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192:潜まれよう。

 現実逃避していても仕方ないので改めて見てみても、やっぱり縦に凄い長いな。

 これ、横幅は一部屋分しかないのに五階か六階くらいまで無い?

 単に小屋の上から何か伸びてるだけかもしれないけど、それだとこんなきっちり囲まないだろうしなぁ。

 建築技術はどうなってるんだ本当に。


 これだけ細いと日本だと地震が怖いけど、こっちには地震は無いのかな?

 まぁ謎の技術で揺れても大丈夫とか言いかねないけど。


「やー、(たっか)いねー」


「なんでこんなことに……?」


「んー」


 私の呟きにめーちゃんが反応した。何か知ってるのかな?

 あぁ、ずっとここに居る訳だし現場を見てるもんね。



「さっき皆が出ていった後すぐー、入れ違いでアリア様が来てねー」


「あれ、そうなんだ。タイミング悪いなぁ」


「んやー、なんかわざとっぽいよー。白雪ちゃん達が出て行く前からー、門の近くにコレットさんと潜んでたしー」


「何してんのさ、あのお姫様は……」


 この町の責任者は暇なのか。

 というか何であえて私が居ないタイミングで訪れるんだ?



「でー、地下室のライカさん達に声かけて、皆でわいわい小屋の設計してたよー」


「あー、アリア様絡んじゃったかー……」


「なんだ、不満か?」


「いえ、そういう事ではってぇえぅっ!?」


「はっはっは。良い驚きっぷりだ」


 工事現場の布をめくってアリア様がヌッと出てくる。

 中に居たのか……



「【魔力感知】だと大工さん達しか居なかったっぽいのになぁ……」


「うむ、普通に中に居るだけだとバレるだろうと思って、コレットにジャミングしてもらっていた」


 ウサ耳を揺らしてぺこりと頭を下げるコレットさん。


「そんな事も出来るんですね…… いや、っていうか何でそこまでして潜んでるんですか」


「こうやって出てくればお前の反応が面白そうだからに決まっているだろう」


 腰に手を当ててハッキリと宣言するアリア様。

 そんな堂々と言われても反応に困る。



「まぁうん、それはともかくですよ。これはどういう……?」


「うむ、少し貰い過ぎているといった反応をライカが示していたのでな。それならばドーンと盛大にやってやれば良いであろうと助言をしに来た訳だ」


「勘弁してくださいよ……」


「うむ、間違いなくそう言うだろうと思ってな。見つかって遠慮される前にやってしまえとそそのかしておいた」


「いや、何でですか…… まぁ確かに、実際に建築が始まってからじゃやめろとも言いづらいですけど」


 だからわざわざ私が居ないタイミングを狙って入ってきたのか……



「ああそうだ。こちらの地下からソニアの部屋まで通路を繋げようと思うが良いか?」


「あ、それはお願いします」


 地下から直通で行けないと、ソニアちゃんだけエリちゃんにお願い出来ないしね。

 いや、メッセージ送れば大丈夫なんだけどさ。


「っていうかやっぱり地下にも作ってるんですね……」


「うむ。地上五階、地下三階の計八階層だな」


「物置と作業とエリちゃんが住むくらいって言ったじゃないですか……」


 なんでそう無駄に大掛かりにしようとするんだ。

 私の屋敷だって殆どの部屋使ってないしさ。



「はっはっは。まぁ部屋はあって困るものではないだろう?」


「まぁそりゃ、お掃除する範囲が増えるくらいですけど……」


 別に部屋数や床面積で税金取られる訳でも無いし。


「えっと、実際に住んだり掃除したりするの私なんだけどー?」


「うん、諦めようね。まぁ別に空き部屋はある程度放っといても良いし」


「そだね。まぁ私は貰う人じゃなくて居座る人だし、別にいっかー」


 くそぅ、他人事だと思って。あぁ他人事か。




「ところで白雪」


「はい?」


「めーちゃんから聞いてはいるが、あの子たちを紹介してもらえるかな?」


「あ、そういえば。二人とも、こっちおいで」


 テーブルの端に止まって大人しくしているぴーちゃんと、その足元で何故か反復横飛びをしているラキに声をかける。


「こっちがパサーハーピーの『ぴーちゃん』で、こっちがアオオビアラクネの『ラキ』です」


「うむ、私はアリアだ。後ろに居るのはコレット。よろしく頼む」


「ぴゃー」


 ぴーちゃんと握手して、ラキから少し離れた場所に人差し指を置くアリア様。

 近くに出したら怖がらせちゃうからかな。



 ラキがとててっと駆け寄って指の腹に飛び乗った。


「あ、こらこらラキちゃん」


「いや、これで良いんだ。よし、上げるぞー」


 降りなさいと言おうと思ったらアリア様に嬉しそうな顔で止められた。

 まぁ握手するだけなら、わざわざ爪を下にして置かないか。



「良く見る為に近づくが、何もしないから安心しろ。行くぞー?」


 ラキを先端に乗せてまっすぐ立てた人差し指に、断りを入れながら顔を近づけていくアリア様。

 うん、無断で一気に近づいたら怖いだろうしね。

 まぁ流石にアリア様に威嚇し始めたら止めるけどさ。


「むぅ、小さすぎて流石に顔立ちまではよく見えんな。仕方ないか」


 まぁ人間から見れば、頭全体でも一ミリ無さそうだしなぁ。

 あ、でも【視力強化】があれば見えそうだな。



「あっ、と。おいおい、驚かせるんじゃない」


 唐突に指先から飛び降り、ぶらんぶらんと揺れ動くラキ。

 おーい、王女様の指先に勝手に糸付けちゃ駄目だよー。


「ははっ、ほーれほれほれ」


 あ、楽しそうに揺らしてあげてる。

 まぁ本人が構わないなら良いか。ラキも楽しそうだし。




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