34:見世物になろう。
屋台エリアに入ると周囲の店からの激しいアピール攻勢を受ける羽目になった。
「うーん、こりゃ続けて同じ店に行くと恨まれそうだねぇ」
「いやー、なんかごめんね」
「いやまぁ別に白雪は悪くないけどな。言ってみただけさね」
アヤメさんの苦笑交じりのぼやきに謝っておく。
少し気圧されつつ歩いた結果、ソースの匂いに敗北して焼きそばっぽい物を買った。
先頭を歩いてたアヤメさんが店の前に立った瞬間に奥のおじさんがガッツポーズを取り「ッシャ!」とか言って、周りの屋台からはガッカリした声が聞こえる。なんなんだあんたら。
「三つ頼むよ」
「あいよー!銅貨九枚だ!」
支払って全員分を受け取ったら、なぜかもう一枚お皿が出てきた。
三十センチくらいの麺が三本と水が入った器、それと私サイズのクッションのような物まで乗っている。
これ、もしかしなくても私の分か。
それをカウンターに置かずに、少し身を乗り出して屋台の柱から突き出た台に置いた。
あれ、今朝通った時そんなの付いてなかったと思うんだけど。
「これは白雪ちゃんの分な! 手が汚れたらその水で洗ってくれ!」
なんで専用スペースみたいなのまで作ってるんだよ。
せっかく作ってくれてるんだからありがたく使わせてもらうけどさ。
一旦クッションに着地し皿に足を降ろしてみると、冷たくない程度に温められていた。何この気配り。
麺を手に取ってみる。なんていうか長さといい太さといい、魚肉ソーセージって感じのサイズだな。
顔にソースを付けない様に気を付けて食べる。流石に若干味にムラがあるけど美味しい。
もきゅもきゅ食べ進み、一本完食して周りを見るとほっこりした顔が並んでいた。
ええい、見世物じゃ…… いや今は見世物みたいな物か。我慢しよう。
でもお姉ちゃん、君は近すぎる。離れたまえ。っていうか皆、見てないで自分の分を食べなさいよ。
三本とも食べ終わって手を洗い、クッションで一休みする。
ふー、やっぱりまともな食べ物はいいなぁ。
お腹は空かなくてもやっぱり食べられるなら食べたいよね。
いや、別に現実で食べればいいじゃんって話なんだけどさ。
皆も食べ終わったようなのでお皿から飛び立ち、おじさんに一礼して離れる。
流石にずっと飾りになっていたくはないのだ。
南通りへ入り、外側へ向かって進む。
そちらに外で得たドロップ品の買い取りなどをやってくれる施設があるそうだ。
食堂や訓練場のようなものも併設されているそうで、殆どの人はこちらでスキルの練習をしたりするそうな。
それで中庭は全然人居なかったのか。
まぁ私はうっかり接触したり小石が飛んで来たりするだけで死ぬから、別の場所でやった方がお互いの為に良いんだけど。
お話に出てくる冒険者ギルドのような物を想像したけど、中に入ってみると郵便局みたいなレイアウトだった。
お屋敷を流用した役場よりよっぽど役場っぽい。
日が暮れる時間帯だからか、結構混んでるな。
お姉ちゃんが「雪ちゃんは危ないから二人と食堂で何か飲んでてね」と言い、一人で列に並んだ。
言葉だけ聞くと子ども扱いみたいだな、と思いつつ三人で食堂へ向かう。
お茶を飲みつつ外の話を聞いてたらお姉ちゃんがやってきた。
「あんまり高く買ってもらえなかったよー」
「今は皆同じ様な所で狩っているでしょうし、持ち込む物も似通ってしまいますから仕方ないですね」
「だな。初めのうちは仕方ないさ。いくらになった?」
「一人銅貨五十枚だね。どっちか細かいのある?」
「では私がアヤメさんに銅貨を渡しますので、銀貨を一枚こちらにお願いします」
三人で一日狩りをして銅貨百五十枚くらいかー。
蜜の値段がどれだけ異常かよく解るなぁ……
せっかくなので訓練場を覗いてみることにした。
多分使わないと思うけどなんとなく見てみたい。
食堂から最初の建物へ戻り、反対側の扉をくぐると広い庭に出た。
高い柵で囲われた運動場みたいだ。木の柱が立ててあるのは的かな?
こちらは思ったより人が少ない。ある程度練習したら外で実戦に移るだろうし当たり前か。
「せっかくだから何か試してみるかい?」
何かって言ってもなぁ。
「うーん、弓は一応持ってるけど私サイズだからなぁ。刺さりすらしなさそう」
「そっか。あぁ、そもそも別の所で練習はしてたんだっけ」
「うん。あ、そうだ」
【魔力武具】の本来の使い方とか試してみようかな?
重さも無いからでっかい剣とかも振れるんじゃなかろうか。
「ん、なんだい?」
「やってみたい事思いついた。あの柱って攻撃していいの?」
「あぁ。そのために立ててある奴だから、真っ二つにしようが焼き尽くそうが問題ないよ」
「流石にそんなのは無理だろうけど、それなら心配はないね」
近くに人が居ない柱を選んで近づき、【魔力武具】でまずは普通のサイズの剣を作ってみる。
剣の使い方なんて知らないから適当に斜めに振り下ろしてみる。えいやー!
剣は少しだけ食い込んで止まった。そして何も考えずに思いっきり振り下ろした私の手にモロに衝撃が返ってきた。
うおおおお…… しびれがー……
うん、刃が入ったのは良いけどその先の厚みの分切り開かないといけない訳で。
そんな力も重量も無いなら止まるよね。とりあえず吸って消しておこう。
「え、何やってんの? なんか振るような動きしてたけど」
小さい上に透明に近いから見えなかったのかな。
「【魔力武具】で作った剣で切ろうとして失敗した。手がしびれるよぅ」
「へ?【魔力武具】? 何それ」
え?
「【純魔法】の魔法の一つだけど?」
「【純魔法】ってのも初めて聞いたんだけど……」
「リストには載ってないようですね」
確認早いなレティさん。
「おー、隠しスキル? 雪ちゃんすごーい」
そうなの? なんか気付いたらあったからありがたみが薄いな。
とりあえずパネルを見せておこう。
皆が読んでいる間にもう一回試してみる。今度は刃を限界まで薄くしてみよう。
よし、出来た。私から見ても殆ど厚みを感じられない程の薄さだ。あっ。
折れた…… 薄くし過ぎて強度が無くなってしまったらしい。
柄の部分だけを吸って、残りは普通に消しておいた。
「魔力を飛ばす攻撃魔法と、魔力で武器を作る魔法か」
「そんな感じかな? 武器に限らず色々作れるみたい」
「ん、何か作ってみたのか?」
「丸底フラスコ」
「何でフラスコ…… まぁ便利そうだって事は解った」
うーん、使う魔力を増やして強度を高められないかな?
ちょっと過剰なくらい使ってみよう。うん、横に振っても折れないぞ。もう一回、えいやー!
あれっ?
おかしいな? 剣は折れてないしちゃんと手元にある。空振ったかな?
今度はよく見てゆっくり、とりゃー。
……これ切れ味ヤバくない? なんの抵抗も無く刃が入っていったんだけど。
ただ、途中で止めたせいで挟み込まれたのか全く動かなくなってしまったぞ。
仕方ない、吸って消しちゃおう。




