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193:お茶を出そう。

「あぁ、そういえば朝に蜜を集めているんだったか。私の事は気にせずに集めて来ると良い。せっかくだから直接受け取って行くとしよう」


 ぶら下げたラキを揺らしてみたり、指でつんつんと軽くつっついたりして遊んでいたアリア様が唐突に口を開いた。

 あー、そういえば蜜を集めに帰ってきたんだったな。

 トップが受け取ってくれるなら話が早くて助かる。


「そうですね。それじゃモニカさんを呼…… ありがとうございます」


 管理室の呼び鈴を押しに行こうと思ったら、既にコレットさんがストトトトトッと押してくれている所だった。

 押してくれたのは良いけど何故連射したんだろうか……



「待っている間、この子たちと遊んでいて構わないか?」


「あ、はい。エリちゃんはどうする?」


「あー、ついてったらモニカさんに恨まれそうだし、ここで大人しくしてるよー」


「そうだ、その木材を少し使わせてもらっても良いか?」


「はい? あ、はい。取りあえずって感じで余分に買ってきているので、お好きなだけどうぞ」


 何に使うんだろ?

 まぁただでさえ色々貰い過ぎてるんだし、全部使ってくれても一向に構わないけどね。


「うむ、ありがとう。む、戻ってきたようだな」


 あ、ほんとだ。……って何をそんな悔しそうな顔してるんだ。




「お待たせ致しました。……姫様、ずるいです」


「ふっふっふ。仕事が終わってから出直すが良い!」


「ぬうぅっ……」


 ぴーちゃんが嫌がらないのを確かめてから、羽を撫でつつ勝ち誇るアリア様。

 そしてそれを見て悔し気にうめくモニカさん。

 うん、まぁ確かに仕事を優先してくれないと困るんだけどさ。



「そういえば、あの呼び鈴でどうやって呼び出してるの?」


「あの印を押す事で、この魔道具に通知が入る様になっているのですよ」


 エリちゃんの質問に、モニカさんが左腕に腕時計の様に身につけている魔道具を見せる。

 いつも袖に隠れてて見えなかったけど、あんな感じだったのか。

 結構小さいんだな。


「へぇー。うーん、私もそういうの持ってた方が良いのかなー?」


「あー、確かにそういうのがあれば便利だね。ここに待機してる必要も無くなるから、普段は自由に動ける様になるし」


 めーちゃんはともかくソニアちゃんがメッセージ無しで呼び出せるようにしようと思ったら、ずっと地下室に座ってないといけなくなるし。




「ふむ、この際だ。それもこちらで用意してやろう」


「そんな……って遠慮しても多分聞いてくれないんですよね」


「うむ。当然だな」


「むぅ。あ、そうだ。エリちゃん、お茶の用意をお願い」


 うん、お客様に出すにしては大分タイミングが遅い気がする。

 まぁいつもの事か。



「あぁ、淹れるのはコレットにやらせよう。エリシャ、見て学ぶが良いぞ」


「おー、ラッキー。せっかくなら上手に淹れられるようになりたいしねー」


 うん、学べるチャンスは活用していかないとね。

 ……美味しいお茶ならシルクも嬉しいだろうしね、うん。



「エリちゃん、やかんと皿とスプーンを一つずつこっちにお願い」


「はいよー」


「カトリーヌさん、お湯をお願い出来るかな?」


「はい。お任せあれ」


「あ、【座標指定】を…… いや、何でもないよ」


 うん、あれ解っててわざとやってるんだろうし言うだけ無駄だな。

 とりあえず、蒸されてやかんに落ちちゃわない様にだけは気を付けてね。



「で、私はこっち」


 スプーンの上に翅の先端を配置して、効果を乗せない【白の誘惑】で大量に湧き出させて盛っていく。

 根元をトントン叩いて、あまり塊にならない様にしよう。


「お、それは何だ?」


「見ての通り、私の鱗粉の様な物ですね。あ、一応毒にも出来ちゃうんでこれを見てもらって、それでも良ければどうぞ」


 問いかけてきたアリア様にパネルを伸ばして渡す。



「ふむ、これは報告に無かった物だな」


「あ、今朝習得した物なので。蜜を集めた後に申請しに行こうと思ってたんです」


 習得したというか確認した、だな。


「なるほど。ふむ、中々に凶悪な魔法の様だな。しかし、今これをどうしろと言うのだ?」


「あ、そうでした。これ、かなり甘いんですよ。変な効果を乗せなければただの砂糖なんです」


 砂糖って言うか粉糖か。まぁ言いやすいし通じやすいから砂糖で良いや。



「ほほう。それではありがたく頂くとしよう」


「出した私が言うのも何ですけど、良いんですか?」


「ん? あぁ、毒の心配はしておらんよ。もし盛っていたなら、既にコレットに首をむしり取られているだろうからな」


 あー、まぁこの人達なら毒の判別くらいは軽くこなすか。

 ていうか首をむしるってコレットさん怖いよ。

 いや、むしられる様な事をしなきゃいいだけだけどさ。




「う、ぅぅ、ずるい、です……」


「いやモニカさん、そんな本気で泣かないでくださいよ……」


 うめくような声に振り向いてみれば、じっとスプーンを見つめて涙を流すモニカさんの姿が。

 姿勢も表情も崩さないまま大量の涙が溢れ出ててかなり怖い。


「大丈夫ですよ、後でモニカさんにも上げますから」


「おぉ……」


「いや、立ってくださいよ」


 いきなり片膝をついて祈りを捧げ始めるんじゃない。

 まぁ涙は止まったから良いけどさ。



「ふふ、白雪が言わなければ刺されそうな雰囲気だったな」


「刺そうとしたらコレットさんにボコボコにされるだけじゃないですか?」


「うむ、まぁそうなんだがな」


「そうでなくとも姫様に刃など向けませんよ…… あ、瓶を取って参りますね」


「お願いしますー。そうそう、また脱線してたけど蜜を集めないとなんだった」


「うむ、頼むぞ」


 せっかくモニカさんを呼び出しておいて、無駄に足止めしてしまった。

 まぁその分ちょっと多めにサービスしてあげるとしようかな。




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