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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第8章
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戦闘開始

15 戦闘開始

『ググッ』軽いGを感じ、コントロール装置のモニターに映し出される風景が下に落ちていく・・・、円盤が急加速して上昇しているのだ・・・、すぐに上空にいる円盤の群れに焦点を合わせる。


 ジョイスティックを操作して、ターゲットマークを円盤下部のダミー発射口が三角形を形作っているちょうど真ん中に合わせて、発射ボタンを押す。


『ちゅどんっ』『ドンッ・・ゴゴゴゴッ』光子砲が命中すると、円盤エンジン部分から黒煙が上がり、円盤はそのままゆっくりと下降を始める・・・、揚力が減少して浮いていられないのだ。


 左側に目をやると別の一機も下降を始めた・・・大雪君の仕業だろう・・・・、すぐに次のターゲットに照準を合わせる。


『ちゅどんっ』『ちゅどんっ』『ドゴッ・・・ゴゴゴゴッ』『バゴッ・・・ゴゴゴゴッ』一度の上昇の間だけでは、やはり3機が限界だ・・・、2機の円盤をやり過ごして上空で急転回する。


『ピュンッピュンッ』『ドッガーァーンッ』『ドッゴォーンッ』予想通り攻撃を免れた円盤たちは、報復とばかりに地上施設を攻撃し始めた。

 急がなければならない・・・切り返して急降下すると再度反転して急上昇・・・。


『ちゅどんっ』『ボゴッ・・ゴゴゴッ』『ちゅどんっ』『ズゴッ・・・ゴゴゴッ』そうして残りの2機のエンジンを攻撃する・・・、エンジンを撃たれた円盤はそのまま演習場へ不時着した。

 すぐに兵士を乗せた軍用車が走っていき、円盤を取り囲むように包囲する。


 10機の円盤は、司令部のグラウンドと演習場へきれいに並ぶ・・・意外とあっさりと片付いた・・・。

 基地の様子は・・・と円盤を移動させて地上モニターに切り替えるが、バリアーのおかげかどこにも被害は見られない・・・圧勝と言えるだろう。


「ようし・・・阿蘇よ、すぐに各国の円盤に呼び掛けてくれ。

 各植民地を開放する・・・、円盤から植民地へは攻撃されて航行不能になったことの連絡が行っているはずだから、恐らく抵抗はしないだろう・・・。


 無理やりになってしまうが・・・植民地はすべて開放する・・・、少なくとも向こう側世界の支配下にある植民地としての立場からは解放する。


 向こう側世界の文明や技術の恩恵にあずかりたいのであれば、引き続き向こう側の技術の傘下に入ることは禁止しない・・・、そういえば納得するだろう。


 詳しい交渉は、これから我々がフィリピンに向かって行うから、他国の円盤は植民地の動揺を抑えるよう指示を出してくれ。

 それから阿蘇と大雪も残りの植民地に向かってくれ・・いいね。」


 すぐに赤城から指示が飛ぶ・・・ううむ・・・植民地は解放するが、そのまま向こう側世界の傘下にはいてもいいだなんて・・・、一体どういうことだ?



「植民地を解放ですか・・・、おかしいですよね・・・?

 植民地の住民の方たちは、我々側の文明の利器にあやかりたいようで、植民地支配から脱しようとは望んでいなかったのではないのですか?


 それなのに、どうして無理やりともいえる行為に及んだのでしょうか?これは内政干渉以外の何物でもありませんよ・・・、何せどの植民地も独立を望んではいなかったのですからね。」

 フィリピンに飛んで回線を開くと、すぐに所長が厳しい口調で今回の攻撃について追及してきた。


 どうやら、我々が飛来するのを待ちかねていた様子だ。

 都市上空500m地点にホバリングすると、あまりうれしいことではないのだが、周り中ぐるりとガードマシンに囲まれてしまっている・・・。


「確かにおっしゃる通りなのですが・・・植民地は解放いたしますが、引き続きそちら側の文明と申しましょうか、技術力の提供を受けることは禁止しません。

 植民地の行政府とは、そういう内容で交渉している所です。


 ですが・・・今までのようにただで技術を与えてもらうのではなく、その対価を支払う・・・当然のことながら食料物資という事になりますが、正当な評価のもとの対価として貿易という形で行わせていただきます。


 といっても今になって植民地が提供する食物の価格を吊り上げて、さらなる技術の提供を受けようというのではありません・・・、これまで通りそちら側の技術力を授かり、代わりに食料物資を提供するという形を維持していくつもりです。


 当面はそのままで変わりはありませんが、植民地だった国や地域は再び世界政府に参加してもらいます。

 そうして、自ら得た技術を他の諸国へも配信するよう交易するのです。

 これにより、優れた文明欲しさに植民地支配を受けようとする造反国を抑えることが出来ます。」


 赤城が新しい体制を説明する・・・見かけ上は何も変わらないが、植民地支配からは逃れて世界政府へ戻ることと、他国への貿易を開始するという事が追加されるわけだ・・・。


「ああそうですか・・・、なんて納得はしませんよ。

 植民地は解放するが今まで通りにお付き合いするだなんて・・・、今まで通りになるわけはありません。


 しかも禁止していたはずの、そちら側世界の国々とも交易をするだなんて・・・、それでは我々の技術の切り売りという事になってしまいます。


 そちら側世界の技術力が向上し、我々のサポートがいらないなんてことになった場合、斬り捨てられてしまいかねません。

 そのような先の見えた取引など誰が引き受けますか。


 円盤を取り囲んでいるガードマシンには、武器を装備させる代わりに高性能爆薬を仕込んでおります。

 いかに装甲の厚い円盤と言えど、流石に周囲を囲まれた状態でガードマシンの爆発に巻き込まれてしまっては、墜落するはずです。


 他の植民地域でも同様な攻撃を仕掛けていますよ・・・うかつでしたね・・・。

 その後、新たに建造した巨大円盤やガードマシンで、周辺国も含めて再度植民地化していけばいいわけです。


 いかがいたします?降伏するなら今のうちですよ・・・、こちらも人的犠牲はこれ以上だしたくはありませんからね・・・・降伏したとしても、そのまま捕虜とはせずに国へ送り返してあげます。

 どうでしょうか?」


 所長がゆっくりとした口調で、問いかけてくる。

 ううむ・・・全円盤を向かわせた時点で反撃を予測して準備していたのだろう・・・、向こうも負けてはいないという訳だ。


 客室にはマシンコントロールを習熟した兵士が詰めてはいるが、マシン同士の戦闘ともならないわけだ・・・、爆薬を積んでいるとは・・・。


「では・・・新倉山君・・・、Gアイコンをクリックしてください・・・、他の植民地域に向かった円盤でも同様に、コントロール装置右下のGアイコンをクリックしてください。」

 すぐに霧島博士からコントロール装置を通じて指示が飛ぶ・・・、この通信は向こう側には聞こえていないはずだ。


 確かに・・・ここへ来る途中で危なくなったら押せと言われていたアイコンだ・・、どんな機能があるのかわからないがとりあえずクリックする。


『キュィーンッ・・・』すると次の瞬間モニター画面が横方向に吹っ飛んでいく・・、どうやら円盤が高速回転を始めた様子だ。

『キュゥーン』そうして画面が戻った時には、周囲を取り囲んでいたガードマシンは1台も見えず、はるか下の地面に黒い球体が円周状に散らばっている・・・、墜落したのか?


「マシンの推力を失わせる波動を撃ち込みました・・・、これでマシンは浮上できないはずです。

 これだけ距離があれば、自爆されてもこちらには被害が及びませんよ・・・、いかがいたします?」

 霧島博士が我が物顔で、今度は通信回路を解放してコントロール装置のマイクに向かって語り掛ける。


「ばっ・・・馬鹿な・・・。」


「我々の側でも、そちら側世界に対抗できるだけの兵器をすでに持っているのですよ・・・。

 いい加減あきらめてください・・・、先ほども申し上げたように、当面の間はそちら側世界の技術力の供給を受けて、代わりにこちら側世界の食料物資を供給させていただきます。


 お互いがギブアンドテイクの対等の立場なわけですから、それで満足するようお願いいたします。」

 赤城が続いてコメントする。


「分かりました仕方がありませんね・・・、本来ならば植民地を解放されて食料物資の供給元を絶たれ、そちら側世界への強奪行為を行っていた首謀者たちを引き渡さなければ提供を取りやめると脅されても仕方がないところですが、そうはされないという事に感謝するしかないという事ですね。


 ですが・・・こんなことをして、そちら側にどんなメリットがあるのですか?


 そりゃあ確かに世界の一部を植民地化されているという事は気持ちが悪いでしょうが、それでも我々側からその他の地域をどうこうしようなどといった考えは全くございませんでしたよ・・・、植民地域の文明の宣伝活動自体は我々が望んだことではなくて、植民地側の住民たちが自ら率先して周辺国にアピールしていたことですからね。


 そのままでも十分、平和的に共存して行けたはずです・・・、こういったことをされてしまいますと、今度は我々側から仕掛けて、またどこかの国々を植民地化するなんてことを繰り返すことにもなりかねないと思いますけどね。」


 所長はさらっと恐ろしいことを口にする・・・、まあ所長は向こう側世界を代表して交渉には出向いているが、決して向こう側世界の指揮決定権を持っているわけでもなんでもなく、俺と同じくただの連絡係にすぎない。


 向こう側の真の代表者というか政府の役人とか議員たちなどは、それこそ強奪行為の首謀者とみられてしまうと困るから、決して表には出てこないのだろうと考えている。


 そういった人たちが危機感をあらわにして植民支配する国や地域を確保しようしたら、また犠牲者が出かねないと所長なりに警告してくれているのだろう。


「まあそうですね・・・これまででしたら、そちら側世界の技術力を結集した新型兵器の投入により、またすぐに有意差が跳ね返されて、そちら側世界の思い通りになるところでしょう。

 ですが・・・、こちら側にもそれなりの兵器ができておりますし、また開発も続けてまいります。


 そのうえでそちらよりも有利に立てたと考えた時点で、そちら側との交易を絶つこともありうるわけです。

 そうなると困るのはどちらでしょうか・・・?


 そうならないように、そちらにいらっしゃる数多くの技術者の方たちは、兵器開発よりも暮らしの助けとなる新技術を開発していただくようお願いいたします。

 あなたたちが我々の暮らしに役立つ限りは、対等の関係で貿易を続けさせていただきます。


 その関係が保てなくなった場合は・・・、そうですね・・その時こそそちら側世界のトップ・・といいましょうか、こちら側世界から強奪することを計画された首謀者の方たちを明確にしていただき、我々に委ねてください。

 我々側の法律により、裁かせていただきます。


 その後は、もちろん生き残った人々には、救済処置をとらせていただくことをお約束いたします。」

 赤城がさらにコメントを追加する・・・、恐らく最終通告ともいえるようなコメントだ。


「所長・・・こちら側世界に次元移送して移住してくることが、ほぼ不可能となったようですが・・、まだそちら側世界の地上へ戻るという選択肢はあるではないですか。

 数年程度では無理でも・・・何十年か経てば地上世界の放射能の影響も薄れていくのではないのですか?


 そうなれば地上で生活できるようになるはずです・・・、こちら側世界の世話にならずとも、自分たちで食料確保可能になるのではないですか?」


 とりあえず、このまま一生穴倉生活という思いだけは払拭しておいた方がいいだろう・・・、少しでも希望は持っていた方がいい。


「そうですね・・・植民地支配したときに、そちら側世界から反撃をされた時の世界各地へ送付された核爆弾の情報を入手して、破壊力と放射能の影響をシミュレーションいたしました。

 それによると・・・地上世界に生物が生存可能な状態になるまでに・・・、まだあと200年程度はかかるという結果になりました。


 さすがにそれくらいまで地上世界が放射能に埋め尽くされますと、恐らく正常な生物の種が存在することは期待しにくいでしょう。

 地上世界の動植物は全て死滅しているだろうと予想しております。


 その後、新に生物が誕生するまでに、一体どれだけの期間が必要になるとお考えですか?

 海にまでも放射能の影響は及んでいるのですよ・・・、つまり魚や海藻もそのままでは食料となりえないという事です。


 そんな中で生きられますか?生物の進化を待っていたらあと何万年も待たなければなりませんよ・・・。

 生体の次元移送はできないので、そちら側世界から送っていただくこともできません・・・、そうなると・・・最早先行きへの希望など・・・。」


 所長の言葉が・・、かなり弱くなってきた・・・。

 ううむ・・・穴倉生活の中で唯一の希望は生体での次元移送だけだったという訳か・・・、それは本当に残念なことだ・・・。


「一つお聞きしたいのですが・・・、そちら側世界との通信に際しましては所長さん・・・お名前を存じ上げませんのでそう呼ばせていただいておりますが、あなたと先日こちら側世界で亡くなられた霧島博士としか会話したことがございません。


 こちら側世界へ次元移動なされた霧島博士は、頑としてそちら側世界で生き残った方たちの人数やその地域など明かすことを拒み続けましたが、それでも食料を世界各地で加工して送付していた時の量から推定して、1ケ所のシェルターで1万人前後・・・それが100ケ所から1000ケ所ほどで100万人から1000万人程度と予想しております。


 それらの方たちは、こちら側世界とのやり取りを承知していらっしゃるのでしょうか?

 こちら側世界にいらっしゃった霧島博士にいろいろと質問させていただきましたが、どうにも・・・そのような情報がタイムリーに伝わっていたとは思えません。


 もしかすると未だに大半の方たちが、そちら側世界の暴挙を知らないままいるのではないのでしょうか?」

 赤城が突然口を開いた・・・、なるほど・・・霧島博士もだまされていたと言っていたものな・・・。


 まさか人が文化的な生活をしている世界から食料を強奪していたなんて・・・、その反撃を受けて人類の大半を失っただなんて・・・、知っていたならそれほど冷静ではいられないはずだ。


「その件に関しましては、お答えを控えさせていただきます。

 こちら側世界の内部事情であり、そちら側世界との関係に一切関与しないはずのことです。

 こちらから供給する最新の技術力には影響しませんよね?」


 すぐに冷たい口調で断りのコメントが告げられる・・、だがしかし・・これはある意味向こう側世界の大半の人たちが未だに事情を知らされていないという事を認めたも同然だ・・・、そうだったのか・・・。



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