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神様はじめました

「あっ!まだ入っちゃダメだって!」

「邪魔するぜ、神様」


初めて聞く声が聞こえてきました。二人とも男の人のようです。

白い壁のようなところから出てきたのは、薄いおじさんと真っ白なお兄さん。頭から足の先まで真っ白です。二人とも着ている服も真っ白な白。


なんだか変な人達です。でも、どこかで見たことがあるような、無いような?


「よお、お前がトラックか?」

「……トラック?」


不意に話しかけられてしまいました。緊張してしまいます、なにせ初対面です。まあ初対面じゃない人なんていないんですけどね。


でも、トラックってなんでしょう?陸上選手っていう人が走るところでしたっけ?


「バカ、それは別のトラックだよ。車の方のトラックだ。覚えてねぇのか?」


「うーん?と、あっそうでしたそうでした。懐かしいなあ、ほとんど毎日ドックフードを運んでいたんでした」


忘れかけていた大事な思い出を思い出します。誰ともお話できなかったし寂しかったけど、お仕事だと思えば頑張れたものです。

運転手さん元気にしてるかなあ。僕が居なくてもきちんと駐車できてると良いなあ。


「ってあれ、ちょっと待て。何でお前の考えてる事が分かったんだ俺?」


どうやら焦っているようで、それに『どうなってんだ?』と、さっきから頭の中で声が聞こえます。もう一人の僕も焦ってるんですかね?


「それについてはワシから話そうじゃないか」

声の方へ振り向くと。さっきまでの頼りないおじいちゃん、ではなく屈強な長髭さんがそこに立っていました。


「ぜ、ゼウス様……失礼しました、すぐにこの者は連れて行きます。さあ行こう鶏」


「まあ待て日本の神よ、そう焦らなくても時間は無限にある。説明くらいワシがしてやっても天照は怒らないだろう」


「ああ、そうしてほしいね全能神様。一体どうなってんだ?分からない事が多すぎる、俺はドックフードだったしこいつはトラックだったって言うじゃねぇか。どういう原理で俺逹はここに居る?」


また声がして、白服の人と同じ事を喋りました。

という事は僕も何が起こったのか知りたがってる?という事なのでしょうか?


「あとこれだよこれ、このうざったい声は何なんだ。どうやらこいつの考えてる事が分かるみたいだが、こんな現象は普通じゃありえないぞ、どういう事だ」


「せっかちな奴じゃな鶏公、いやこけ公とでも言うべきか?コケコウ……なんちって!」

「……殴っていいか?」


「なんじゃ気の短いやつじゃな。まあ、そうじゃな、その件を分かりやすく言うと君達は一心同体なんじゃ。ここだけの話、本来なら意思を持たない存在が意思を持つというのはそう珍しい事ではない。だが意思を持ったものが同じ場所で、同じ思いを持ったというのは非常に珍しい事でな。というより今回が初めてじゃ。君達の意思が共鳴し、君達は一時的とはいえ三次元的発想を超えてしまったの、いわゆる神の領域にまでな。君達はもうあの世界で生きる事は許されぬ、理を乱す恐れが出てしまったからな。だからこちら側へ来てもらったのじゃ。考えが分かるというのは、恐らくじゃが共鳴の副作用みたいな現象と思われるぞ」


「何言ってんだお前?」


夢の中の僕もどういうことか分からないようで、どういうことだかさっぱりです。


「っておい、起きろよトラック野郎。あいつの話聞いてたのか?」

「んえ?あ、うん、寝てるよー」


「それじゃ意味ねぇだろ、そうじゃなくて起きてるよって返事するんだよ、それが一般的だ」


また頭の中で声がします。怒ったような声でなにやら話しかけてきています。


分かったよもう一人の僕、起きるのは無理だけどなんとか喋ってみるよ。


「起きてるよー」

「じゃあとっとと起きろ」


ヘッドライト辺りに衝撃を感じます。ウインカーをつけたときみたいにチカチカが目に広がっていきます。

あっそうだ急いでエアバック出さなきゃ。運転手さんが危ないんだった。


「……おいジジイ、どうしてこいつはこんなバカなんだ?まるで子供だ、この状況で何も考えてない。条件は同じはずなのにどうして俺と違いが出るんだ」


「ああ……その事か。これも恐らくじゃが元の体の影響じゃろうな。貴様は一度死んだとはいえ鶏じゃから知能があったじゃろ。対してこやつはトラックだったからのう、思考することに慣れておず情報をうまく引き出せないんじゃろ」


『なるほどな』と頭の中から聞こえます、さっきまでとは違って怒ってるような声じゃないのでなんだか嬉しくなります。


いつも怒ってるなんて悲しいもんね。

良かったですもう一人の僕。


「ゼウス様、そろそろ」


「おおそうじゃったな。さて、これからの事についてじゃが君達にはこれから二人組で過ごしてもらいたい。健やかなる時も、病める時もな。それが君達を神として認める条件だ」


「はあ?こいつと一緒?何言ってんだお前」


「それについては私から。あなた達は新米、それに正規の方法でなった神ではありません。あなた達が本当に神として存在しても良いのか、それを見極めるための二人組だそうです」


「うん?そうじゃったかのう」


「それからもう一つ、神にはある仕事が割り振られています。天照様なら太陽の管理、ゼウス様で言えば神の管理と、いったようにですね。あなた達にも仕事は既に割り振られています。詳細は天照様がお話になるそうです。さあどうぞこちらへ」


「おい待てよ、神の管理はじいさんの仕事じゃないのか?なぜ太陽神のところに行くんだ」


「……あ、ああ、少し事情があってですね。まあとりあえず一緒に来てください」


瞬間。ほんの一瞬。

長髭のおじいさんの雰囲気が少しだけ固くなりました。

なぜだかこの事は話さないのが良い気がします。


「ふーん、なるほどなそういう事か」

あ、そういえばもう一人の僕とは心が通じあってるんでした。

ごめんなさいおじいさん、だけどもう一人の僕だから大丈夫だよね。


「ああそうそう、鶏やトラック呼びではこれから先いろいろと面倒だろう。ワシが考えてやっても良いが、何か希望はあるか?」


「名前?いらねぇよそんなもん、名前なんて俺はもう貰ってるんだよ」

「ほうそうじゃったのか、それは聞いても良いのか?」


「ああ、俺は……」


トラックだった事は大事な思い出、でも思い出には戻れない。

新しい名前をもらった僕は神様になったそうです。

光り輝く女神様、とても小さな世界の観察。素敵な事がたくさんありました。まる。

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