第三話、ドックフードではなくなった
「う……ん?ここは?」
目を開けると、そこは白世界だった。
何を言ってるかわかんねぇと思うが俺もわかんねぇ。
なんだこれ?なんだこりゃ?
あれ?なんで動けるんだ俺は?死んでドックフードになって運ばれてるてたはず。だよな。
なのに、なんで二本足で立ってるんだ?しかも人間みたいにふっとい足で。
俺のスマートな鳥足もトサカもねぇ。これ、人間の体だよな?
「ようやく目覚めたか、ドックフードよ」
「あ?」
瞬間。ムカつく言葉が俺を支配した。
イライラするぜ脳内に直接言いやがって。ファミリーなマートでもこんな事しねぇぞ。
「ふざけんなてめぇ!誰がドックフードだこら俺様は鶏だぞ!?なめてんのか!」
返事が無い。ただの無視のようだ。
「おい聞いてんのかクソ野郎!?」
「ご、ごめんなさい……お願いだから怒らないで……」
「……ひよるなら最初っからその態度で来いよ」
「 それで? どういうことなんだこれは?」
「い、いや、実は偶然にも君には意思が芽生えたんだよ。なんで意思ができたかの理由は神である私にも分からない。ただ、君はあの世界での禁忌を破ってしまったんだ、本意かは知らないけどね。だから世界の外側であるこっち側へとりあえず来てもらったってわけなんだ。」
「長い、三行で 」
「え?」
「だから、分かりやすいように三行でもう一回説明しろ」
近づけていた頭を更に近づけて、ぶつける。
つまり頭突きをした。どうやらこいつは話しすぎる癖があるようでこの方法が一番だった。
「分かったから!分かったからもうやめてって!えっと、えっと。君達は前の世界から消えて、神の世界へ来たんだ」
「なるほどな、よく分かったよ」
「そ、そうかい。それなら良かったよ。じゃあこれからの事について説明とかあるから天照様のとこに連れて行ーー」
「ちょっと待て、お前さっき『君達』って言ったよな、という事は俺以外にも意思を持った奴がいるって事だよな?」
「ああ、その通りだけど先に天照様のとこにーー」
「なるほど……面白いじゃねぇか。よし、そいつのところに連れて行け」
「……え?」
体を持ったばかりなのに、不敵に笑う元ドックフードこと元鶏。
争いごとに慣れてないとはいえ、神を操る知識を持っている彼は一体何を考えているのだろうか。
それはきっと神様にも分からない。