3059:冗談を真に受けよう。
「あのさ」
「ん?」
む、アヤメさんがちょっと困った感じの顔してるけどどうしたんだろうか。
「微妙に納得してるとこ悪いけど、実はあれあんまり意味無いからな?」
「え」
「いや普通に考えてあれで服や髪は乾かないだろ。何もやらないよりはマシだろうけどさ」
「……確かに」
冗談で言ってみたら私が真に受けたからどうしようって顔だったか。
まぁ飛び跳ねて受ける風で少し乾いたり叩きつけられた時に衝撃でちょっと抜けたりはするだろうけど、あの濡れっぷりだと誤差でしかなさそうだもんなぁ。
麺類や野菜の水切りとかと違ってしっかり染み込んで……ん、麺には染み込んでるのか?
いやうん、そこは本気でどうでもいいな。
それによく考えたらあんな事されてるのに潰れずにポンポン跳ねてる時点で、見た目に反してかなり繊細な力加減で振ってるんだろうね。
前衛の人が頑丈なのを差し引いたとしても、私がお姉ちゃんに同じ事をされたらおたまの穴からいろんな水じゃないものが飛び出してる気がするし。
「ほーいっ、と」
あ、グロくなりそうな想像してたらサキさんが大きく跳ね上げられて、ぽーんとリアンの左手に放られて綺麗に着地してる。
何気に空中を蹴って体勢を整えてたけど、あれだけ激しく跳ねまわっててよく自分の状態を把握出来るもんだね。
「こいつとペアは嫌なんすけどー」
「こっちだって御免だっての」
おや、何やら注文が入ってリアンが一瞬止まったな。
二人をセットで掬おうとしてたのか。
いやあれを二人まとめてやるのは危なくないかな。
そもそも一人でも十分過ぎるくらい危ないから大差無い気もするけどさ。
「うへぇ……」
「なんだこのやろう」
「私らと一緒がそんなに嫌か? お?」
「いやそんな事は無いっすけど……」
いやリアン、二人が嫌っていうのは三人なら良いって事じゃないと思うよ。
あとハルカさんがマジすかって顔になるのもしょうがないと思うから、そんないきなり団結して絡みに行かなくても。
いや何が言いたいか解った上で後輩で遊んでるだけだろうから別に良いんだけどさ。




