2610:徘徊先を選ぼう。
まぁどうせ私は暇なんだし、おさんぽするのも良い考えかな。
移動がそんなに速くない……というか速く飛ぶと危ないから、そんなに色々回ったりは出来ないだろうけど。
「皆様方、白雪さんのお越しを心よりお待ちしている様子ですので」
「微妙に行きたくなくなる事を言わないでくれないかな」
そういえばさっき、【妖精】用の色んな品が街中から注文されてるって言ってたもんなぁ。
いや別に歓迎してくれるのは嬉しいんだけどさ。
熱意がね、熱意が。うん。
「まぁじっとしてても仕方ないし、とりあえず移動しようか」
どうせ飛び回るなら少しでも色々見ておきたいし、出入り口の近くでぼーっとしてたら邪魔になりそうだし。
ついさっき役場の出入り口で散々邪魔になってた気がするけど。
で、とりあえず表の通りに出てきたけどどっちへ向かおうかな。
せっかくだし、全く行った事の無い南西区を目指してみるか。
【妖精】には用が無いエリアらしいから行ってないんだけど、だからこそ暇な時に見に行かないとずっとそのままだからね。
いや別に行ってなくても特に問題は無いだろうけど。
「それじゃ、西の方に行ってみようか」
大体の方角を指差して宣言しつつ、さりげなく背後というか足下に回ろうとする人を捕獲して前に浮かせておく。
「申し訳ないのですが、南西区は私も殆ど存じませんのでご案内は出来ないかと」
「あれ、鬼だった時も使ってなかったの?」
別に案内を期待した訳じゃないんだけど、私と違って普通の種族もやってたのに意外だな。
まぁ始まってそんなに経ってない内から私の所に来て転生してたし、宿泊施設なんて使ってなくても別に不思議ではないか。
実際のところ、別にその辺のベンチとか空いてる場所とかでログアウトすれば良いだけだから未だに一度も寝床を使ってない人だって多そうだし。
「いえ、一度使わせて頂いたところ出入り禁止処分を受けまして」
「一体何をやらかしたの…… いやカトリーヌさんがやりそうな事は大体想像がつくから言わなくて良いけどさ……」
どうせつい我慢出来なくなって盛大に「散らかした」とか、そういう事件でしょ。
この人いつもの悪癖以外は人一倍善良だから、その手の問題以外で他人に迷惑をかける事は無いだろうし。




