2813:喋ってないで働こう。
「まぁこんな居るか居ないか判らない様なモブは放っといて良いよ」
「酷い言われ様ですよ」
いやそれを私にアピールされても困るんだ。
居るか居ないかはともかく、見た目は小っちゃくて可愛いしその他大勢って感じでもないのは確かだけど。
……ただ見た目が可愛くてもそれが見えないっていう大問題があるんだよね。
見た目が悪くて周りに迷惑かけてる私としては、心底羨ましい能力なんだけど。
「ほら、またこっそり出して来てるから仕事仕事」
あ、いつの間にか無音で料理の乗ったお皿が小窓の所に置いてある。
「っつか冷めるから黙って置くなっつってんでしょ」
うん、声を出すのが恥ずかしいんだとしても、それならそれでベルか何か置いた方が良いと思うよ。
……目立つ音を鳴らして視線を向けられるのも駄目なのかもしれないけど。
って一瞬目を離した隙に、また薄い方の店員さんが消えてるよ。
まぁお皿が減ってるって事は配膳しに行ったんだろうから、あんまり気にしないでおこう。
「そんじゃ、ぼーっとしてたら働けーって蹴りでも入れといて」
「いや流石にそれは……」
お皿を持ちながら無茶振りしてくる店員さん。
いや出来なくは無いけどこのサイズで蹴ってもあんまり意味無いというか、むしろ逆に喜ぶ人の方が何故か多いよね。
確かに【妖精】のキックなんて、にゃんこの肉球すたんぷと似たような攻撃なんだろうけどさ。




