2568:無理矢理見せよう。
「お? おお?」
どこを見てるのかよく判らない表情で、キョロキョロしたり思いっきり上を見上げてみたり、さわさわと手を動かしたりし始めた。
すぐ前にリアンが浮いてるから、あんまり動かない方が良いと思うんだけど。
まぁ召喚獣たちは【妖精】みたいに脆くないから、多少ぶつかるくらいなら大丈夫だろうけどね。
「ちょっと、危ないよ」
「大丈夫ー見えてはいるー」
「いやあんたの姿が」
「なにおう」
……まぁうん、私達は何かされてる状態だって解ってるから良いけど、傍から見るとただの変な人だもんね。
まぁこうなってる原因は私だから、あんまりそういう事言うのも失礼なんだけどさ。
「で、結局何事なの」
「よく解んないけど、なんかこの子がでっかく見えてる……というか本体も見えてるから、でっかいこの子も見える?」
「る?って訊かれても困るけど、まぁなんか見えてるって事ね」
あぁ、手を動かしてたのは見えてるものに実体が有るか確認してたのか。
さっきの動きを見た感じだと、でっかいっていうのは多分普通の人と同じスケールなんだろうな。
「そっちは目を閉じてても見えるから、映像を頭に直接送り込まれてるのかな?」
「あー、精神的な……いや多分違うよそれ」
「ん?」
ん?
狐さん、何を……
あぁうん、私にも解った。
よく見たら兎さんの瞳がうっすら緑色に光ってるという事は、文字通り目の前に実体の無い幻を発生させてるんだろうね。




