2730:見えない人の事も言っておこう。
あと研究所の人達も濃いと言えば濃いんだけど、あっちは普通にちゃんとお仕事してるからそこまででもないのかな。
街中担当の普通の隠密さんと同じで、異様にっていう程ではなさそうだしね。
ジルさんがちょっと怪しい気もするけど、まぁあのくらいなら個性的って程度で収まるだろう。
あぁ、そうそう。
「あと一人、薄過ぎて逆に濃い人がいます」
「……どういう人なの? あまりにも特徴が無さ過ぎるとか?」
「いえ、なんか極度のというか限度を越えた恥ずかしがり屋のお姉さんらしくて」
「絶対に表には出て来ない、と?」
「まぁそれで間違いではないですね」
実際姿は現さないし、レティさんやアリア様みたいな限られた人以外は声すら聞かせてもらえないし。
「ただちょっと隠れ方が常軌を逸してますけど」
「同僚にも見つけられないって事?」
「いえ、凄い【空間魔法】の使い手で別の次元にまで逃げてます」
別の次元に居るというか上の次元に居るというか。
まぁ私達と同じ空間には存在しないって事ね。
「……逸するにも程があるんじゃない?」
「凄いですよね」
「凄いけどね?」
「薄いと言いますか、通り越してもはや無なのでは?」
確かにエクセルさんの言う通りかもしれないんだけど、ただ薄いの方が言いやすいんだよね。
別にそう言えって言ってる訳じゃないんだからどうでも良い事なんだけど。
「あ、あと一応気をつけておいてほしいんですけど」
「その人の事で?」
「はい。さっきも言ったけど恥ずかしがりな人なので、すごいなーって褒められると照れちゃいます」
「ん? 褒めるのは止めておいた方が良いって事?」
「いえ、喜んでくれてるとは思うんですけど……」
「では他に問題が?」
「あんまり褒め過ぎると、恥ずかしいのでその辺で勘弁してくださいようってくらいの感じで、【空間魔法】で首を切り離そうとしてきます」
「……大問題じゃないの」
「まぁ【妖精】相手に魔法を撃っても効果は無いって判った上でやってますから。ちょっと失礼かもしれませんけど、子供が大人をぽかぽか叩くのと似た様なものですかね」
「なるほどー」
「こっち見るんじゃないわよ」
……なんか思わぬ流れ弾がエニュアンさんに飛んで行ったな。
確かに普段の本気で怒ってないじゃれあい程度の打撃だったら、エクセルさんにとってはそんな感覚なのかもしれないな。
多分普通の人が食らったら一発で吹っ飛ぶ様な威力なんだろうけど。




