27:話を詰めよう。
とりあえず役場に戻ってみよう。
そういえばNPCの人達って、目の前で死んだプレイヤーはどういう認識になるんだろう?
まぁ行ってみれば解るか。
役場に戻ると入り口の前にメイドさんが立っていた。
私を見て頭を下げる。
「あのような目に遭わせてしまい、申し訳ございませんでした。
姫様も謝罪したいと仰っているので、お会いして頂けないでしょうか?」
「あ、はい。そのつもりで来たので大丈夫です。
お待たせしてはいけませんし行きましょう」
本音を言うと、今凄い目立ってるんでさっさと奥に行きたいんですよ。
めっちゃ見られてるもん。
執務室の前に戻ってきてメイドさんがノックすると「入ってくれ」と返事があった。
あったのは良いんだけど、なんか中で急いで移動する音とダンッという叩きつけるような音が。
なんの音だろう?
メイドさんがドアを開けて中へ入ったので私も続く。
……部屋の真ん中で王女様が土下座してるんですけど。
反射的にUターンしそうになったのを抑えて頭の前に着地。
大丈夫だから頭を上げてくれと懇願する。さっきの音はこれか。
偉い人に土下座されてる状況なんて私のショボい神経じゃ耐えられないよ。
というか勝手にこんな距離まで近づいちゃマズかったんじゃなかろうか?
まぁ近づいた後に思ったって仕方ない。マズくても後で怒られる位で済むだろう。
多分済まないほどの罪ならもう死んでるだろうし。
「姫様、「殺そうとした訳ではないし、普通は触っただけで死ぬ程脆いとは思わないから仕方ない」との事です」
いつの間にかドアを閉めて一緒になって土下座していたメイドさんが中継してくれた。
まぁ王女様の土下座姿なんてあんまり人の目に晒せないよね。
「そうだとしても私が殺したという事には変わりはない。
如何に祝福持ちとはいえ、殺されたという事実が無くなるわけでもないからな。
であれば頭を下げぬ訳にはいかんだろう。済まなかった、許して欲しい」
義理堅いなこの人。
ていうか祝福持ちって何だろ?プレイヤーみたいな死んでも蘇る人の事かな。
それは置いといて、再度大丈夫だと主張する。
「「私は大丈夫ですから、気持ちは伝わったのでもう頭を上げて下さい」との事です」
ほんとお願いしますよ。
「むぅ、そうか。もういいと言っている相手に頭を下げ続けても嫌がらせにしかならんな。
それでは白雪嬢、そちらの机へ行ってもらえるか?」
王女様は渋々といった感じで頭を上げる。
部屋の中央にある応接机を示されたのでそちらへ移動しよう。
机の上に私サイズの椅子が置いてあった。わざわざ作ってくれたのか。
とりあえず椅子の横に着地した。
それはそうとお願いしておかねば。
「姫様、出来れば呼び捨てにして欲しいと言っておられます」
王女様に敬称つけられるとかなんか怖い。勘弁してください。
「む? そう言うのなら構わんが。 さて、では座ってくれ。
まずは名乗らせて貰おう。私はアングレット王国第四王女、アリアーヌ・キャロル・アングレットだ。
アリアと呼んでくれ」
ほー、本国ってアングレット王国っていうんだ。
「【妖精】の白雪です。よろしくお願いします」
向こうは知ってるけど一応名乗っておく。
「あぁ、よろしく。 このメイドはコレット。私の直属の部下で、身の回りの世話と護衛を兼ねている」
「よろしくお願い致します」
「私の部下はあと一人居てな。白雪はもう会っている筈だ」
ん?誰だ?
「主に役場と周辺を密かに警備している、ジョージという目立たないオッサンだ」
あ、ライサさん絞めてた人か。 っていうか
「オッサンは酷くねぇですか、姫様。
それに俺がやってるのは目立っちゃいかん仕事でしょうに」
うわあ!? どこにいたんだよ!?
いつの間にか部屋の中におじさんが居て、文句を言っていた。
「はっはっは、冗談だ」
「勘弁して下さいよ、全く……」
ぼやきながら部屋から出て行った。
出ていくのは普通に出ていくんだな。
「それで先程の事なんだが、私はそれを見ての通りとても人形が好きでな。人形サイズの白雪を見てつい体が動いてしまった」
後ろを指すので振り返ってみると、棚を丸々一つ使って様々な人形が飾られていた。
私と同じくらいの人形もあれば、かなり大きなものもある。
いや、ここ執務室じゃないの?
「で、だ。 白雪に合いそうなサイズの服がいくつかあるのだが」
「姫様、今日はそのお話では」
「あぁ済まない。蜜の件だったな」
唐突に人を着せ替え人形にしようとしないでくれ。
そこに飾ろうとか思ってないよね? 大丈夫だよね?
「では本題に入ろう。まず蜜を採取するにはそれなりにまとまった量の花が必要という事だが、それはこの空き地を使ってこちらで用意しよう」
横から町の地図を取り出して広げ、役場から少し北の区画を指す。
「次に採取用の瓶の運搬だが、花園の管理を任せる人員を送るのでその者にやってもらう」
助かるけど何だか申し訳ないなぁ。
「そして納品して貰う量と頻度だが月に一度、あの五十ミリリットルの瓶一本でどうだろうか?」
うーん、さっきやった時は一時間ほどで八分の一くらいだったかな?
月に八時間くらいなら他の事をする余裕も十分にあるな。了解する。
「「はい、それでしたら大丈夫です」だそうです」
「そうか。それと価格だが、今のところは一瓶で銀貨十五枚で頼みたいのだが」
やっぱり高いなぁ。あの量で二枚だったし妥当な所なのかな。
「「それでお願いします」との事です」
「うむ。供給が増えて価値が変わればその時に再度話し合って決めよう。 それでだな」
ん?
「白雪はどこかに家などを持っているか?」
有る訳無い。 言葉で否定しつつ首を振る。
「そうか。では先程の謝罪の意味も込めて、花園の中に白雪の家を作ろう」
はっ?
「何、遠慮は要らない。そのサイズであれば場所も資材も大して必要としないからな」
いやいやいやいや。何を言ってるんだ。
「家が近い方が採取する時も楽だろう? 心配するな。ドールハウスや小物を作るのは趣味で慣れているし得意だからな」
アリア様のお手製とか貰えない要素が増えただけだよ!!
ってこの椅子作ったのももしかしてアリア様か? 確かに精巧に出来てるけど。
うう、これどう見ても退く気が全くない。
ずっと全身で遠慮してるけどグイグイ来てるもん……
凄い力作が出てきそうで怖いよー。




