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ゲームの達人  作者: 飛鳥 友
第8章
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更なる要求

2 更なる要求

「えっ・・・設計図ですか・・・?円盤の・・・?

 半導体部品のみならず、設計図まで差し出せとおっしゃるわけですね・・・、ううむ・・・いかがいたしましょうか・・・。」


 1週間ほど経過して向こう側世界から呼び出しがあったもので、円盤を使ってフィリピン マニラまでやってきたのだ。


 まあ世界中どこにいても円盤を使っての通信は行えるようだが、どうせ派遣した兵士たちの食料や着替えなどの物資を運ぶついでもあったために、やってきたという訳だ。

 実際相手を見て・・・という訳でもないのだが、少しでも向こう側世界と近い場所で通信している方が、面と向かって話している気持ちにはなってくる。


「分かりました・・・いいでしょう、設計図もお送りいたしましょう。

 円盤製作及び保守に関する部品供給には応じると、お答えしたわけですからね。

 円盤を保有されているとはいえ、全ての部品に関して情報を得るには、一度完全に分解する必要性があるのでしょうから、その手間を省くためということであれば、ご協力いたしましょう。


 ですが・・・供給するのはあくまでも円盤に関する部品および半導体製品のみです。

 更に半導体製品に関しては、制御基板としての供給は行いません・・・、あくまでも半導体製品単品の形での供給になります。


 モーターやポンプなども同様です・・・組み付けや周辺機器に関しては、当たり前ですがそちら側で行ってください。

 そこまで甘えられては困りますからね。」


 向こう側世界の責任者が一緒にいるのだろうか・・・あるいは予想していた範疇なのか、以外にも、すぐに快諾していただけた。


「ありがとうございます・・・それで部品代に関してですが・・・、未知なる技術によるものですから、こちらで値踏みすることは到底不可能ではありますが、あまりに法外な価格を設定されてしまいますと、実際に購入することが出来なくなってしまいます。


 価格設定はそちら側にお任せするしかありませんが、こちら側世界の事情に即した適正な設定をどうかお願いいたします。」

 赤城がさらに価格にまで注文を付ける・・・ううむいいのだろうか・・・、怒りださないだろうか・・・。


「ああ・・・価格に関してですか・・・、確かにこちら側とそちら側世界では、物価に関しても大きな開きがあったようですからね・・・、ましてやそちら側世界に現状存在しないはずの部品群ですから・・・。


 一応植民地化された地域とはいえ、その地域での生産力を数値化するために、生産中の半導体製品の製造費などは把握しておりますが、確かに同じ製品をこちら側で生産していた時より、製造コストは1/5から1/10程度となっていると報告されております。


 もちろん赤字で貿易することはあり得ませんから、その製造コストに植民地側で付加すべき利益率を乗じさせた価格を設定させていただく所存です。

 まあ、到底購入不可能な価格とはならないと想定しておりますよ・・・。」

 予想に反して、まっとうな回答が返ってきた・・・、本当に積極的な様子だ・・・。


「ご配慮感謝いたします。

 設計図を受け取り次第、輸入対象の部品リストを作成して、フィリピン行政府へ発送させていただきます。」

 赤城が、コントロール装置に接続したマイクに向かって頭を下げる。


「設計図に関しましては紙という訳にも参りませんでしょうから、電子データで新倉山さん宛のメールに添付させていただきます。

 ウィルスを疑わられても詰まりませんので、画像データの提供でCADファイルにはなりませんので我慢してください・・・それでも高画質で送らせていただきますので、詳細図は得られるでしょう。


 本日中に送付いたしますので、申し訳ありませんが円盤内にコントロール装置を接続しておいてください。

 なにせメールサーバーなどといったものがそちら側世界にはありませんのでね・・・、メール送信というのもダイレクト通信で行われているだけですから、その時に受信できなければ受け取れませんのでお気を付けください。


 続きまして、こちらからもお願いというか注文を付けさせていただきます。


 部品の供給はあくまでも円盤関係に限ると先ほども申しあげましたが、それ以外の製品への転用を防止するために、そちら側世界で製作する円盤の機数は報告していただきますし、それに見合った部品数しか輸出いたしません。

 補修部品含めて、過大に要求されましてもお断りいたしますのでご了承願います。


 さらに円盤の保有数に関しましても、均衡が破られるほど過大に製作されることも望んでおりません・・・、製作された円盤をどのように各国に分配するのかは、そちらの考えにお任せしますが評価は総保有数とさせていただきます。


 現有する円盤数も報告していただきますが、こちら側も計画を変更して各植民地に10機ずつ円盤を保有予定です。

 それに見合う数以上は望みませんので、十分ご配慮ください。」


 最後に向こうからの要求も突きつけられた・・・、まあ当然と言えば当然の要求だろう。

 円盤の操作パネルなど液晶パネルだから利用価値は高いわけだからな・・・、それこそテレビとかパソコンとか数を増やせば作ることも可能となってくるわけだ。


「了解いたしました・・・、こちらでも十分に精査して輸入量を取り決めたいと考えます。

 ありがとうございました。」

 赤城がマイクに向かって再度頭を下げて通信は終了だ。


 マイクのスイッチを切っても通信は行われるから今日はこのまま円盤内で待機だな・・・、先週末は場面が急展開してしまったので、大雪君の配属祝いもできなくなってしまった。

 今週こそはと思っていたのだが・・・、ちょっと難しいか・・・?


 ダバオとバギオにも寄って食料物資を降ろした後、日本国軍司令本部の座標を入力して帰路に就く。


「設計図を提出するという事は、どうやら本当に30年前の技術の円盤製作を植民地化された地域で行うつもりだったようですね。

 やはり軍備の均衡を崩さないために封印された技術だったのでしょうかね。」


 確かに次元移送装置と言い、今の時代にとってもはるかに進んだ技術であると言える・・・、あまりにも時代の先端をいきすぎてしまったがために、その世界から受け入れられなかった技術・・・ともいえるのだろうか。


「まあ、そうとも言えるし、別の見方をすれば、次元を超えた世界から侵略行為ともいえる、食料物資の強奪なんてことを行っていたわけだから、そのような事柄に関する技術は表に出すことを控えたともいえるだろうね。

 新倉山君が感じたように、コントロール装置を通じてみたこちら側世界が作られた・・・仮想世界であると認識するよう考慮されていたのかもしれない。


 なにせマシンを操作して強奪行為を数年にわたって行っていて、それが現実であることに気づいたのは、新倉山君ただ1人だったわけだろう?

 軍事力の均衡を図ることが大きな目的ではあったのだろうが、それにより秘密裏に強奪行為を継続させるカムフラージュにも使えていたという訳だ。」


 霧島博士が新たな解釈を加える・・・、確かにそうか・・俺が気づいたのだって、ほんの偶然から思いついただけだったし、俺がこちら側世界にいて、しかも強奪行為を妨害しようとしていた兵士だったからこそ確証が持てたわけだ。

 そうでなければ到底・・・恐らく今でも毎日あの地下施設にこもって、強奪行為のガードをしていたことだろう。


「じゃあ新倉山君と阿蘇と大雪は、引き続き円盤内に残って設計図が送られてくるのを待っていてくれ。

 これから通信室へ行って、各国の円盤も待機してもらうようにしておくから、彼らに対してもその設計図を送信することはできるかい?」


 軽いGを感じた後、日本国軍司令本部上空へ到着した。

 赤城と霧島博士は忙しいので一旦地上に降りていただくのだが、不意に赤城がメールに関して尋ねてきた。


「あっ・・・はいそうですね・・・。

 俺の管理者用IDは向こう側世界で使っていたものと同じものを使用していますから、恐らくそのアドレス宛にメール送信してくるのだろうと考えています。


 他の地域のメンバーごとにはIDを割り当ててはいませんが、コントロール装置を起動させるためのIDを奪取後の円盤にも管理者権限で登録する方法を説明済みですから、そのID宛にメール送信すれば受信は可能と考えます。


 メールを転送してみますよ。

 うまくすれば、霧島博士のコントロール装置でも受信できるかもしれませんよ。」


 円盤を奪取したときには、マシンの制御を奪うために円盤に登録されていた管理者IDでログインしなおしたのだが、やはり円盤乗船時と普段でログインIDを切り分けるのは面倒なので、俺は自分の使っているIDを円盤側にも登録しなおしたのだ。


 所長は当初、登録されているすべてのID宛にメール送信や無線の呼びかけを行っていたようだが、今では俺個人のID宛にすべて統一されている。


「分かった・・・、じゃあ後で食堂から弁当でも持ってこさせるから、それまで辛抱していてくれ。」

 そういって赤城と霧島博士は倉庫へと向かった。

 倉庫の状況をモニターで確認しながら、2人が到着したことを確認して地上へと降ろす。


「さて・・・待っているのも暇だろうから、阿蘇と大雪君はマシンを降ろして操作の練習を始めてくれるかい?」

 どうせ待っている間は何もやることはないのだ・・・、2人にマシンを触らせておくのがいいだろう。


「分かった・・・大雪君にはずいぶんと差をつけられてしまったようだから、僕も頑張るよ。」

 阿蘇が積極的にマシンを起動させて、円盤から下のグラウンドへと排出させる。


 ううむ・・・・このところ奴が積極的なのは、同じくコントロール装置を所有する、大雪君へのライバル意識からか・・・?

 まあ、俺に関してはもともとコントロール装置を使ってマシン操作していたという事実があったから、自分でマシンをうまくコントロールできなくても、あまり気にしてはいなかったのだろう。


 それが・・・この間各国の操作者たちと合同で練習会を行ってあまりの技術力の差に驚き、また今年になって入隊したばかりの大雪君にも大きく水をあけられようとしている。

 少しはやる気になったという事だろう・・・、奴の場合は目がいいわけだし、その気になればすぐに上達するはずと俺は思っているのだが・・・。


『ヒュンッ・・・ヒュンッ・・・ガガガガッ』『ヒューンッ・・・ヒョーンッ・・ガガッ』ペイント弾使用によるマシン同士の空中戦が、円盤下部で行われている。


 もちろん相手の背後について有利に展開しているのは大雪君のマシンだが、阿蘇もなかなか逃げ回るのがうまいようで、マシンにペイントがかすることも今のところはないようだ。

 なかなかの接戦を繰り広げている・・・。


『チカチカッ』そうこうしているうちに、コントロール装置右隅のアイコンがチカチカして白い手紙アイコンが表示される。

 メールが届いたのだ。


「白熱している所申し訳ないが・・・、模擬戦は中止だ・・・メールが届いた。

 阿蘇よ、悪いがこれからメール転送を試みるから、各国の円盤に向けて連絡してくれないか?


 大雪君はマシンを収容したら、ちょうど下に食事を運んできてくれたようだから、転送ビームの練習がてら食事を収容してみてくれ。」

 ちょうどグラウンドに人影が現れて、段ボール箱を置いて行ってくれた・・・、俺たちの食事が入っているはずだ。


 いきなり人や生き物で転送の練習するのは怖いので、こういったもので練習をしてもらう事にする。

 念のためにメールを開いて、所長からの添付付きメールであることを確認してから、それを各国のコントロール装置の管理者ID宛にメール転送する。


「ようし・・・送った・・・というか、送信はできたはずだ。

 メール受信できたかどうか、確認してくれるかい?」


「分かった・・・、ちょっと待ってくれ。」

「じゃあ僕は、倉庫へ行って食事をとってきます。」

 阿蘇は無線機に向かって通信をはじめ、大雪君は操作室を出て行った。


「アメリカ・・受信確認・・・、ロシアも・・・、中国も・・・。

 霧島博士からも、受信完了の連絡をもらった。


 それで・・・、向こう側世界に受信完了を送信するのは、ちょっと待っていてくれと言っている。

 添付の内容を簡単に確認したいそうだ。」

 阿蘇が霧島博士からの指示を告げる・・・、食事も来たことだし食べながら待っているとしよう。


「食事の転送は完璧です。」

 大雪君が、段ボール箱をかかえながら戻ってきた。


「じゃあ、飯とするか・・・。」

 段ボール箱に入っていた、弁当とみそ汁を取り分ける。

 豚肉の生姜焼き弁当の様だ・・・、ブランド豚ではないだろうがそこそこおいしい。


「晩飯は初めてだが結構おいしいな・・・。」

 朋美は料理上手だから毎日の食事はもちろんおいしいが、軍の弁当も結構いける。


「ああ・・・隊員が多いからね・・・、中には調理師免許を持っているのもいるから、そんな隊員が食堂勤務を命じられることが多いみたいだね。

 だからカロリーや栄養価なども、しっかりと計算されているようだよ。


 その割に僕はちっともやせないけどね。」

 阿蘇が2つ目の弁当箱に手を伸ばしながら、笑顔を見せる。


 まあガタイから言って弁当2つくらいは軽く食べるだろうし、だからこそやせるはずもない。

 3人しかいないのに弁当はまだ2つ残っているところを見ると、全員に2つずつ用意してくれたようだ。


「そうですよね・・・、アメリカの食事は決してまずくはなかったですけど、やっぱり日本の食事が一番ですよね。

 僕も日本へ帰って来てから3キロ太りました。」


 俺は一つで十分だな・・・と思っていたら、何と大雪君も2つ目の弁当に手を伸ばした。

 まあ、まだ成長期だろうから仕方がないか・・・。


「はい・・・はい・・、分かりました。

 赤城大佐から設計図の受信連絡をした後は、本日終了で帰ってもいいってさ。」

 無線機から延ばしたイアホンを耳に入れたまま弁当を食べていた阿蘇が、本日終了を告げる・・・今日も長かった。



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