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199:肩から降りよう。

「あ、そだユッキー」


「ん?」


 私のお腹に顔を埋めたシルクの後頭部をぽふぽふしていると、エリちゃんが声をかけてきた。


「ユッキーが飛び回ってる間にめーちゃんには一通り話しておいたから」


「あ、ありがと。そっか、結構時間あったもんね」


「んー。白雪ちゃんもありがとねー。あー、そういえばさっき二人が居ない間に、私に攻撃してきてたプレイヤーの人も謝りに来てくれたよー」


「あー、そういえばプレイヤーも居たんだっけ」


 掲示板でただの事故だったって解ってくれたんだろうな。



「んー。ちゃんと謝ってくれたし、何かあったら力になるって言ってくれたー。ちょっと過激だけど悪い人じゃなかったみたいー」


「そっか、良かった。ってシルク、どうしたの?」


 なんか急にシルクがビクッて硬直した。

 あ、少しふるふるしてる。

 ん、顔上げるの? それじゃ撫でてる手を退けようか。



「おわっ、とぉぅ」


 顔を上げたシルクが少し背中を曲げたと思ったら、一気に背筋を伸ばしてその反動で少しジャンプした。

 飛び上がったタイミングで下の方から砕ける様な音が聞こえた気がしたけど、直後にシルクが着地して何も聞こえなくなる。

 着地したシルクは少し身を捩ってお尻を動かして、座り心地を調整しているみたいだ。

 あー、クッションの形が変わったからかな。


 ……カトリーヌさんは一体何をやらかしたんだ。

 あ、お尻の下の魔力が消えた。

 まぁ飛び上がる時に頭にシルクの全体重がかけられただろうし、その上に追い打ちでお尻が落ちてくれば原形を留めてないだろう。

 とりあえず役場の入り口で合流しようねってメッセージを送っておこうか。

 噴水広場からこっちに寄ってからだと無駄に時間がかかるしね。



「シルク、降ろしてー ……あぁ、いや、まぁいいや」


 その場で放して貰おうと思って降ろせと言ったら、抱っこされたままテーブルまで連れていかれた。

 うん、まぁ一旦そっちには降りるつもりだったから問題は無い。


 まぁ私の足に引っ付いてたラキが少し慌ててたけどね。

 足にギュッと抱き着かれたからくすぐったくて握り返しちゃったけど、まぁ落ちない様に固定出来てたから良しとしてもらおう。

 そもそも握られても喜んでるから良しとするも何も無いけどさ。




「おー、結構織れてるねぇ。って何これ」


 なんか分厚い木製の車輪二つを縦に並べた様な物が出来てる。

 車輪同士を棒で繋いで回転が連動する様になってるな。

 何やら片方の車輪に糸が巻かれてるのが見える。


「あー、そこに普通の棒に巻いた糸があるでしょー?」


 あ、ほんとだ。

 妙な物に目を奪われてたけど、その近くに置いてあるな。


「布を織った後でそれに二人で糸を集めてたんだけどー、ラキちゃんがじっとしてるのが我慢できなくて、走り出しちゃう度にシルクちゃんに叱られててねー」


 あー…… まぁ少なくとも巻きづらくはなるだろうなぁ。



「でー、それを見てたカトリーヌちゃんが『ラキ様が走る事で軸を回転させられれば良いのでは』とか言い出して、なんか試しに作ってたー」


 あ、良く見たら糸が巻かれてない方の車輪の上に横から棒が突き出てるな。

 あれを持ってランニングマシーンみたいに走るのかな?


「歯車が無くて回転比を変えられないせいで、糸を巻く軸が太すぎるのが気に入らないみたいだったけどねー」


「あー、確かに。でも思い付きですぐ作ったなら仕方ないんじゃないかな」


 何とかやりようが有る気もするけど、材料も木材と金属片くらいしか無いんだよね。

 というか別にラキが糸をゆっくり出せば済むだけな気もするけど。



「まーそれでもラキちゃんは結構気に入ってたみたいだよー。なんかどこまで回転数を上げられるか挑戦してたっぽいしー」


「本当に元気だなぁ、この子は…… まぁ良い事か」


 足元でダカダカ走り回っているラキちゃんを手に乗せて頭を撫でる。

 撫でられたラキは嬉しそうにお尻をピコピコ振りながら、少し背伸びして指に頬ずりしてきた。

 可愛いなぁもう。


「ラキちゃんも楽しんでたし、軸を持たなくていいからシルクちゃんの手も空くしで、カトリーヌちゃんは納得いってないみたいだったけど良い事づくめだねー」


 あー、確かにシルクが自由になれば他のお仕事が出来るか。

 まぁ別にこの装置が無いと一人で集められないって訳じゃないけど、って言うのは野暮ってもんだな、うん。




「っと、カトリーヌさんに役場に行けって言っちゃってるし私も早く行かないと。皆はどうする?」


 シルクは首をふるふる振って、テーブルや屋敷を指さした。

 うん、お留守番っていうかお仕事ね。

 ラキは腕を駆け上って肩に乗った。これは付いてくるって事だろうな。


「それ、私も行った方が良いのかな?」


「ん? いや、大丈夫。好きにしててくれて問題無いよ」


「うぃーっす。それじゃこの辺で色々やってる事にするよー」


「で、ぴーちゃんは…… あっ」


 ずっとめーちゃんの肩の上で正座してた……



「おーいぴーちゃん、もう良いよー。こっちおいでー」


「ぴゃーぅー……」


 助かったとばかりに鳴きながら羽ばたき、こちらに降りてくる。

 ん、着地しないの?

 あぁ、足がしびれてるのね。


「ぅぴゃぁっ!?」


 こらこらシルク、つっつかないの。

 ちょっとやってみたい気持ちは解るけど。




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