3587:やめておいた事を聞こう。
「いや、やらなかった理由は時間じゃない」
「ん?」
おや、時間じゃないなら何だろう。
単に気にはなるけど重要じゃないし面倒だっただけとか?
「単純にやりたくなかったから、やるなら誰かに押し付けようと思ってな」
「……どういう調査だ? ろくでもない目に遭うんだろうなって事だけは察せるけど」
なるほど、そういう方向性か。
アリア様なら危険が無いなら構わんとか言いそうだけど、アリア様がやるなら自分もやらないといけなくなるだろうからって事で頑張って説得してそうだな。
「先輩、聞こえてるっす」
「こっちチラ見しないでほしいっす」
ろくでもない目に遭わされそうな後輩組が、一応抵抗の意思を示してる。
でも「やれ」の一言で「うす……」ってなるんだろうなぁ。
「内容自体は単純だよ。一つはどのくらいまで吸い寄せるか、要は射程距離の問題だな」
「あぁ」
「他の魔法と同じだとしたら、確認方法にもよるけど最悪白雪に向かって体感四千メートルほど落下する羽目になる」
「あぁ……」
判りやすく「そりゃ確かにやりたくないな」って顔になるサキさん。
四千っていうのは【妖精】の射程が私達基準で二十メートルくらいで、さっきの大きさを考えてそれを更に二百倍って事かな。
でもその状況って、まず離れた状況からゆっくり近づいて行って、どのくらいの距離で吸われ始めるかって確認方法だよね。
まず触って縮めてる時点で密着した状態からスタートなんだから、何かに掴まったり乗ったりした状態で私が離れて行って、射程外になった瞬間に横向きに乗ってた何かから落ちるくらいじゃないかな?
それだと机とかに置いてれば大した距離は落ちないし、そこまで怖くはなさそうだけど。
まぁ何か足が滑ったりとかの事故が起きて落ちちゃう可能性だって有るんだし、出来る事ならやりたくはないか。




