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185:粉を試そう。

「てかこれ、昨日の夜管理小屋にばら撒いちゃってたんじゃ……? とりあえず常時発生はOFFにしておこうか」


「見えない程度の量だし、無害って書いてあるから大丈夫じゃない?」


「まぁ確かに、私からでも気付かない程度の量みたいだけど」


 それにモニカさんは知っても怒るどころか喜びそうだから、少し気が楽だけどさ。

 人んちに変なものばら撒いた事には変わりないし、少しは反省しておかないと。



「これさー、特殊効果の無い粉も自分で出せるのかなー?」


「あー、どうなんだろ。多分出来るんじゃないかな」


「一気に一杯出したらどんな感じになるのか、ちょっと見てみたいなー」


「ん、まぁ良いけど。翅を止めた状態でやってみよう」


 止めても飛べるけど落ちても嫌だし、とりあえずテーブルに着地する。

 エリちゃんのリクエストに従い、効果は意識せず…… いや、追加発生分にはデフォルトで何かが付いてる可能性もあるし「特殊効果無し」を意識して発動してみよう。

 お、じわっと出て来たっぽい。



「おー、もりもり出るなぁ」


 先に発生した粉を羽ばたきで落とさない上に、後から湧いて出る粉に押されても落ちない様で私の翅がどんどん分厚くなっていく。


「わー、雪ちゃんの翅がコーティングされてく」


「これ重くないのか?」


「正直、そろそろ重みで翅がくにゃってなりそう…… っていうかちょっと痛い」


「無理は良くないですわよ、白雪さん」


「ひうっ!? せ、せめて言ってからにしてよー」


 いつの間にやら背後に来ていたカトリーヌさんが、両手で私の翅から粉をこそげ落としていく。

 指先を翅と粉の塊の間に差し込んで、そのまま先端の方に滑らせていくと綺麗に外れてどさどさ落ちていった。

 なにそれちょっと楽しそうなんだけど。私もやりたい。



「おー、ユッキー、それ私もやりたーい」


「いや、ちょっと力加減間違えるだけで翅ごとむしっちゃうから勘弁して」


「あー、そりゃ怖いねー。我慢するよー」


 一通り塊をそぎ落とした後、最後に翅をパタパタッと動かして残りを飛ばしておしまい。

 塊になっても落ちない癖にちょっと羽ばたくとすぐ落ちるのはよく解らないけど、まぁなかなか取れないよりはいいだろう。



「それにしても雪ちゃんの粉、すっごい細かいねぇ」


「これだけ小さいと、普通のマスクじゃ全然防げないんじゃないか?」


「やらないよりは大分マシだろうけどね。ってカトリーヌさん、何舐めてるのさ……」


「いえ、せっかくですので」


 一緒に落としていたカトリーヌさんが、唐突に自分の指に付いていた粉を舐め始めた。

 何がせっかくだと言うのか。



「……とても甘いですわ」


「え?」


「これ、粉糖ではありませんこと?」


「あ、ほんとだー。あまーい」


 私の翅の下で山になっていた粉を摘まんで、ペロッと舐めるエリちゃん。

 通常は無害って書いてあるとは言え、本当に効果を無くせたのか判らないのによく躊躇なく行けるな。

 ……何も考えてない訳じゃないよね?



「雪ちゃん雪ちゃん」


「ん? どしたの?」


「それ、お茶の中で出してもらって良いかな」


「いや、出すのは良いけど中じゃなくて上でね。お姉ちゃんまで妖精茶を…… あ」


「あー、やっぱりー? ほんとにそうなっちゃってたんだー」


 ……ぐぬぅ。

 なんでこう自分の首を絞めちゃうかな……



「お、なんだなんだ? 妖精茶だって?」


 いい感じで弄れそうなネタに、すかさずアヤメさんが食いつく。


「いやー、昨日の夜『ユッキーを入れたらフェアリーティー?』とか言ってみたんだけどねー。多分気になって、お風呂で【鑑定】しちゃったんだろねー」


「で、本当に変わってたってか」


 くそぅ、にやにやするんじゃない。



「お姉ちゃんまで(・・)というのは?」


「いや、シルクが凄く気に入っちゃったみたいで……」


 むぅ、レティさんまで追求するか……

 ってそうか、これのおかげであんなに甘かったのか。



「まぁそれは置いといて…… いや捨てといて、と。んーと、出す場所調整出来ないかな?」


 狙った場所に入れるなら先端からまとめて出したいんだけど…… あ、出来た。

 右の翅をお姉ちゃんのお茶の上に配置して、下側の先端にまとめて出していく。

 塊にする必要は無いので、左手で根元をトントン叩いて少しづつ落としていこう。


 おー、粒が細かいから入った時点でほぼ溶けちゃうな。


「どれくらい入れるー?」


「味見してないからなー。一旦止めてみてくれる? あ、丁度いい感じだよ。ありがとー」


 スプーンで軽く混ぜて一口飲んでみて、オッケーを出すお姉ちゃん。

 なんか流れでそのまま皆の分にも入れていく羽目になった。



 ……なんかテーブルの上に落とした山の前に、うちの子たちが全員集まってじっと見てる。

 君ら蟻じゃないんだからさ。まぁ良いけど。


「あー、良いよ良いよ。遠慮しないで食べちゃいなさい」


 私が許可を出すと三人とも嬉しそうに山に群がっていった。

 でもシルクとラキ、サイズに差があり過ぎて一緒に食べるのって危なくない?

 シルクの大きさだとラキくらいなら一口でしょうに。

 まぁシルクはしっかりしてるし、その辺は大丈夫か。




「それにしてもこれ、どの位の威力があるんだろうね」


「ん?」


 お姉ちゃんが効果のパネルを見ながら呟いた。


「いや、普通に出した時の威力が人間に効かせるくらいに調整されてるのか、それとも【妖精】同士でも効果が出るくらいなのかって思って」


「では早速お願いします」


「ふわっ!?」


 お姉ちゃんが言い終わるかどうかのタイミングで既に私の翅の先端に顔を押し当てているカトリーヌさん。

 だから翅はくすぐったいんだってば……



「いや、まぁ試すのは良いんだけど…… えっと、どれにしようか」


「それでは【腐敗】を」


「いや、ここ机の上だし皆お茶飲んでるからね? んー、じゃ【麻痺(弛緩)】にしてみようか」


「はい。いつでもどうぞ」


「あ、部位の指定ってのもあるんだったね。どこに効かせるか決められるのかな?」


「それでは試しに両足などどうでしょう」


 あぁ、足なら動かなくても私達なら飛べるし、あまり問題も出ないか。



「じゃあそれで。いくよー」


「どうぞ…… あら?」


「あぃたたたた!? ちょっ、掴んだまま崩れ落ちないで!」


「す、すみません、咄嗟に離し損ねましたわ。しかし凄い物ですわね…… 一呼吸しただけで脚に全く力が入らなくなりましたわ」


「んもー。ほら、飛べるんだからそんな倒れてないでさー。っていうかせめて座ればいいのに」


「いえ、それが脚だけでなく腰の辺りから効果が出ているらしく、起き上がると姿勢が維持できそうにありませんわ。うふふ、現実でしたら下着が大変な事になっている所ですわね」


「なんで嬉しそうなの…… いや解ってるけどさ。うーん、細かい調整が結構難しいのかな?」


 ちゃんと腿の辺りからって思いつつ出してみたんだけどなー。

 慣れるには練習する必要があるかな? ……いや別に良いか。毒を使う予定は無いし。




「なぁ、白雪」


「ん?」


「これ、解除出来るのか?」


「あ」


 ……【麻痺(硬直)】で相殺とか出来ないかな?




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