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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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22:切り替えよう。

 ギアを外して起き上がり、ベッドから立ち上が……ろうとして盛大に転げ落ちた。


「うわあぁっ!?」


 いたた…… 思いっきり腰から落ちちゃったよ。


 なんだろう、急に本来のサイズに戻ったからかな?いまいち距離感が掴めない。

 普段使っている机や椅子が自分より巨大な物に思えてしまう。


 いや、見え方が違うんだからちゃんと普通のサイズに見えてはいるんだけどね。

 視野角っていうんだっけ?



「雪ちゃん、どうしたの!? 大丈夫!?」


 騒音を聞きつけて隣の部屋からお姉ちゃんが飛び込んで来た。

 床に座り込んでいた私に上の方から手を伸ばしてくる。


「いや、ちょっとベッドから……っ!」


 何故だかその手がとても恐ろしく見え、後ずさりしてしまった。何をやってるんだ私は。

 大丈夫、私も同じ大きさなんだから何も怖くない。ゲームに引きずられ過ぎだ。


「あっ……  雪ちゃん、大丈夫……?」


「いや、大丈夫大丈夫。ベッドから落ちただけ。 ごめん、なんか逃げちゃったよ」


 ベッドに手をつき立ち上がって、お姉ちゃんの頭に手を乗せる。


「撫でないでよう。私がお姉ちゃんだよ?」


 いやぁ、なんか落ち着くんだよね。




 掃除をしたりテレビを見たり、町の外であった事を聞かせて貰ったりと二時間ほどのんびりする。

 しかし、中に半日も居なかったはずなのに自分の足で歩くという行為に違和感がある。

 しっかりしろ私。人間は空を飛んだりできないんだぞ。


 それと距離感が少しおかしくなってるせいか、歩いてて何度か壁に肩をぶつけたり机の脚で小指をぶつけたりした。いたい。


 これ、慣れないと危なくて迂闊に外に出られないんじゃ……?

 まぁだんだん感覚も戻ってきたし、数時間もあれば大丈夫なのかな。



 さて、そろそろゲーム内時間で朝らしいのでログインの準備をして起動だ。





 ログインすると、先ほどのベンチから少し離れた場所に出た。

 あぁ、ベンチにアヤメさん達が座ってるから少し出現場所がズレたのか。

 しかしもう少し隅っこに出てほしいものだ。運が悪いとログイン即死亡だぞ。

 人が来る前に急いで飛び立つ。


「おはよー。でいいのかな?」


「おー、おはよう」


「お早う御座います」


 とりあえず挨拶して、周りを見渡す。今度は逆側に距離感がズレてる感じがする。

 切り替えに慣れるまでは少しかかりそうだなぁ。



 お姉ちゃんもログインして合流し、狩りに出る前に屋台でご飯を食べようというので私もついていくことにした。


「私一人だと食べられないんだよね。殆ど捨てることになっちゃうから勿体ないし凄い失礼だもの」


「あー、そりゃ仕方ないねぇ」


「なんだって?」


「一人じゃ食べきれなくて悪いから買い食い出来ないって」


「確かに一人分は多すぎますね」


「雪ちゃんには私の奴分けたげる!」


 喋りながら中央広場へ行き、入ってすぐの所にあった屋台へ向かう。

 汚れちゃいけないのでキトンは脱いでボックスにしまっておこうかな。

 皆でフライドポテトとホットドッグを買って、柔らかい所を少しずつ貰った。


 ポテトの外側の部分やソーセージの皮は固いので中身を貰う。

 芋がモソモソするけど美味しい。でも中身だけだと味が薄いのでお姉ちゃんのホットドッグのケチャップを付けさせて貰った。

 しかし朝から少し重いな。別に寝起きって訳じゃないけど。



「その妖精の子、こういう物を食べられないって訳じゃないんだな」


 屋台のおじさんが近くに居たアヤメさんに話しかけた。


「え?」


「昨日は飯を売っとる店は全部素通りしとったからな」


「あぁ、食べきれなくて申し訳ないから諦めてたらしいですね。あのサイズだから」


「成程、そういうことか。今度から気にせず好きな店に寄っていきな。この辺の店ならどこでも、お前さんが食べられそうな物を分けてくれるだろうよ」



 おじさんがこっちを見て謎の発言をする。そんな良くして貰える理由が思い当たらないんだが。


「……白雪、あんた昨日何やったんだ?」


「雪ちゃんは可愛いからね!」


 アヤメさんよ、私は無実だ。

 いやいや、わかんない何もしてない。とジェスチャーで返す。

 あとお姉ちゃんは黙ってなさい。



「そこのアンの店の商品棚の上に座って、良い笑顔で美味しそうにラズベリーを食べとったな。

 それに人が引き寄せられたのか、なかなか売れ行きが良かったらしいぞ」


 そういえばそんな事してた……


「やってるじゃないか」


「雪ちゃんは可愛いからね!!」


「だいたいあってましたね」


 黙れお姉ちゃん。ええい、打撃でツッコめないこの身体がもどかしい。


「とう」


「あいたっ!? 何!?」


「いや、白雪がうっさいばかー!みたいな顔してたから代理で」


 お姉ちゃんの頭にアヤメさんのチョップが刺さる。

 グッと親指を立てておく。



「まぁそういう客寄せみたいな扱いもあるかもしれんが、小さい子にゃ優しくするもんだ。

 それにその子に上げる程度の量なんぞ、毎日来たって負担になりゃせん。

 何より、妖精に優しくすれば良い事があるっていうしな」


 そんな子供じゃないんだけどなぁ。サイズ的にはそりゃ小さいけどさ。

 いや、昨日凄い子供っぽい動きしてた気もするけど。


 てか【妖精】が滅びてかなり経ってる筈なのに、そんな言い伝えよく残ってるな。

 別種の妖精とか居るんだろうか。


 ゲーム的に考えると種族特性でNPC好感度にかなりのプラス補正がかかってるって感じだろうか?

 ライサさんのアレは何か違う気がするけど。



 お礼を言って名乗っておく。


「えっと、『お気遣いありがとうございます。申し遅れましたが私は白雪といいます。今後ともよろしくお願いします』って言ってますね」


「おう! よろしくな白雪ちゃん」




 ご飯を食べ終わって一旦広場から離れ、狩りに出る三人を見送る。

 出発する前にレティさんが帯を結んでくれた。

 自分だと後ろで綺麗には結べないんだよね。


 最初はお姉ちゃんがやろうとしたけど例によってアヤメさんに「やめとけ」の一言で止められていた。

 信用無いなお姉ちゃん。



 さて、私は何をしようかな?

 あ、召喚しておかなきゃ。今日は珠だな。


 呼び出した珠の喉を撫でまわしてモフモフを補給する。良し。



 (普通なら)安全な町中で出来る事っていうと生産とかだよね。

 でも道具を使うような作業が出来ない。

 まず私に扱える道具を用意するところからになるし、それを用意するお金が無い。


 うーん、どうしたものか。

 そういえば、役場に図書室とかいうプレートがあったな。

 何か役に立つ知識とかあるかもしれないし行ってみるか。本読むの好きだし。




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