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198:背負われよう。

「そういえばさー」


 大通りを通り抜けて北東区に戻り、妖精庭園に入った所でエリちゃんが何かを思い出したかの様に口を開く。


「ん、どしたの?」


「ぴーちゃんってスズメなのにチュンチュン言わないよねー」


「ぴゃっ!?」


 肩の上のぴーちゃんが言いがかりをつけられたみたいなリアクションを返した。

 あー、でもそういえば確かに。

 いや、別にスズメっぽいってだけでまんまスズメな訳じゃないけどさ。



「ぴ、びっ…… びぃぅ……」


 あぁっ、私が同意した様な顔したから期待に応えようとし始めちゃったよ。


「ぴぃゃー……」


「あー、ぴーちゃんぴーちゃん。そんな無理しなくて良いよ。ぴーちゃんは今のままで良いんだよ」


 頑張ってみたけど上手くいかずに落ち込むぴーちゃんを慰める。

 うん、別にチュンチュン言えたからどうだって話だし。



「いやー、なんかごめんね。ふと思った事言っちゃっただけだから、気にしないでー」


「まぁ私もそういえばって顔しちゃったからね。ごめんね、ぴーちゃん」


「ぴぃ」


 おおぅ、謝ったらエリちゃんの肩からジャンプして抱き着いてきた。

 許してくれた、というかいいよー怒ってないよーって事だろうか。


 ……しかし何故毎度私の頭をふかふかに埋めるのか。

 こうすると私が喜ぶって覚えちゃったのかね。

 いや、確かにむにむにもこもこしてて気持ち良いんだけどさ。


 ん、頭に何か…… あ、ぴーちゃんのほっぺか。

 小さく「んぴぅー……」って声を漏らしながら、抱きしめた私の頭にスリスリしてるらしい。




「おーい二人ともー。仲良しなのは良いけど移動しながらだと危ないよー? まぁ今は私が先導してるから大丈夫だけどさー」


「あー、ごめんごめん。うん、確かに今何も見えてないしね」


「っていうかさー、めっちゃ見られてるよー?」


「それはもう諦めたー。ほら、さっきご飯食べてる時なんてもっと酷かったし」


「あー、まぁ確かにそうだねー」


 流石に自分でもアレを堂々とやるのはどうかと思うけど。

 まぁ今更言っても仕方ないし、昨日の時点でいちゃついてたとか言われたり、大暴れして踏み潰したりしてるの見られてるしね。



「ほらほらぴーちゃん、前見えないよー」


「ぴぃ。……ぴゃーぃ」


「あー、まぁ前は見えるけどさ。うん、まぁぴーちゃんがそれで良いなら」


 なんかおんぶされた。

 まぁ確かに私と違って背中から羽が生えてる訳じゃないから、ちゃんと羽ばたけるんだよね。



「ぴぴっ」


 自分の腰の横にある私の膝を、羽でぽふぽふと叩いて前に回す様に指示してきた。


「ん、しっかり抱き着けって? まぁ良いけどさ」


「ぴーぴぴーっぴー」


 両脚をぴーちゃんの前で組むようにがっしりとしがみ付くと、歌う様に鳴き始めた。

 うんうん、幸せそうで何よりだよ。

 せっかくだからさっきのぴーちゃんみたいに、頭にスリスリもしてみようか。



「ぴっ? ……ぴー、ぴぴっ、ぴー」


「んー? あ、うん。行ってらっしゃーい。私は先に帰ってるねー」


 頬ずりされたぴーちゃんがピクッと体を震わせ、少し間を置いてエリちゃんに向けて声をかけた。

 雰囲気で何かを察したのか、普通に返事をして走り去って行った。

 え、あれ? どうしたの?



「ぴっ!」


「え? 何? 『行くよー!』って? っふあぁっ!?」


 少し大きめに羽ばたきながらこちらに鋭く一声。

 何が言いたいのか確認しようと思ったら、突然私の限界に近い加速で斜め上に飛び上がっていく。

 近いって言うか、これちょっとオーバーしてる。

 ってしがみ付かないと振り落とされるー!



「ぴゃーぃ!」


「わーっ、ちょっ、速い速い高い!」


 そのまま加速を続けて普段の数倍の速度になり、いつもの数倍の高度に連れていかれた。

 これどれくらいの高さだろ…… あそこに居る人の五倍近くありそうだから八十メートルくらい?

 流石に怖くなって、ぴーちゃんに更にギュッとしがみ付く。


「ぴぃぃーっ!」


「待って待って、加速しないでぴーちゃーん!?」


 私にしがみ付かれて更に高まったぴーちゃんが加速し、それが怖くて更に密着するっていう悪循環が起きてないかこれ。

 どうしよう。これぴーちゃん送還したとしても、自分じゃこんなスピード制御できないぞ。




 花園の外周をぐるっと二周して満足したのか、ゆっくりと減速しつつ中央に向かうぴーちゃん。

 うぅ、張り切り過ぎだよ……


「んー、おかえりー。あははー、お疲れ様だねー」


「ただいまー…… うぅ、本人に悪気が無いから怒るに怒れない……」


 ぴーちゃんの背中からめーちゃんの頭の上にずるずると滑り落ちながら返事をする。

 めーちゃんからは全部見えてたんだろうなぁ……

 うぅ、ぴーちゃんがこっち向いて頑張ったよーって顔してる。


 ……あ、いつの間にかぴーちゃんの背後に無表情のシルクが。




「ぴゃぁー……」


 めーちゃんの肩の上で正座させられ、悲し気な声を上げるぴーちゃん。

 うん、それくらいで済んで良かったよ。

 まぁ後頭部にチョップ一発と、お尻に平手一発入れられてたけど。


 それは良いとして、今のこの状況は何だ。

 なんで私は反対の肩に両脚を伸ばして座ったシルクに抱っこされてて、ラキに足の指に抱き着かれてるんだ。

 ぴーちゃんばっかりスキンシップずるいって事なんだろうか。


 ふわっ!? こらシルク、首を舐めるんじゃないよ。

 私は甘くないぞ。多分だけど。

 ラキも隙間に顔を突っ込んで足指の股を舐めるのは勘弁してくれー。くすぐったいんだよー。

 うぅ、くすぐったくてラキの上半身ごとギュッと握っちゃってるけど、マッサージしてもらってるくらいに思われてる……


 っていうか何でラキは足に来るんだ。

 何か気に入る要素でもあってしまったのか。

 まぁちょっとくすぐったいくらいだから、別に構わないけどさ。

 うっかり踏んじゃっても、私の体重くらいなら大丈夫みたいだし。

 



 ……さっきからなんか、シルクのお尻の下からうめき声が聞こえる気がするけどスルーしておこう。

 うん、太ももの左右からはみ出てる翅なんて見えない。知らない。




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