2892:柔軟な発想を持とう。
「デカくて柔らかい相手に打撃で挑んでどうすんだっつー話だよな。まぁボクサーにそれを言うのは酷なんだけどよ」
「そりゃそうだ」
うん、基本的にその打撃で競い合う格闘技だもんね。
たまに瞼とかが切れたりするらしいけど、それも普通は意図して切ろうとしてる訳じゃないだろうし。
「あいつら変に真面目っつーか健全だからなぁ」
「良い事じゃん」
「そりゃそうなんだけどさ」
まぁ確かにそういうグレーゾーンな攻撃が普段からの選択肢に入ってないっていうのは、格闘家としては判らないけど一般的な感覚で考えると良い事なのかな?
サキさんがちょっと苦笑気味なのは、ゲームの中でまでその常識に縛られなくて良いだろうって話だろうね。
「つーかあんたはあんたで空手だろうに」
「ん? そりゃ斬るだろ」
「いや当然の様に言われても困るんだけど」
サキさんの「何言ってんだ?」って顔に言葉通りの困り顔になるアヤメさん。
多分一般的なイメージの空手は斬撃を放ったりしないと思うんだ。
瓶を斬ったりはしてるけど、あれはパフォーマンスの一種だろうし。
「まぁうちのは元々古流も古流、組技とか武器術まで含んでる様な時代のやつだからな」
「ほー、なんか凄そうだな」
「おう、うちの爺ちゃんはすげーんだ」
「急にそんな嬉しそうな顔されても反応に困る。ってか背中を叩くなって」
……サキさん、実は凄いお爺ちゃんっ子だな?
良い笑顔でそうだろそうだろーってバンバン叩いちゃってるけど、あれは癖みたいなものなんだろうか。
というかさっきから目の前のカトリーヌさんが放置されてるんだけど。
いやカトリーヌさんだからそれは別に問題無いな。




