2833:選ばせてあげよう。
おっ?
なんかパンッて手を叩く音が……
「うぇっ……」
あぁ、向こうに居る魔人のお姉さんが鳴らしたのか。
鬼のお姉さんがすっごい嫌そうな顔してるし、多分知り合いの人なんだろうな。
あの人も鞄に手を入れながら近づいて来るけど、今度は何が出てくるんだろう。
「あなたが殴られるのは、こちらの鉄の鎚ですか? それともこちらの樫の槌ですか?」
……おっとりした雰囲気のお姉さんが両手にハンマーを持ってゆっくり歩いて来るの、普通に怖いんだけど。
言ってる事の割に優しそうな笑顔だから余計にね。
「す、素手でお願いします」
「正直なあなたには全て差し上げましょう。反射で動いて人に迷惑をかけない様にと、いつも言っているでしょう?」
……失礼しましたと丁寧にお辞儀をしてから、鬼さんを何処かへ引きずって行く魔人さん。
あの人、種族補正でちょっと巨大化してる相手をなんで片手で連れて行けるんだろうか。
まぁその辺は気にするだけ無駄なんだろう。
種族補正が無くても完全に前衛のスキル編成でそれなりに強化されてるとかかもしれないし。
「なんでこう魔人は変な奴が多いんだ」
「心外ですね」
……まぁレティさん、ステータスとか役目的には普通だしね。
アヤメさんは色々と言いたそうだけど、飛び火してきても困るから私は何も考えないでおこう。
どうせすぐバレるし。




