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7:理由を知ろう。

 どういうことなのかと立ち止まり考えていると、急に周囲の霧が晴れて視界が広がった。


 知らないうちに妙にゴツゴツした石造りの地面に立っていて、少し前方で地面が途切れてその向こうに海が広がっていた。

 今立っている場所は水面からかなり高いようだ。かなり大型の船が着くのだろう。



 お姉ちゃんを探そうかと思ったが向こうは見た目について何も言って来なかったし、立っていれば見つけて声をかけてくるだろう。



 ふと自分の背中に翅が生えていることを思い出し、動かせないだろうかと意識を向けてみる。

 ……んー? 動いてるようなそうでもないような、微妙な感覚だ。

 試しに付け根を手で持って動かしてみよう。


 ホァッ!?


 なんだこれ、凄い敏感だな……

 油断してたからくすぐったくて変な声出そうになったよ。


 背中の力を入れたり抜いたりしながら手で翅を動かしてみる。

 なんとなくわかったかも? ……おっ、動いた動いた。



 ってさっきから足元変な感じだなーって思ってたら私裸足じゃないか!

 しかも何この服!?服っていうかもうこれ水着じゃん!

 装備着てない状態で放り出されたとか!?


 慌ててステータス画面を開いてみると【妖精の服(上)】【妖精の服(下)】をきちんと装備していた。

 これが装備品とか…… マジかよぅ……

 どう見ても水色ビキニ(パレオ付き)じゃないか……



 ジロジロ見られてはいないかと振り返り、怪訝な顔になる。


 私から三メートルほどの距離に焦げ茶色の巨大な何かがあった。

 幅一メートル位、高さは低い所で六十センチくらいで奥に行くほど高くなっている。

 奥行きは二メートル半くらい。

 

 一番奥の辺りから上に向かって横幅と同じくらいの太さの白い柱が伸びている。

 それが二セット。上を見るとそれらは途中で一つに繋がり、より太い柱となっていた。



 その焦げ茶色の物は見たことがあるし、何なのかも解る。

 解らないのはその大きさと、それを「履いて」いる何かが居るという事態だ。


 解らないというよりも理解し(わかり)たくない。



 混乱から立ち直る前に、遥か上空から大きな声が響いた。


「おかしいなぁ、もう着いてるはずなんだけどなぁ」


「妹さん、背が高くて緑の髪の方でしたよね?」


「うん。目つきは悪いけどかわいーの」


「それっぽいのは見当たらないねぇ」


 うっさい。目つきは余計なお世話だ。

 なんて言う余裕はない。目の前の(コレ)、お姉ちゃんか……


 さらに十メートルくらい向こうに柱が四本、離れているから見上げればなんとか顔が見える。

 合流するって言ってた友達だろうか。見た感じ【魔人】と【獣人(兎)】かな?



 呆けている場合じゃない、気付いてもらわないとヤバい。

 目の前にいる「姉」の巨大さに腰が抜けてヘタりこんでしまっている。


 「お姉ちゃーーーん!!!」


 全力で叫んだ。これで下を見てくれれば……えっ?



 嘘っ!?聞こえてないの!?

 なんでこっちに足を上げてるの!?


 奥に居た兎耳のお姉さんと目が合った。気付いてくれている!

 「えっ!?」という声と驚いた表情。

 必死で手を伸ばし叫ぶ。


「たすけ    」



──────────────────────────────



「それっぽいのは見当たらないねぇ」


 ベータテストでパーティーを組み仲良くなった友人、ミヤコ。

 その妹が来るという事でもう一人の友人と一緒に迎えに来たわけなんだけど……見つからない。


 百八十センチ近くあってとても目つきが悪い緑髪の女の子なんて居ればすぐに判りそうなんだけどねぇ。


 ん?なんか今凄く小さい声だけど「お姉ちゃん」って聞こえたような?

 しかも妙に下の方から……



 気になって視線を下げてみる。


 目に映ったのは肩までの緑色の髪をした人形サイズの女の子。

 露出の多い服装で地面にペタンと座っている。

 思わず「えっ!?」という声が出た。



 少女は必死の形相でこちらへ手を伸ばし叫ぼうとしていた。

 しかし次の瞬間、助けを求め伸ばした腕だけを残して友人の靴の下へと消えた。



 兎族の特性と索敵用に取得した【聴覚強化】が合わさって強化された耳は、途切れた叫び声と「ブヂュッ」という柔らかい物が押しつぶされる音をしっかりと捉えていた。



 私の声を聴いたミヤコが「どうしたの?」と言い、少女を踏みつぶした足を軸にして体をこちらへ向ける。


 視線を外せずにいたせいで、唯一残された腕までもが靴の動きに巻き込まれてすり潰される所まで全て見てしまった。



 口を押えて吐き気に耐えていると、少女だったであろう痕跡が光に包まれ消えていった。

 あれはプレイヤーの死に戻りエフェクトだったはずだ。


 一旦目を瞑り、呼吸を整えて目を開ける。



 顔を上げるとミヤコともう一人の友人、レティが心配そうにこちらを見ていた。


「大丈夫?どこか具合でも悪いの?」


「……いや、もう大丈夫。妹って緑の髪だったっけ?」


「えっ?うん、そうだけど…… どうしたの?」



 周りを見ても未だにそれらしき子は居ない。

 多分今の子だろうねぇ…… お姉ちゃんって言ってたし。

 ランダムのレア種族だろうか?

 


「ちょっと噴水広場(復活地点)に行こう」


「えっ?」


「まだ妹さんが見つかっていませんよ?」


 さっきのを見たのは私だけだし疑問に思うのも当然か。

 レティも私の心配をしてくれていて見てないみたいだ。



「妹さんなら多分ミヤコが踏んだよ」


「へっ?」


「どういうことですか?」


「見れば解るさ。

 ミヤコ、一応妹に『噴水のある広場に行きます』ってメッセージ送っておいて。

 私の勘違いだったとしてもそれで合流できるさね」



「場所がわからないかも知れないじゃない」


「それならそれで返信してくるさ」



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― 新着の感想 ―
[一言] ハーメルンの小説紹介からこの作品に来ました。 妖精の扱いが... 女主人公の扱いが...           絶句。 スペランカー系主人公小説として覚悟して読ませて いただきます。
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