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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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189/3641

189:場所を決めよう。

「ぴゃーっ!?」


「あいたたっ!? ごめん、逃げないでー! もうやらないからー!」


「何をやってるんだよあんたは……」


 あ、感動のあまり肩のぴーちゃんに手を添え頬ずりしようとして、鉤爪でげしげし蹴られてる。

 あーあー、ちょっと血が出ちゃってるじゃないか。

 まぁ今のはお姉ちゃんがちょっと悪いし、仕方ないかな?



「ぴぴっ、ぴっ、ぴーっ!」


「ごめんなさい、反省してます……」


 お姉ちゃんが顔の前に出した手に止まって片羽を腰に当て、もう片方をビッとお姉ちゃんに突きつけて説教するぴーちゃん。

 でもお姉ちゃん、ぴーちゃんが何言ってるか解ってないよね。

 とりあえず怒られてるって事は解ってるみたいだけど。



「ぴぃ…… ぴっ」


 前に出していた羽を腰に当て、『まったくもう……』って感じに首を振ってお姉ちゃんの肩に戻るぴーちゃん。


「許してくれた様ですね」


「うぅ、ありがとうぴーちゃん…… ってラキちゃんが全然許してくれてないんだけど……」


 あ、また威嚇されてる。

 お姉ちゃん、ラキから完全に敵って認識されてないか?



「ラキ、大丈夫大丈夫。ぴーちゃんはいじめられた訳じゃないから。ほら、許してあげよ?」


 私の言葉にしぶしぶと手を降ろし、威嚇を止めた。

 あ、でもお姉ちゃんに向けてシュッシュッてジャブの空撃ちしてる。

 いやいや、ラキとお姉ちゃんじゃサイズに差があり過ぎて、殴り合いどころか指一本でプチュッてされちゃうからね?


 でも私だとまともに貰うと結構痛そうだな。

 小っちゃいとはいえかなり力があるし、安定した下半身とあの加速に上半身を付いていかせる程の強靭な腰で放つパンチの威力は侮れないだろう。


 ……なんかその内カトリーヌさんが餌食になりそうな気がする。




「まぁミヤコのは自業自得だから放っとくとして、いい加減出るかねー」


「そうですね」


「うー、二人とも冷たい」


「いやー、でも事実だよねー」


「エリちゃんまで…… いいもん、ぴーちゃんに慰めてもらうもん」


「ぴっ」


「許されたからって調子に乗るなってさ」


「はい……」


 釘を刺す様に羽でぼふっと頭を叩かれたお姉ちゃんに、わざわざ言葉にして伝えておく。

 まぁ解ってるみたいだから必要ないとは思うけど。



「良かった、まだ居たね。おーい、白雪ちゃーん」


「あれ? ライカさん、どうしたんです?」


 出発しようと思ったタイミングで、地下室への階段の所からライカさんが顔を出しこちらへ呼びかけてくる。

 私の声は聞こえないから復活したエリちゃんに中継してもらうとしよう。



「どしたのー?」


「いやさ、うっかり小屋の建築に使う敷地の範囲を聞くのを忘れてたよ。流石にそこまで勝手に決める訳にもねぇ」


 んー、別に普通の小屋を適当に作ってくれても構わないんだけどな。

 まぁそれじゃ駄目だからわざわざ聞きに来たんだろうけど。



「えーと、あの草の無い所を中心に一部屋分くらい? 向きはこっちが正面に来る感じで」


「ライカさん、ちょっと待ってねー。えーと、こっからー、ここくらい?」


「そうだね。大体そんなとこ」


「うん、今の範囲くらいだってさー」


「あいよ。それじゃ印付けとくかね。……よし、これで問題ないかい?」


 腰の鞄から木の杭を取り出し、握りしめて地面にドンと叩きつけるライカさん。

 おぉ、一発でしっかり刺さってる…… どういうパワーだ。

 四本刺して長方形を描き、こちらに確認を取る。



 ……うん、問題ないっぽいな。頷いておこう。


「おっけーだってー」


「うん、それじゃ地下室(そっち)が終わり次第取り掛かるよ。時間取らせて悪かったね」


「いえ、こちらもはっきりしたことを言わなかったので」


「こっちがちゃんと言ってなかったんだから、気にする必要は無いってー」


「ありがとね。それじゃ続きをやってくるとするよ」


 軽く頭を下げて振り向き、管理室へ向かってその巨体を進めていくライカさん。



「あ、そうだ」


 ライカさんが地下室への階段に体を滑り込ませようとしている所に近づき、【妖精吐息】を吹きかけておく。

 体が大きいし作業も重労働だろうから、ちょっと威力を強めにしておいた。


「おぉ、ありがとう。こりゃ助かるねぇ」


 うんうん、そうやって喜んでくれるとこっちも嬉しくなる。

 ソニアちゃんの為にも頑張ってくださいねー。




 エリちゃんと一緒にテーブルに戻り、皆と合流する。

 お、お姉ちゃんのほっぺが治ってる。レティさんに癒してもらったのかな?


「よし、それじゃ今度こそ行くとしようか」


「うん、待たせてごめんね」


「意味も無く遊んでた訳じゃないんだからいいんだよー」


「とは言っても待たせたのは事実だし。まぁうん、行こっか」


「はい。ラキさん、移動しながらは危ないので降ろしますね」


 あー、じっとしてるのが我慢できなくなったのか。

 良く見たらレティさんの人差し指に糸を引っ付けて、ブランコみたいにぶら下がって遊んでるラキちゃんの姿が。


 手の平にそっと降ろされ、伸ばした糸を回収するラキちゃん。

 またくるくると束ねて差し出してくるので、ありがたく受け取っておくとしよう。




 いつも通りだけどいつも通りではない注目の中、話し合いで決まったサンドイッチの屋台へ。

 うん、やっぱ皆ぴーちゃんが気になるみたいだね。

 ラキも珍しいはずだけど、小っちゃすぎて遠くからじゃ見えないし。


 屋台に着いたらシルクがレティさんの手からラキを回収して座るのを待ち、笑顔でぽんぽん叩いているお膝に乗せてもらう。

 シルクに背中を向けて座って柔らかな体にもたれかかり、口を開けて食べ物を入れてくれるのを待とう。


 うん、見なくてもシルクが嬉しそうにニコニコしてるのがよく解るね。

 存分にお世話してくれたまえー。



 バランスよく口に入れられるパンとレタスとハムに水。

 美味しいし楽ちんだなぁ…… このままではダメになってしまうぞ。

 うん、今更過ぎるね。


 そういえばぴーちゃんとラキはどうしてるのかな?

 ラキには大きいしぴーちゃんの羽じゃ持ちづらいだろうけど。


 ちらっと横目で見てみると、シルクが私に給餌してるのとは逆の手でぴーちゃんの口元にも運んであげていた。

 また器用な事をしてるなぁ。


 シルクに差し出されたパンの端を少し噛み千切って、それを舌で押し出して唇で軽く挟み、羽の上に乗せたラキの前に顔を近づけるぴーちゃん。

 羽に乗ったラキは両手でぴーちゃんの唇の間からパンを抜き取って、嬉しそうにもきゅもきゅ食べてる。


 ……なにその給餌リレー。

 まぁちゃんと皆食べられてるなら、それでいいか。

 



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