘇生しない可能性だってある・・・、一度で蘇生しない場合は、数回行ってくださいとある通り、たった一度で目覚める確率も高いとは言えないのだろう。

 まあ、悩んでいても仕方がない、俺は床下に設置されていた次元移送装置を一旦切って床に並べた。


 向こうの地下空間がどれほどの大きさか分らないので、とりあえずそのまま垂直に床上に持ち上げ、床板を戻すとそこに俺とラッキョウの操作装置2台を移動させ、無停電電源も数個取り外して並べると、俺はその横に横たわり、AEDのプローブを指定箇所に貼りつけタイマーを起動させ、次元移送装置のスイッチを入れた。



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