第二話、トラックでは無くなりました
「めざめろ……目覚めるのじゃ……」
不穏な声が響き渡ります。周りにじゃなくて頭の中で。
「うーん……あと五分……」
「めざめろ……目覚めるのじゃ……」
またガンガンと響いてきました、どうやらそこまでして起きてほしいようで何度もなんども言われます。
でも……でも、分かってくださいもう一人の僕。なぜだかとってもねむいんです。
「……あのー、そろそろ起きてくれませんか?カミさんが怒ってきたので」
今度はそう言われたかと思ったら、ドゴォ!というような強い音が聞こえてきました。
うるさくて全然ねむれないです、はあ。
まだ寝ている体を起こして、目を開けていきます。見えてきたのは……
「あれ?なんで見えてるんだろう?」
目の前には、白い世界が見えてました。
先の先のそのまた先の、その先の場所まで。はっきりくっきりと。
ふしぎです、ありえない、見るってこういうことなのでしょうか?かんちがいじゃ……ないようです。
気がつけば手もあるし、体もあります。一体どういうことなんでしょう?これじゃあまるで。
「おお、やっと起きてくれたか!助かったぞ!」
今度は頭の中からではなく耳から聞こえてきました。その声は男の人のようで、はたまた女の人のようで。
聞くってなんだが不思議な気持ちになります。でも楽しい気持ちになってきます。あれ?楽しい?
「どうやら気づいたようじゃな、そうお前さんには感情がある。そして今は体もな。ただの鉄の箱だったお前さんには、ちと混乱するじゃろうがなあにすぐ慣れるじゃろ」
「えっと、あなたは?」
「やはりまだ知識や記憶は無い、か。ふふっなら教えてやろう……わしの名は……」
「ちょっと、前置きが長いですよ、早く話してあげないと可哀想ですよ」
「あっはいすみません」
今度は髪の長い方が現れます、あっちの薄い人が男だとするとこの人は女性っていうやつなのなんでしょうか?
「わしは……神じゃよ」
「はい?」
突然現れた存在は自分を神と呼んだ。
神をうまく理解できなかったトラックであったが、自分に起こった事は理解ができた。
これからはドックフードを運ぶだけじゃない、キャットフードとかも運んでみたいな、そう思ったトラックであった。