2215:出迎えをモフろう。
お、研究所の塀が見えてきた。
「昨日ぶりだねー」
「ぴゃ」
いやぴーちゃん、そうだねーって感じでお返事してるけど君は違うでしょ。
なんとなくそう感じただけで、実は全然違う事言ってるのかもしれないけどさ。
「うむ、ご苦労」
「ん? あ、お疲れ様です」
アリア様が急に立ち止まるから何かと思ったら、ジルさんが道の端っこでひっそりと控えてた。
私達が来たのを察知して出迎えてくれたのかな。
丁寧というか隙が無いというか、綺麗な動作で門を開けてくれるジルさん。
いや、まぁ私には相当しょぼい動作でもない限り隙なんて見えないんだけど。
ふにゃふにゃな時のお姉ちゃんくらいの隙の持ち主ならともかく、そんな人が隠密とか警備とかしてる訳が無いし。
……いや、なんか物陰で丸まってすやすや寝てたりする隠密の人に心当たりは有るけどさ。
しかし相変わらず何も喋らない人だなぁ。
別にそれで問題は無いから良いんだけど。
うちの子達と違って動作や表情でも読み取りづらいけど、同僚の人達にはちゃんと通じてるみたいだしね。
まぁそんな事はどうでも良いとして、さっさと中に……
「いやいきなり何をやってるんですか」
「部下とのコミュニケーションは大事な事だからな」
「それそういうのじゃないですよね」
コミュニケーションは確かに大事な事かもしれないけど、間違いなくお狐さんのしっぽを両手でもふもふする事じゃないと思うんだ。
というかそれ、普通ならハラスメントの方に分類される行為じゃないかな。
どう考えても元から仲が良くないと普通に怒られるやつでしょ。
まぁ実際ジルさんは気にしてないというか、判りづらいけど嬉しそうだから問題は無いんだろうけどさ。
アリア様、触り方は丁寧だしモフった後にちゃんと綺麗に整えてあげてるし。
ちゃんとというか、むしろ元通り以上にツヤツヤになってるんじゃなかろうか。




