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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第8章
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円盤生産の割り当て

4 円盤生産の割り当て

「分かっております・・・一度疑われてしまいますと、その疑念を晴らすのは容易ではないという事もですね。

 当初から娯楽施設の地下を使っての次元移動は考えておりませんでしたので、どのようにされましても問題はありません。


 気のすむようにしていただけばいいですよ。」

 所長はもうあきらめたのか、あまり抵抗する様子は見られない。


「では、そうさせていただきます。

 何せ警戒を解いてしまっては、結局は次元を超えての移住の拠点とされかねませんからね。

 地下へ向かう人の数と出てきた人の数のカウントも明確にできるよう、地下施設への出入りには認証カードを使用させていただくことにいたします。


 つまり、そのカードがなければ地上へは出られないという形ですね・・・、その認証カードは・・・無料で配布させていただきますので、ご利用ください。」

 なんと、カードによる出入りの管理まで行おうとしているようだ・・・。


「分かりました・・・、でも磁気カードなど・・・いくらでも偽造が可能ですよ・・・、ICカードを使うおつもりですか?」

 所長が、要らぬ心配ともいえる警告をしてくれる。


 まあ、こちらの技術力では磁気カードくらいが最新技術であろうからな・・・、そんなものは役に立たないと言ってくれたのは、俺がこちら側世界に来ているからなのだろうか?


「磁気・・・IC・・・カード・・・です・・・か?

 それがどのようなものかは全く分かりませんが・・・、我々がお渡しするカードは、寄せ木細工で作られた木の札を半分に割った・・・いわゆる割符です。


 組み合わせで合致できるのは一組しかできませんから偽造は困難でしょうし、人数管理も容易となります。

 予想来客数を提出いただけましたら、その人数分プラスアルファの札をお渡ししますので、ご利用願います。

 といっても実際に使用するのは、植民地の従業員でしょうがね。」

 赤城がしてやったりといった笑顔を見せる・・・デジタルに完全なアナログで対抗するわけだ・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・分かりました・・・、各植民地の行政府にお渡し願います。」

 なんか、マイクの向こう側からため息が聞こえてくる気がする。


「ついでにですね・・・、以前そちらの世界の・・・霧島博士からの問い合わせにお答えいたします。

 こちらといたしましても、植民地化された国や地域の住民たちが、その状況に満足している限り、植民地からの独立を勧めることも、ましてや強制することも決して致しません。


 さらに植民地化された地域の発展に関して、いささかもその妨げとなるような行為もするつもりはございません。

 地下鉄含め大規模な施設工事に関しても同様ですが、こちら側世界へそちらの世界から次元を超えて移住してくることだけは反対致します。


 このことに関しましては、各植民地の行政府とも意見が一致しておりますので、対応させていただきます。

 そのため工事期間中は、今後も監視のための軍を派遣させていただきますが、工事の妨げになるような行為は一切行わないことを申し上げておきます。


 また、巨大な地下施設を持つ施設の運営にあたりましては、今回の娯楽施設同様に出入りの人数管理で対応させていただきます。


 お聞きした限りでは、乗用車の自動運転とか鉄道改札の自動化など、かなり進んでいて省人化が行われているようですが、こちら側世界では人件費はまだそれほど高額ではありませんし、更に植民地化された地域住民の雇用の確保のためにも無人化施設の運営はせずに、潤沢な人員配置をお願いいたします。


 植民地化された国や地域の人口に関しましても、定期報告いただける手はずになっておりますので、人の出入りに加えまして、異常な人口増に関しましても、目を光らせていく所存でございます。」


 追い打ちをかけるかのように、赤城が地下施設の建築は構わないが運用に当たっては常に人が介在して、更に員数管理を行うと明言する。

 アリのはい出る隙間もない・・・、と言えるような包囲網を敷いていくのだろうか・・・。


 これにより植民地の住民も雇用が確保されて生活が安定化するだろうし、移住を阻止する事さえできれば、自分たちは進んだ技術の恩恵だけ得られて、快適な生活が続けられるのだ。

 彼らだって進んで世界政府の監視に協力することだろう。


「・・・・・・・・・了解いたしました・・・、ちょっとあまりにもなんでもそちらからの要求をのみこみすぎた懸念はありますが、・・・ご協力いただくために仕方がないというのであれば、我慢いたしましょう。

 では、来月初に・・・。」


『プチッ』所長の声は最後の方にはずいぶんと元気がなくなったようで、通信は終了した。

 どうやら今回の交渉に関しては、こちら側世界の圧倒的勝利と言えるだろう。


 なにせコントロール装置も量産可能となったし、巨大円盤やマシンでさえも製造できるようになるのだ。

 その部品の多くは向こう側世界から与えられるものだとしても、それでも技術力の大きな向上は期待できるのではないか?


「じゃあ戻るか・・・、今回は向こう側世界の霧島博士は同席してはいなかったようだね・・・、こちらの霧島博士と会話することによって存在を察知されてはいけないと、霧島博士には基地で待機していただいたのだが、まあ無用な心配だったようだ。


 阿蘇よ・・・無線で今日の結果を下にいる監視部隊員に連絡しておいてくれ・・・、ドームの監視兵に関しては今月末に迎えに来るから身支度を整えておくよう言ってくれ。

 それと地下施設に関しては監視業務を継続するので、今回の監視兵と入れ替われるよう引継ぎしておくように、言っておいてくれ。


 ついでに他の地域の植民地に関しても同様の指示を出しておく・・・、こっちに関してはコントロール装置を通じてのメールの方がいいのかな?」

 赤城が帰国の指示と同時に、監視兵たちへの連絡を阿蘇に指示する。


「分かりました・・・。」

 阿蘇がすぐに一抱えもある無線機のマイクに向かって通信を開始する。


「では・・・他の地域の監視に対しては、俺の方からメールを送っておきますよ・・・、俺たちがマニラに来るタイミングでは、円盤を起動させて待機しておくよう指示が出ていたはずなので受け取れるはずです。

 ただし俺の場合は日本語ですけどね・・・、彼らは日本語が堪能だから大丈夫ですよね?」


 日本国軍司令本部の座標を入力して発信させた後、急いでメールを立ち上げテキストで文書をしたためると、送付する・・・、まあこれで大丈夫だろう・・・日本語の意味が分からなければ阿蘇に確認してくるだろうしな。


 何にしろ、このところ目まぐるしく状況が変化してきて、何年も経過しているような感じもするが、巨大娯楽施設の建築現場に派兵してからまだ2ヶ月も経過していない。

 たったそれだけの間に、円盤やコントロール装置の量産が可能になるだなんて・・・いったい誰が想像しただろうか・・・。



「じゃあ・・・、これから地下の通信室で霧島博士も交えて今後の展開を打ち合わせだ。

 君たちも一緒に来てくれ。」


『はい!』

 日本国軍司令本部に到着して本部ビルの事務所へ向かおうとしていたら、赤城に呼び止められ通路奥のエレベーターへ阿蘇たちとともに向かう。


「フィリピン政府から部品の受け取り方法と、代金の支払い方法の連絡を受けた。

 日本円やドルなどの外貨ではなく、金塊での支払いを求めてきた。

 部品は来月1日までにマニラに準備しておくので、その時に金塊も持ってくるよう要求されている。


 いわゆる、物々交換だな・・・。

 ギリシャ、イタリアなど他の植民地でも同様の回答の様だ。」


 通信室に着くなり、霧島博士がA4サイズの用紙を眺めながら告げる。

 すでに100インチモニターには各国の研究者たちが映し出されていて、テレビ会議は始まっていたようだ。


「金塊・・・ですか?しかも物々交換とは・・・。

 どうして各国通貨ではだめなのでしょうかね?それに金を準備するにしても時間が・・・。」

 赤城が、少し戸惑ったようにうろたえる。


「2000万円分の金塊だから・・・、まあそれほど大した量ではないが、今後円盤の部品供給を受ける場合には、大量の金塊を準備しておかなければならない。


 恐らく外貨は必要ないのだという意思表示なのだろうな・・・、各国へ植民地支配を勧めるメッセージを放送する費用に関しては、あくまでもブランド肉やブランド米などの販売費用だけで十分という事なのだろう。


 すでに3年以上も世界政府側とは鎖国に近い状態で生活しているように、こちら側から必要なものは何もないのだと示したいのだろう。」

 霧島博士が頷きながら説明する。


「はあ・・・、外貨は不要という意思の表れですか・・・。

 金塊なんて・・・、向こう側世界に移送するつもりでしょうかね?」

 赤城はなおも納得いかない様子だ。


「まあ、そのようなことも考えられるだろうね・・・、別に金など装飾品などなくても生活はできるが、持っていた方が何かの時にそれと食料などを交換できる。

 金塊であればそれほど場所はとらずに、多額の資産と評することが可能になる。


 それと・・・本気で次元移動を考えているのかもしれないね・・・、その時の資金とするつもりなのかもしれないしね。」

 霧島博士が、向こうの考え方を推測する。


「でも・・・、次元移動に関しては否定的でしたよ?

 もしかすると実験がうまく行っていないのではないですか?」

 すると霧島博士の言葉に対し、阿蘇が反応する。


「確かに生体の移送に関しては、実験段階で間違いはないだろう。

 安全確実に運用できるという確証が出ない限りは、人体で行うことはないだろう。


 だがまあ・・・、生体での次元間移動の必要性が生じてから、まだ3年ほどだ。

 それだけの期間で、次元移送に関しての理論構築はほぼ出来上がっているようだし、後はそれをどれだけ安定化できるかにかかっているだけと感じる。


 それほど遠くない時期に、生体の次元移送が可能となることは想像に難くない。

 そのための準備を今のうちにしておこうと考えているのだろうね・・・、こちら側世界との関係も、もっと友好的なものにしたいと考えているのではないかな・・・。」


 霧島博士の説明は続く・・・。

 確かに次元を超えての移住も夢ではなくなっているのだ・・・、その時のための外貨・・というか財産としての金塊獲得という訳か・・・。


 さらに円盤技術も惜しげもなく披露して・・・友好関係を築き上げる・・・、その実、核融合技術や光子エンジンに関しては、向こう側世界の植民地からの供給として、技術自体は渡さないという上手いやり方だ。


 どのみち技術的な支援を受けたところで、核融合技術など一朝一夕では獲得できはしないだろうし、まあ手伝っていただいて当然と言えば当然なのだが、それによりますます向こう側世界の必要性が増してくることになるかもしれない・・・、なにせ自国で建造するとは形ばかりで、向こう側世界の協力がなければメンテすらできなくなるわけだ・・・。


 今回の件に関しては、こちら側世界の圧倒的勝利なんて先ほど喜んでいたのだが、そうとも言えないことが分かってきてちょっとがっかりだな。


「それで・・・コントロール装置に関しては、日本に製造・・・というか組み立て工場を作って生産することとする。

 あとは・・・円盤の操作に関連する装置に関しても、同様に日本で生産する。


 霧島博士の提案だが、コントロール装置を繋げて動作確認もできるので効率的にいいだろう。

 マシンの製作に関しては、数ケ国で手分けするつもりだが、日本も参加する予定だ。


 エンジンや発電機に関しては供給を受けるとして、外装部品に関してはドイツ、イギリス、タイ、インドなど円盤保有若しくは増加希望の国々10ケ国に割り当てる予定だ。

 内装は・・・。」


 赤城が円盤製作の各国の役割分担を割り当てていく。

 すでに希望国が現れてきているという事なのか・・・。


 世界中を巨大円盤が飛び交う姿なんて・・・・俺のいた世界ですらSFでしかない光景だったはずだが、それがこの世界で現実となろうとしている・・・、果たしてそれが喜ばしいことと言えるのだろうか・・・。


「了解いたしました・・・アメリカでは既存の航空機の製造工場を利用して、巨大円盤組み立て用の工場へと改造する予定です。」


「フランスでも航空機の製造工場を改造して円盤の組み立て工場にします。」


「中国では円盤の製造工場を新設いたします。」

 円盤の最終組み立ては、アメリカ、フランスと中国で行われるようだ。


「植民地に習って円盤の組み立てに関しては、その大部分をハンドアームマシンを使って行う予定だ。

 それにより巨大クレーンや足場など最小限にして、効率よく組み立てが行えると計画している。


 あの円盤が収まるだけの施設は必要となるが、特別な機材などなくても組み立てができるとなれば、ある程度量産化したら、世界各地で一気に組み立ててしまうつもりだ。

 そうすることにより、植民地の円盤製造ペースに遅れまいと計画している。


 そのためにも・・・、マシンの操作者を増やす必要性があるのだが・・・、これに関しては新倉山君を中心に、操作者の育成をお願いするつもりだ。

 コントロール装置をある程度の台数確保出来たら、諸外国からも研修を募るので参加させてほしい。

 ハンドアームマシン操作による細かな技術の取得はもちろんだが、戦闘技術も身に着けていただきたい。」


『はいっ・・・よろしくお願いいたします。』

 すると突然赤城がとんでもないことを・・・。


 今だって世界各国のマシン操作者と俺のレベル差などないに等しいはずなのに・・・、それなのに操作者の育成を行うだなんて・・・恐れ多いな・・・。



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