51:爆ぜた。
※久しぶりにグロ注意?
いやぁ、参った。
自分がグロくなるのはいつもの事だけど、見る側になったのは初めてだわ。結構きっついなぁ。
魔人さんの体が風船みたいに膨らんだと思ったら砕け散って、その破片を浴びて私も死んだっぽい。
おっと、そういえばまた近くに出ちゃってるのか。潰される前に離れなきゃ。
あー、ぷるぷる震えちゃってるな。流石にあんな死に方すれば仕方ないか。
「す」
す?
「……っごい気持ちよかった!!」
えっ、何この人こわい。
体の内側から破裂させられた感想が気持ち良いってどういう……
「あぁっ待って待って、ちょっと待って違うのそうじゃないの引かないで逃げないで」
いや、そんなの引くなって方が無理でしょ。
とりあえず役場に戻ろうか。兎さん置き去りだし。
無視していくのは流石に悪いから、ほらいくよーと手招きしてから行こう。
役場に着いたら再度珠ちゃんを放流だ。たびたびごめんね。
あれ、中庭にジョージさんが居る。
兎さんの肩をポンポン叩いて消えたな。なんなんだ。
「戻りましたー」
「来たよー」
「大丈夫? って死んだんだから大丈夫じゃないか。ごめんね、また死なせる羽目になっちゃって」
「いや実行したのは私ですし、ペナルティもありませんから大丈夫です」
痛いって思う間も無かったしね。
「というか、ジョージさんは何しに来てたんですか?」
「さっきのやつ、近くに居たから避けきれずにちょっと肋骨を二、三本貰っちゃったんだけどね」
肋骨を貰うって表現、初めて聞いたわ。
「いきなり現れて怪我を治してくれたんだ。帰り際に頑張れよって肩を叩かれたけど何だったんだろうね」
「振り回されて苦労してるって思われたんじゃないですか?」
「うん、それはまぁ否定出来ないな」
私もジョージさんに迷惑かけてる自覚はあるからなー……
でもわざとじゃないんだよ。
「あと一つ聞きたい事があるんですが」
「何かな?」
「この人って痛いのが気持ち良い人だったりするんですか?」
「へっ!? え、お前、そういうアレなの?」
「えっ、何? 私妖精さんの声聞こえないから、話が解らないんだけど?」
「いや、痛いのが気持ち良い人なの? って聞かれたんだけど」
「いやいやいや、誤解誤解!! さっきのはそういうのじゃないの!」
えー? でも確かに、指を持っていかれた時は普通に痛がってたな。
「どうしてそんな事を?」
「さっき復活した時の第一声が『すっっっごい気持ちよかった』だったんですよね」
「えぇ…… お前、破裂して気持ち良いって頭大丈夫か?」
「いや、確かに言ったけどさー。あんたも受けてみたら解るよ?」
「嫌だよ、誰が好き好んで砕け散るんだよ。しかも妖精さんが巻き添えになるじゃないか。言葉で説明してくれよ」
「まぁそりゃそうなんだけどさ。えっとね、痛みは最後まで全く無かったんだよ。むしろ逆だったね。さっき妖精さんにふーってやってもらった時、気持ちよかったでしょ?」
「ん? あぁ、そうだな」
「あれの強力なのが全身に行きわたる感じ? マッサージが気持ち良すぎて寝ちゃったような感覚で、気付いたら噴水だったよ」
「ほー。そう言われれば少し興味は……いややっぱ無いわ。妖精さんもやらないって言ってるし」
両手でバッテンだ。こっちだって人を爆破したくなんてないよ。
「でも、流し込んだらああなっちゃうとなると困りましたね。さっきので何か掴めましたか?」
「ううん、気持ちよかっただけでよく解らなかった。駄目かぁ」
「さっきのって、一気に送り込んだから爆発したんですかね?」
「判んないけどそうかも? それじゃ今度はちょっとずつ入れてみて貰えるかな?」
予告なしに突き出してくるんじゃないよ。ビックリするじゃないか。
「良いですけど、さっきの事もありますし安全は保障できませんよ?」
「大丈夫大丈夫。今日はどうせ狩りに行かないしね! ステータス低下なんて気にしない!」
「いや、経験値は気にしてくれよ。あんまり無茶されると何故か俺まで文句言われるんだからな?」
「減ったら稼げば良いんだよ。それじゃどうぞ!」
兎さんも大変だなぁ。
いや、他人事みたいに言ってるけど、殺したの二回とも私なんだけどね。
まぁ置いといて、それじゃ両手で指先を掴んでと。
流し込み過ぎないように、目を閉じて集中していこう。
ちょっとずつちょっとずつ……
「ふわぁ~……」
いや気持ち良くなってないで集中してくれ。
「お前な、真面目にやれよ」
ペチッて聞こえた。頭をはたかれたか。
「ん? 何か妙な……」
兎さんが何か気になったみたいだけど、どうしたんだろ?
まぁいいか。とりあえず私は流すだけだ。
「んふぅ~、とろけるぅー」
おいこら。
ん? なんか掴んだ指先の感触がおかしい……?
そういえばまた魔力が帰ってきてないぞ。これヤバくない? 目を開けた方が良いかな。
あっ。これヤバいどころじゃない。なんか魔人さんが柔らかくなって輪郭が崩れ始めてる。
ちょっ、こっちに倒れてきた!? ええい、【跳躍】!
あぶなー、また死ぬところだった。真上に飛んだみたいだな。
うわぁ、とろけるぅーって言ってたけど本当にとろけてるじゃないか。
あぁ、もう肌色のスライムみたいになって……
あ、駄目だこれかなり精神に来るわ。中身が表に来て赤黒くなったりしてないだけマシだけど。
あんなになってるのに気持ちいぃー……とかあはは……とか言っててマジで怖い。完全にホラーじゃないか。
ていうかどうやって声出してるんだアレ。
あ、兎さんが吐いてる。そりゃ知り合いがあんなんなったらそうなるわ。
というか、私もヤバい。あ、無理。出る。
ふぅ…… 今更だけどこのゲーム吐けるんだな…… 誰が得するんだよ、この仕様は。
てかね。うん、本当にごめん魔人さん。混ざった。
あ、消えた。……私のが混ざったせいじゃないよね?
うん、多分普通に死んだだけだよね。きっとそうだ。
ん? 私が口から吐いた……? なんか嫌な予感がするぞ。
ちょっとパネルを……
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【溶解吐息】
口から強酸の魔力を吹き出し、吹きかけられた者を溶解させる。
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やっぱり増えてるじゃないか!
魔力込めた覚えもないし一回しか出してないよ!!
もう開発が何考えてるかさっぱり解らないよ!
「ただいまー!今のも気持ちよかったー! あれ、二人とも元気無いねー?」
「お前なぁ…… あんなもん見せられて元気な訳ないだろ……」
「よく解んないけど、なんかごめん。あっ、妖精さん。やっぱり魔力は判らなかったよー」
うん、完全に負けてたしね。知ってた。
あと気付いてないっぽいので、かけちゃった事は黙っておこう。そんな事実は無かったんだ。




