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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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212/3609

212:追いかけっこしよう。

 「ごめんなさい」と耳を少し伏せ、構えていた前足をよいしょとしまい込んで座り直すあるちゃん。


「ごめんね、うちの子が……」


「いえ、まだ何もされておりませんので謝って頂かなくても大丈夫ですわ」


「というか、カトリーヌさんも良くないよ。あんまりひらひらしてたら本能でつい反応しちゃうんだから、大人しくしてようね」


「はい、そうですわね。申し訳ありません、ある様」


 素直にあるちゃんに謝るカトリーヌさん。

 というか何故飛んでたんだ。

 本当は狙われようとしてたんじゃないの?



「なんかカトちゃんが自分の身を守るって珍しーね?」


「あー、確かに」


 さっきの調子だと、黙ってて誰も気づかなかったらそのまま襲われてただろうに。


「いえ、私を襲ってしまうとある様がお叱りを受けてしまうかと思いまして」


「まぁそうかもね」


「それと、これから皆で何かしようという時に死に戻りで合流の手間をおかけするのも悪いかと」


「いや、それはもう今更って感じかな…… まぁこれからそう考えてくれるなら助かるけど」


 さっきもやったし。



「むぅ、ダメ?」


「ん? ……なにやってんの」


 エリちゃんが仰向けに抱っこし直したえるちゃんのお腹に顔を埋めようとして、ほっぺたを肉球でぶにーって押し返されてる。


「いや、ふかふかですごい気持ち良さそうだなって思って。うん、ダメなのね」


 あ、後ろ足も追加された。四本全部でぐいぐい抵抗してるよ。

 でも爪は出てないみたいだから、あれはあれで気持ちよさそうだな……



「まぁお腹は弱点みたいなものだし、あんまり触られたくないんじゃない?」


「むー、仕方ないかー。ごめんねー」


 ふすーと息を吐くえるちゃん。まったくもうって感じだな。

 抱っこから逃げようとはしてないし、許してくれてるんだろう。



「あれ、ラキ? どこ行くの?」


 なんかラキが肩から飛び降りて、テーブルの端へダッシュして行った。

 そのままテーブルからも飛び降りて、あるちゃんにじーっと見られながらゆっくりと正面に向かう。


「大丈夫なのでしょうか?」


「うーん…… 私達よりよっぽど頑丈とは言っても小っちゃいからどうだろう?」


 あ、曲げてる前脚に近づいてぽふぽふ叩いた。

 それから少し下がって、シュッシュとパンチを素振りしてる。



「んー…… 遊ぼうって、言ってるの、かな……?」


「あ、行った」


 組んでた右前脚がスッと動いて、ラキが居た場所にぽむっと下ろされた。

 しかし素早くバックステップして回避し、下ろされた足の先にぽぽむとジャブを数発当てるラキ。



「おー、二匹(ふたり)ともがんばれー」


「流石の素早さですわねぇ」


 ラキが居る場所や走り込む場所に向けてたしったしっと前脚を下ろすあるちゃんと、ステップや急停止でそれらを全てスカしていくラキ。


「あ、ある…… あんまり、強くしちゃ、ダメだよ……?」


 あるちゃんの前脚に少し力が入ってきた所で、心配したソニアちゃんが注意する。

 うん、思いっきりやったらヤバそうだもんね。



「あ、逃げ……たんじゃないね」


 あるちゃんの射程外に離れたと思ったら、見せつける様にピョンピョン跳ねて誘いをかけるラキ。

 お、あるちゃんが一旦立ち上がって、姿勢を低くして構えた。


「壊れる物、無いから良いけど…… あんまり、暴れすぎないように、ね……?」


 ちらりと飼い主(ソニアちゃん)を見上げて、コクコクと頷いてから再度正面のラキに集中するあるちゃん。

 テーブルの脚の陰からスッと姿を現しては隠れるラキに、完全に目を奪われてる。



「お、行った。ラキは…… あ、もうあんなとこ居る」


 チラチラとラキが見える度にお尻を振って、タイミングを合わせて飛びかかったけどラキはきっちり回避して、エリちゃんが置いた鞄の横でへいへーいと手を振ってる。


「おー…… 凄い、ねー」


「あっ、また…… おぉ、今度は堂々と挑発していますわね」


 二度目の突撃を回避したラキが今度は何も無い床の上で飛び跳ねて、あるちゃんが狙いを定めたタイミングで「ほらほらー、こっちおいでー」と走り出した。



「おおうっ!? あ、ごめんよー」


「あっはっは。ってラキは大丈夫かな?」


 エリちゃんが座ってるクッションの少し浮いた隙間にラキが逃げ込み、そこにあるちゃんがずさーっと滑り込んで前脚を突っ込む。

 いきなりあるちゃんにお尻の横に突撃されてビクッとなって、その動きが気に入らなかったえるちゃんにぷにっとほっぺたを押されるエリちゃん。

 何もしてないのに散々だな。



「キョロキョロしてるし捕まえられなかったんだろうけど、どこ行ったのかな」


「あ…… クッションの上に、居るね」


「あ、本当だ。勝利宣言かな? ふふーんって顔…… あっ」


 目を瞑って腰に手を当て、胸を張って勝ち誇っているラキの上にぽふっとあるちゃんのおててが。

 うん、まぁラキが勝手に打ち切って終わったと思ってただけだもんな。

 今のは仕方ない。射程内で油断しちゃダメだよね。


 まぁ力は入れてなかったし、怪我はしてないだろう。




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