2600:ご機嫌を窺っておこう。
そういえば、リアンのご機嫌は大丈夫だろうか。
結構私の言葉をスルーしたりしてるから、無礼なって感じで怒ったりしてないかな。
……なんか微妙に複雑そうな顔してるけど全体的に言えば満足げっていう、ちょっと奇妙な雰囲気なのはなんなんだ。
いやまぁ怒ってケンカ売ったりするよりは良いんだけどさ。
もしかしてリアン的には、【妖精】に良い物を捧げるのはとても良い行いで、当の私が遠慮し過ぎだから多少強引になっちゃうのは仕方ないって事なんだろうか。
もうちょっと崇められる当人の意思を尊重してほしいところなんだけど、多分これでもリアンにしては十分に譲歩した結果なんだろうなぁ。
「妖精さん妖精さん」
「はい……っていつの間に」
急に呼ばれて反射的に返事をしてから、表のお店の店員さんが近くに居る事に気が付いた。
なんでこう、一見普通なよくわからない実力者がそこら中に潜んでるんだこの街は。
一応私なりに周囲の探知はしてるのに、声をかけられるまで全く見えてなかったよ。
「……接客はどうしたの」
あ、これフミさんですら気付いてなかったやつだ。
やっぱり私が油断し過ぎな訳じゃないよね。
いや大分疎かな自覚は有るけど。
「遠慮しなくて大丈夫ですよ」
「そう言われても……」
くそう、この人も味方じゃないのか。
というかフミさんの指摘はスルーして良いのか。
「確かに少々お高い品ですが、この人は妖精さんのおかげでこれくらいならポンと出せる程度には儲けていますから」
「私ですか?」
「はい。なにせ街中の方々が妖精さんにいつ訪れていただいても良い様に、各種様々な品をこちらに発注しておられますのでね」
「あー……」
なるほど、【妖精】が急に来たせいで需要が爆発しちゃって、このサイズに対応出来る職人さんが少なくて独占状態なのか。
いや、だからって素直にじゃあ頂きますとは言えないんだけどね。




